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安土桃山時代ー気配
城の朝。
琴葉姫は縁側で団子を三本同時にくわえようとしていた。
敦乃「姫、一本ずつです!!喉!!喉!!」
琴葉「だいじょぶ!前は三本いけ――」
一本落とす。
琴葉「……落ちた」
敦乃「当然です」
侍女たちが遠くでひそひそと笑う。
「今日も平和ですねぇ…」
「付き人殿の胃が心配ですけど」
琴葉は団子をもぐもぐしながら、ふと空を見る。
琴葉「……敦乃」
敦乃「はい?」
琴葉「今日の空、ちょっとだけ…重くない?」
敦乃は一瞬、空を仰ぐ。
雲はあるが、晴れている。
いつもと、変わらない。
敦乃「……姫がそう言うと、不安になるんですが」
琴葉「平気平気」
団子を飲み込み、にこっと笑う。
琴葉「“今”は、一緒に笑ってるでしょ」
敦乃は、なぜか返事が遅れた。
敦乃「……姫は、ときどき
そういう言い方をなさいますね」
琴葉「うん。癖」
また笑う。
その笑顔は、いつもよりほんの一瞬だけ、
“遠い時間”を見ているようで。
その笑顔は、ほんの一瞬だけ――
ここではない時間を、確かめているようで。
敦乃はそれ以上、何も言わなかった。
なぜ胸の奥が、
理由もなく、ざわついたのか。
その名を、まだ知らなかった。




