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双鏡の君へ 2 ー輪廻編ー  作者: ゆら。


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平安時代ー顕れ


それから敦姫も父親の京の住居に腰を下ろした。

言の葉の君は大喜びし、敦姫も顔を赤くしつつ目をそらした。

言の葉の君も忙しい中でも合間を見つけては敦姫の元に通い、文もたくさん送った。



ーーー


初歌合 ――貴族の前で恋の和歌バトル


御簾の向こう、ざわめく貴族たち。


「言の葉の君と敦姫が詠むそうな」


「恋の歌になるらしいぞ」


「風流……!」


敦姫(小声)

「……ちょっと待ってください。

 私、今から公開処刑される側ですか?」


言の葉の君「大丈夫。死なない程度に刺す」


敦姫「優しさゼロ!!」


主持役の貴族が咳払い。


「では、最初は敦姫より」


敦姫(内心)

(無理無理無理無理!!恋の和歌って何!?

 好きですって三十一文字でどう誤魔化すの!?)


一瞬の沈黙。


敦姫、観念して詠む。


「御簾越しに

声のみ残る 春の夜は

夢にてのみぞ

逢ふ人ぞ恋し」


会場、しん……。

次の瞬間、


「おお……」

「可憐……」

「切ない……」


敦姫(内心)

(やばい、思ったより恋文!!)


言の葉の君、すぐに返す。


「見ぬゆゑに

なおぞ心の 近くなる

声の面影

夜ごと添ひける」


会場「風流ーーー!!」


敦姫(内心)

(完全に私宛て!!これ私宛ての返歌!!)


敦姫「……殿、それ私にしか通じなくありません?」


言の葉の君「気のせい」


敦姫「嘘つけ!!」


貴族たち


「見事な調和だ」

「これは名勝負」

「お二人、息が合っておられる」


敦姫(小声)

「合ってるんじゃなくて、

 言の葉の君が一方的に私を撃ち抜いてるだけです」


言の葉の君「撃ち返してくればよい」


敦姫「歌合を恋の決闘にしないでください!!」


主持役「では次の題、『忍ぶ恋』」


敦姫「題が重い!!」


言の葉の君「今の我らに最適」


敦姫「最適言うな!!」


敦姫、再び詠む。


「忍ぶとも

忍びきれずに こぼれ出づ

ため息さへも

罪となる夜」


会場、ざわっ。


「これは……」

「恋しておられる……」


敦姫(内心)

(しまった!盛りすぎた!!)


言の葉の君、即返歌。

「罪ならば

我もともにと 引き受けむ

ため息ひとつ

逃がさぬほどに」


会場「きゃーーー!!」


敦姫「殿ーーーー!!

 今の完全に公開告白です!!」


言の葉の君「和歌だぞ」


敦姫「言い訳として最強すぎる文化!!」


御簾の外はすでに人だかり。


言の葉の君「……好評だな」


敦姫「言の葉の君は黙っていてください!!」


敦姫(小声)

「……なんで私たち、平安の娯楽番組枠になってるんですか」


言の葉の君「人気者だな」


敦姫「不本意です!!」


最後、主持役が満足そうに頷く。

「本日の歌合、勝敗はつけがたし。

 されど――最も人の心を動かしたのは、

 このお二人であろう」


拍手。


敦姫(内心)

(初歌合で恋が公開処理された気がします……)


言の葉の君(小声)「楽しかったな」


敦姫「殿は楽しいでしょうね!!

 私は寿命が縮みました!!」


ーーー


それからも二人は文を重ねた。

二人の間には想いと文が積み重なっていった


敦姫

【雲の間に

ひとり静かに 宿る月

誰をも照らす

顔を持ちながら】


言の葉の君 返歌。

【照らす月

我が目にのみぞ 宿りける

雲に隠れても

失はぬほどに】


敦姫

「言の葉の君!!

 月を私限定にしないでください!!」


敦姫

【そよぐ風

花の香ばかり 連れ来たり

知らぬ間にして

心動かす】


言の葉の君 返歌。

【そよぐ風

香のみならずと 知るものを

人の心まで

奪ふものなり】


敦姫

「これ……

 “お前は風のふりして人の心盗んでる”

 って意味!?」


敦姫

【夜すがら

ただ声ひとつを 思ひ出で

夢より近く

胸に残れり】


言の葉の君、にこやかに返す。

【夢よりも

近きは我もと 知る夜かな

声に残れる

君がために】


敦姫

「風流の皮が剥がれかけている!!」


敦姫

【近き世に

逢はずと知りて 逢ひにけり

心ばかりが

先に触れつつ】


文を持った言の葉の君が固まる。


言の葉の君「……少し待て」


動揺する。


言の葉の君「……まいったな。攻撃力が増している」


言の葉の君が珍しく頬を染めた。


言の葉の君

【触れずとも

触れしと知れる その言葉

我が胸のみぞ

乱れそめける】


敦姫

【声ひとつ

返ると知りて 詠む歌は

すでに答へを

胸に持ちながら】


言の葉の君、静かに詠む。

【隔つれど

隔てしものは 身のみなり

心はすでに

君の側にあり】


敦姫(内心)

(うわ、これは……

 私の“距離”ごと抱きに来てる……)


敦姫

【隔てとは

名のみのものと 知りながら

近づくほどに

恐れぞ増ゆる】


言の葉の君

【恐れさへ

抱きて離さぬと 誓ふ夜に

近づくほどに

名を呼びたし】


敦姫

「言の葉の君!!

 完全に恋文です!!」


敦姫

【声ひとつ

名を呼ぶだけで 夜となり

戻れぬほどに

近づきにけり】


言の葉の君の返歌。

【戻れぬと

知りて戻らぬ 道なれば

共に迷はむ

君の名のもと】



言の葉の君 追い文

【春の夜に

ほどけし袖の

香のように

気づかぬうちに

君想いけり】


敦姫「重い!!

 情緒が最大火力!!」


敦姫

【月冴えて

逃げる心を

追いかける

君の視線に

もう降参す】


言の葉の君

【風吹けば

乱るる髪を

押さえつつ

乱すものこそ

君の声なれ】


敦姫「やめろ!!

 和歌で色気出すな!!」


敦姫

【風吹けば

乱るるのは

心のみ

君が平然

すぎるゆえなり】


言の葉の君

【露の世に

消えぬものこそ

想いかな

君の隣に

あると思えば】


敦姫「それ“永遠に一緒”の意味だろ!!

 平安で言う最終告白だぞそれ!!」


敦姫

【露の世に

迷う我が身を

支えたる

君の言葉ぞ

すでに宿命】


宿命まで行っちゃったーー!!

私のバカーーーー!!

見えないけれどニコニコしている言の葉の君の姿が思い浮かんだ。


⋯もう……私の負けでいいや


そう言いながらも顔は幸せそうに微笑んでいた。




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