銀狼 VS 灰狼①
襲撃者はどうやらどこぞの騎士の者のようでした。
私たちを嗅ぎつけてきたというのであれば、誰であっても始末する。
マーニ様のために!
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「うおおぉぉおおおお!!」
気迫と共に剣で相手を押し体重をかけ続ける。
狭い家の中は、マーニ様を守りながら戦うのには向かない。
まずは外へ押し出す!
向こうも連れていた女性を守りたいのだろう。
意図を察してか、私ことハティに押されるままに下がっていく。
二人して屋敷の庭へ出たところでお互いに距離を取り合った。
マーニ様と女性も表に出て、自身の庇護者へと身を寄せる。
「貴様が貴族共を襲撃していた輩か!」
襲撃者である騎士は、猛々しく詰問の声をあげる。
その声には怒りが滲んでいた。
その怒りは、なんだ。復讐か、義憤か。
「でしたら、どうだと言うのです?」
だが、私は取り合わない。
取り合ったところで、マーニ様の得にはならない。
「ここで捕まえるに決まっているだろう! 俺は──、【アマビリス王国騎士団】その団長。カフィー・オーディール! 推して参る!」
「【王国騎士団】、そうですか……」
どうやら相手は相当の手練のようでした。
であるならば、都合がいい。
一定以上の実力がある者には、いつもやるアレが効く。
私は、この状況においてニコリと笑ってみせる。
殺気を隠す。空気を作る。雰囲気を作る。
そして、おもむろに顔の横に剣を構え、雄牛の構えをとってのける。お互いにジリジリと距離を詰め合う。
激しい剣撃が始まろうとしたその瞬間──、蹴りを叩き込む!
【無拍子】。
私の必殺の一撃が、オーディールとやらを襲う。
けれど。
足の裏にガッという堅い感触。
蹴りを、ガントレットで受け止められていた。
【無拍子】を弾かれた!?
私は驚愕に包まれ、すかさず一歩距離を取った。
これまで防がれたことのない一撃を確かにオーディールは防いでおり、そして、一瞬前まで私がいた空間を剣閃が凪いでいた。
下がっていなければ切られていた。
その事実に背筋にヒヤリとしたものが流れた。
「驚いた。今の蹴りもそうだが、返しの一撃を避けられるとは思わなかった」
オーディールは感嘆の声を漏らしながらも、私の方が驚いていた。
驚く私に、騎士団長はフッとほくそ笑んで見せる。
まるでお前の手の内は読めているとでも言いたげに。
「要は、お前の今の蹴りは【魔術師の手】なんだ」
【魔術師の手】。
確かに、私の【無拍子】はマーニ様のために覚えた手品の応用でした。
笑みを作り、殺気を隠し、異様な雰囲気に呑まれた相手が剣に意識を取られた瞬間、神速の蹴りを叩き込む。
相手からすれば予備動作もなく、いきなり蹴りが鳩尾にぶち込まれている。
それが、私の【無拍子】の全てでした。
「ヒントをもらっていたものでな、その手は俺には通用せんぞ」
その言葉に嘘偽りはないのでしょう。
私の【無拍子】はあくまで初回限りの必殺の一撃。
その初撃が通らなかったのだ。今後も、【無拍子】は通じない。
単純な【無拍子】だけでは、ですが。
ともかく切り札を一つ失った状態で、やりあわなければならない。
だが、負けるわけにはいかない。
私の剣にマーニ様の命もかかっているのだから!
ジリジリと睨み合いを続ける。
今度こそ、お互いに相手の出方を窺っていた。




