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コーレリア物語 〜公爵の爵位を返還した僕だけど、最強の銀狼の騎士が一緒にいるから平気です!!〜  作者: 世鷹イチゾウ
破 実は正統王位継承者だった僕が銀狼の騎士と共に運命に抗う話
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城館攻略戦⑤

「なぁ──!?」


 肩口を抉られた鎧の男は血が溢れ出す肩を抑えて蹲り、バスタードソードを取り落とす。

 これで、もう重いバスタードソードは扱えない。


「マーニ様!?」


 伯爵が素っ頓狂な声をあげるその視線の先。

 マスケット銃を手にしたマーニ様がいらっしゃった。

 マーニ様はいつの間に移動したのやら、狙撃兵たちと同じところに立ち、そこから硝煙の煙をモクモクと吐き出している銃をしっかりと手すりに押し付けていた。

 どうやらマーニ様は二階の手すりを支点にして、マスケット銃を鎧の男に撃ち込んだようでした。


「君が戦い始めて階段がガラ空きになったからね。マスケット銃を借りさせてもらったよ」


 簡単な種明かしを鎧の男に済まし、マーニ様は撃った銃を投げ捨てる。

 銃が撃てたのかと私も伯爵と同じように驚くも、マーニ様はよくご本を読んでらっしゃる。

 銃の撃ち方も頭に入っているのかも知れなかった。

 

「ハティ、君にだけ戦わせたりなんてしない! トドメを!」


 そうだ。まだ戦いは終わっていない。

 見れば、鎧の男は肩を抑えながらもよろよろと立ち上がる。

 まだ戦意は潰えていない。


「マーニ様……、ご助力感謝します!」


 マーニ様に頷き、私はトドメを刺しにかかる。

 それに対して、鎧の男は私から距離を取ろうと無事な方の腕を振るう。バスタードソードを振り回せるほどの鎧に包まれた剛腕が、迫る。が、私はそれを屈むだけで避けた。

 悪あがきの一撃を掻い潜ってしまえば、もう全てがガラ空きだった。

 そのまま鎧の男の脇に回り込む。

 マーニ様のおかげで策を弄する必要もない。

 イージーゲームもいいところでした。

 弱る鎧の男の膝裏に蹴りを叩き込み、そして、体勢を崩したところで追い討ちに剣を抜く。その握った柄を肘打ちの要領で顎に向かって叩き込む!


 ──【モルトシュラーク】!


 ガッ! と鈍い音。金属が凹む感触。凹んで金属が肉に食い込み肉をグチュリとつぶす湿った感触。その下の骨をも割る感触。

 ビリビリと痺れるような衝撃が剣の柄を握る手に走った。

 いい手応えだった。


「剣の柄で顎を……?!」


 顎を潰され悲鳴を上げることもままならない鎧の男の代わりに、手すりから身を乗り出して伯爵が驚愕の声を上げた。

 驚くこともないだろうに。

 【モルトシュラーク】は剣で打撃をしたい時の一般的な基本技能です。

 実際には、ガントレットで柄ではなく刀身を握るのですけれど。

 伯爵が目を見開いて見守る中、ちょうど足と頭で円の軌道を描くように鎧の男の体はひっくり返った。

 仮に攻撃が効かなくても、重心を崩すことは容易だった。

 そして、頑丈な鎧というのは重く一度体勢を崩すとすぐには戻せない。

 地面に鎧が叩きつけられて、けたたましい音を立てた。


「お望み通り、肉を潰す打撃をかまして差し上げましたよ」


 私は剣を収め、代わりにトドメ用の刺し短剣を懐から取り出した。

 一歩一歩、倒れ伏した鎧男への距離を詰める。


「ごぽっ、まひゃ……、まひゃ、おりぇは……」


 血を鎧の呼吸穴から流しながら、息も絶え絶え顎を潰され弱った呂律の回らない声で鎧の男は喋っては、なんとか立ちあがろうともがいている。

 だが、立つことは叶わない。

 そのままジタバタとまるでムカデのように身を捩らせては、全て無駄に終わっていた。


「いえ、もう負けですよ。立ち上がれないでしょう。顎にヘルムが凹むほどの打撃を喰らったんですから」


 顎へ打撃を喰らわされ、脳を揺らされたのだ。

 脳震盪も起こしているはずだった。

 その状態では人間が自力で立つことは敵わない。

 私は残酷な現実を突きつけながら鎧の男に馬乗りになる。

 いくら分厚い鎧でも呼吸穴はいるし、関節の節目節目はどうしても装甲を厚くできない。隙間ができる。

 だから、体勢さえ崩せばこんなものどうとでもなるのだ。


()()()()()()ところに送って差し上げます」


 一言、最後に()()()の言葉をかけてやる。

 共に戦い死んでいった仲間を『あいつらとは違う』と平気で蔑むこの男が、私は騎士として許せませんでした。

 鎧の男のもがく動きが、私の言葉でピタリと一瞬止まった。

 そして、慟哭する。


「ああああああぁぁあああああああああああああ!!!!」


 世界を呪う慟哭が館の空気をビリビリと震わせる。

 言葉にならないそれは、絶望なのか拒絶なのか、私には分からない。

 分からないけれど、どうでもいい。

 獣のように叫ぶ鎧の男を目を細めて眺めながら、私は逆手に握った刺し短剣を振り上げた。


「ごきげんよう」

 

 甲冑の呼吸穴に向けて、刺し短剣を数度突き立てる。

 グチュリグチュリ、と。

 突き立ててしまえば、鎧の男は数度痙攣した後に静かになった。

 甲冑からダラダラと血が流れ出し、血溜まりが広がっていく。

 赤い花が咲いていく。

 さて。

 これで、護衛は尽きた。

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