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コーレリア物語 〜公爵の爵位を返還した僕だけど、最強の銀狼の騎士が一緒にいるから平気です!!〜  作者: 世鷹イチゾウ
破 実は正統王位継承者だった僕が銀狼の騎士と共に運命に抗う話
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城館攻略戦④

「やっと終わったか」


 私が視線を向けていると、鎧の男はふと気づいたように口を開く。

 そして、バスタードソードを持ち上げ、肩に担ぎながらゆっくりと階段を降りてくる。ガシンガシンと重量級の足音を一歩ごとに無遠慮に踏み鳴らす。

 どうやら力自慢の手合いだ。

 階段を降り切った鎧の男は、こちらを指差した。


「見たところ、お前の得物はその片手剣と投げナイフだけだろう? それでどうやって俺を倒す? 最初から俺一人だけでよかったんだ。アイツら俺が二階へ続く階段を守ってやったってのに銃にナイフで負けやがって、とんだ足手纏いどもだ」


 不遜な物言いだ。まあそれもそのはずでしょうか。

 フルプレートアーマー。

 銃が現れて以来、鎧では銃弾を防げないと鎧の代わりに鎧帷子だけを着込み騎士服を身に纏うのが主流となった今ですが、貴族お抱えの騎士の中には儀礼や様式に拘り甲冑に好んで身を包む者もいる。

 どうやらフォン・ゼッケンシュタインお抱えの騎士団というのは、そういった手合いの者たちのようでした。

 狙撃兵は狙いをつけづらくなるからか、軽装でしたが。

 古臭いと馬鹿にするのは容易ですが、その実、脅威ではある。

 なんせ鎧が廃れたのは銃に弱いからであって、私は銃の類を持ち合わせてはいないのですから。

 けれど、そんなことよりも一つ私には気に食わないところがありました。


「仲間に対して心無い言葉ばかり吐くのですね」


 確かにナイフの私に銃で負けているのですけれど、仮にも戦場を共にする仲間にかける言葉ではない。


「仲間ぁ? 仲間ってのは、助け合う奴のことだ。アイツらに助けられた覚えはないね。俺はあいつらとは違うんだ」


 どうやら手出しをしてこなかったのは、協調性がなかっただけのことらしい。

 勿論、持ち場を離れ二階に私を通し狙撃兵に対し接近戦をさせてしまうのが一番ダメなので、この男が踊り場から離れなかったのは正しいのですが、それにしたってでした。

 この騎士があの晩、バカ息子に連れられていなかったのも頷ける。


「御託はそろそろいいだろ。夜も遅い、面倒ごとは早めに片付けたいんだ」


 そして、鎧の男はあくびを噛み殺しながらバスタードソードを構え、私と相対する。

 私も身構える。

 これがおそらく今夜最後の戦い。


「頼む、もうお前しか残っておらんのだ! 必ずや目の前のそいつを撃ち破り! マーニ様を捕まえて参れ!」


 伯爵が最後の頼みの綱に縋るように命を下せば、鎧の男は満足そうに頷いてみせた。


「あいよ、旦那。せいぜいお給金は弾んでくれよ。──ってわけだ。恨むなよ?」


 その言葉を皮切りに、バスタードソードの大ぶりの攻撃が振り下ろされる。

 身構えていた私は太刀筋を見極め最小限の動きのスウェーで躱す。ブォンという轟音が体のすぐそこを通り抜けていく。

 喰らってしまえば鎧を着ていたとしても一溜まりもない一撃。

 とはいえ、騎士服の私に対しては過剰な攻撃力でした。

 その大ぶりな攻撃は全く己の防御のことを考えない、力任せなもの。

 こちらのことを舐め腐っていることが剣によく出ています。

 鎧を着込めば剣が通らない、と? 笑止千万! 私をその程度で止められると思ったか!

 私は最初から剣で切り結ぶつもりはない。分厚い鎧を着込めばそれだけ鈍重になるのだから、斬撃が通らなくても無力化するだけならばいくらでもしようがある。

 続けて振り下ろされるバスタードソードの一撃を軽いステップで懐に入り込みながら避ける。避けた剣先が、館の床を絨毯ごと深々と穿った。

 確かに大地を穿つほどの必殺の一撃。

 けれど、当たるわけもない。

 私は隙を見計らい、肘に手を当てカタパルトにした掌底での当身を顎に向かって下から打ち込んだ。

 両腕の力を一点に集中させたアッパーカットのようなその一撃は、鎧の男を強制的に仰け反らせる。

 だが、致命打には至らない。

 力自慢なことなだけはあり、よく首も鍛えているようでした。

 普通、首の骨が折れるのですが。


「なんだ? 剣が効かねえからって打撃かぁ? そういうことしてぇなら鎧ごと肉を潰せるメイスじゃねえと意味ないだろうが!!」


 鎧の男は攻撃を喰らった衝撃を頭をブルブルと振るって誤魔化し、その怒声と共にバスタードソードを横薙ぎに切り払う。

 私は宙返りするように後ろに飛び退いて、カウンターのその一撃を避けた。


「ハティ……」


 マーニ様が心配そうに私を見ていた。

 私は飛びながらニコリと笑いかける。

 いけない。

 鎧に守られて気が大きくなっただけの雑魚に手間取ってはいらぬ気苦労をかけさせてしまう。

 ──そろそろ、決めなければ。

 私は姿勢を低くして一直線に駆け出した。

 勿論、大柄な鎧男に向かって。


「なにしてぇか分からねえけど、攻撃がきかねぇんなら俺を倒せるわけなんてねぇんだよ!」


 お前も、私に攻撃を一度も当てれていないだろうに。

 内心で毒吐きつつ、鎧の男の力任せの乱撃をひょいひょい避けながら私は思案していた。


(どうにか隙さえ作れれば──)

 

 私が頭の中で策を弄し始めた時でした。


「なら、これはどう──? ハティ下がって!」


 先ほどの狙撃兵たちとの戦い同様、マーニ様の声の指示に従って後ろに飛び退く。

 飛び退くと同時に、銃声。

 鎧の男の左の肩部が爆ぜた。

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