21/34
室町時代ー空白
翌日。
役人が村に来る。
集会所に集められた村人たち。
役人の声は、淡々としている。
役人「堤防崩落の際、数名が行方不明となりました」
ざわめき。
役人「名簿に記されている者は――」
名前が、順に読まれる。
敦乃は、指先を握りしめている。
そして――
琴之の名が、呼ばれない。
代わりに、役人はこう言った。
役人「……琴之は、遺体未確認のまま、記録上は死亡と扱われます」
敦乃「……え?」
言葉が、音として理解できない。
役人「現場の状況から、生存の可能性は――」
敦乃「待って」
役人「……」
敦乃「帰ってないだけ、ですよね」
役人「……」
敦乃「遅れてるだけ、ですよね」
役人は、視線を下げる。
役人「……お悔やみを」
……その瞬間。
敦乃の中で、何かが静かに崩れた。
声は出なかった。
涙も、すぐには出なかった。
ただ、胸の奥だけが、
音もなく、
ぽっかりと、空洞になった。




