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室町時代ー兆し
月日は流れ……
とある日の夕暮れ。
堤防動員から戻る村人たちの列が、
土埃をまといながら、ゆっくりと村へ入ってくる。
名前を呼ぶ声。
無事を確かめ合う声。
笑いと、ため息と、疲れ切った足音。
敦乃は、その列の端に立っていた。
胸の奥で、鼓動がひとつ、早くなる。
敦乃(……琴之、どこ?)
人影を追う。
顔を探す。
肩越しに、何度も覗く。
数えても、数えても――
そこに、琴之はいない。
敦乃は、近くの村人に声をかける。
敦乃「……琴之は?」
男は、一瞬だけ視線を宙に置く。
男「……あぁ……」
言葉を探すように、短く息を吸う。
男「今日は、別の組だったらしい」
敦乃「……じゃあ、遅れて帰る?」
男「……そう、だな。……多分」
男は敦乃の目を見ず、曖昧に頷き、すぐに視線を外した。
敦乃は、別の女に聞く。
敦乃「琴之、見なかった?」
女「……うん。今日は列にいなかった」
敦乃「……そっか」
その返事は、さっきと同じ調子だった。
声の高さも、間も、目の逸らし方も。
敦乃は、ようやく気づく。
――誰も、はっきり言わない。
敦乃の胸の奥が、
理由もなく
静かに、冷えていく。




