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双鏡の君へ 2 ー輪廻編ー  作者: ゆら。


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室町時代ー遠景


朝。


村の道。


敦乃は、嫁ぎ先の家の者に伴われ、ゆっくりと歩いている。


派手ではないが、きちんと整えられた身なり。


背筋はまっすぐ。


顔は伏せられたまま。


泣いてはいない。


泣いてはいないが――


笑ってもいない。


ただ、静かに歩いている。


村の人々が小さく頭を下げる。


「良い縁談だ」

「幸せになれる」


そんな声が、風に混じる。


敦乃は応えない。


ただ、一歩ずつ前に進む。


少し離れた場所。


家の門の前。


爺は、その背中を見ている。


声をかけることはしない。


呼び止めることも、しない。


爺(……これでよい)


爺(守れる道だ)


そう、何度も心の中で繰り返す。


敦乃が、ふと立ち止まる。


ほんの一瞬だけ、空を見上げる。


何かを探すように。


けれど、何も言わず、また歩き出す。


その姿に、爺の指がわずかに震える。


爺(……よう、耐えたな)


爺は目を細める。


誇らしさと、悔しさと、後悔と。


すべてを混ぜたまま。



爺(あの崩落は、誰の手でも止められん)


爺(だが――生き方だけは、わしが決めさせた)



爺は、誰にも聞こえない声で呟く。


爺「……道を選ばせたのは、わしだ」


爺「お前ではない」


一度、目を閉じる。


そして、もう一度だけ敦乃を見る。


爺「……すまんな」


声にはならないほど小さく。


爺「それでも……生きろ」


敦乃には届かない。


振り返らないまま、道の向こうへ消えていく。


爺は、視線を上げる。


声には出さず、


ただ胸の奥でだけ、そっとつぶやく。



(……あの青年は)


(この空を見ていたか)


(それとも、土だけを見ていたか)


答えはもう、返らない。



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