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【3月15日書籍発売】アラサー魔導士の辺境湖畔暮らし〜初級魔法で魔王を瞬殺してしまった俺は、無気力に引きこもりたい〜  作者: 未来人A
第八章 復讐

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「出よ。マーズ」


 スノの背後に黒い渦が発生した。

 見た目は魔物が出てくる、ゲートに酷似していた。


 そこから何かが出てくる。


 三メートルほどの巨体。厳つい兜を被っており、鎧を身につけていた。装備はかなり硬そうだった。腕は四本あり、全ての手に違う武器が握られている。

 右上腕には剣、右下腕には槍、左上腕には鎌、左下腕には杖である。

 ほとんど近接の武器であるが、杖もあることから魔法も使ってくることが予想できた。

 マーズと呼ばれた魔導生物が出てくると、スノの発生させたゲートは完全に閉じた。


「魔界のとある空間で、瘴気を浴びせ続け成長させたのが、このマーズです。圧倒的な強さを持っていますが、それでもあのライズには届かないでしょう」

「……」

「しかし、あなたなら倒せると私は思っています」

「ほざけ!」


 リオンは剣を持ちマーズに飛び掛かる。

 確かにマーズの魔力は高いのだろうが、負けるはずはない。自分の力に絶対の自信を持っているリオンは、そう思っていた。

 マーズは機敏に動き剣で受け止める。

 その後、槍で突きを放つ。リオンはすぐに離れて、突きを回避。


「闇矢《ダーク・アロー》」


 多数の闇の矢を放つ。物凄い速度で矢は飛んでいき、マーズの頭、胸、足に突き刺さった。

 矢は消え、マーズの体に複数の穴が開く。穴からは青い液体が流れ出していた。人間ではないので、血は流れていないようだ。

 マーズは杖を振る。

 体に光の粒子が降り注いだ。みるみると穴が塞がっていく。どうやら回復魔法を使用したようだ。

 完璧に傷は塞がる。

 マーズは雄叫びを上げる。

 すると、ゲートが複数開いた。


「!」


 マーズはゲートの中に入っていく。

 リオンの背後に開いたゲートから、マーズは出てきた。死角からの攻撃であったが、反応する。


「闇壁《ダーク・ウォール》!」


 防御魔法を使用し、攻撃を受け止めた。

 一撃目は剣で斬ってきた後、次は鎌を振り回して攻撃してくる。

 剣の攻撃は防いだが、次の鎌の攻撃は防ぎきれず壁を破壊される。

 そのまま、鎌はリオンの体に当たった。

 斬られはしなかったが、ダメージは受ける。吹き飛ばされてしまう。


「くっ……!」


 そこまで大きなダメージではなかった。すぐに魔法を使い、回復する。

 回復魔法を使用中、マーズは杖を振る。

 光の剣がマーズの頭上に六本作成される。

 剣は次々に、リオンに向かって飛んでいった。物凄い速度だったが、リオンは反応して避けていく。

 光の剣は地面に刺さった後、消滅せず数秒残っていた。その後、光の剣は砕ける。

 砕けた無数の破片が、リオンに向かって飛んでいた。


「闇壁《ダーク・ウォール》!闇壁! 闇壁!」


 闇の壁を三重に作成される。

 破片は壁に当たっていく。壁に当たると、小さな爆発が起こった。

 一個一個の爆発は小さいが、数が大量にあったので、同時に爆発することで、凄まじい威力になった。

 壁が一枚一枚破壊されて行く。三枚目は何とか耐えたが、ヒビが入っており、パラパラと砕けて地面に落ちていった。


「押されているようですね。やはりマーズにはあなたでも勝てませんか」


 スノは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、そう言った。


「なめるな」


 リオンは右手に魔力を集中させる。

 凄まじい魔力の込められた黒い球が出来上がっていく。


「闇魔砲《ダーク・ブラスト》!!」


 黒いたまが物凄い勢いで放たれ、マーズに飛んでいった。

 マーズは杖を振り、魔法の防壁を目の前に張る。

 黒い球が防壁に直撃、大爆発が発生した。

 防壁では防ぎきれず、マーズの上半身が消し飛ぶ。


「はぁはぁ……ふん、思い知ったか」


 肩で息をしながらリオンはそう言った。

 かなりの力を使って魔法を使ったため、だいぶ消耗していた。


「それが全力の攻撃ですか。これは素晴らしい」


 スノは生きていたようで、拍手をしながらそう言った。


「しかし、まだです」

「!」


 マーズは上半身を消しとばされていたが、まだ動けるようだった。

 左下の手で持っていた杖を振る。

 光がマーズに降り注ぎ、消しとばされていた上半身が完璧に元通りになった。


「マーズの最大の強みは再生能力です。体を半分失ってもあっさりと復活できます。魔力もあまり消費せず回復できるので、非常に優秀です」

「ちっ……なら先にその杖を消しとばす」

「ああ。この杖は魔力効率をちょっと上げてて、回復に必要な魔力消費量を少し減らしていますが、回復自体はなくてもできるので、そんなに意味はないですよ」

「……何だと」

「一撃で全部を消し去るしかないのですが……そこまで強力な攻撃は流石に撃てませんよね? だから、あなたではマーズには勝てないんです」

「ちっ……」


 リオンは表情を歪める。

 先ほどの攻撃は全力で撃ったものだ。もう一度あれ以上の攻撃を撃つことは不可能だった。

 後一撃撃てば、魔力が切れて動けなくなってしまう。

 無尽蔵にあるリオンの魔力ももちろん限界はある。


(先程は防壁を張られて、威力を削がれた。防壁なしで当てられれば、一撃で消し飛ばせるはずだ)


 リオンはそう考えた。

 魔王になったからは基本は力押しで敵を倒してきたが、元々この世界でパーティーを組み戦っていたことは、色々策を巡らせて、魔物を倒したりもしてきた。


 そういうのを考えるのは得意分野ではあった。


「暗黒《ダークネス》」


 リオンは右手を頭の上に掲げて、魔法を使用した。

 周辺が真っ黒い闇に包まれる。何も見えなくなる。


「おや、真っ暗ですね」


 スノは呑気な声でそう言った。

 この魔法は視界だけでなく、気配なども分かりにくくする魔法だ。完全にシャットアウトは出来ないが、自分より格上だろうが同格相手だろうが、誰にでも効く。

 魔法を使ったリオンは、この状況でもはっきりと相手の姿を捉えていた。

 バレないよう心がけて、リオンは動く。マーズの背後に回り込んだ。

 簡単にはバレないはず。そう思っていたが、マーズがリオンのいる方角に頭を向ける。

 その後、槍で突きを放ってきた。


「ふふふ、隠密攻撃もできるとは……いや、元々はそういう戦いも得意でしたね確か」


 スノがそう言った。


「でも残念。マーズは感知能力も一流です。不意打ちは不可能だと思ってください」


 勝ち誇ったスノの声が響く。

 槍でついた後、マーズは高速で動き斬りかかってきた。

 リオンは剣で受け止める。

 闇魔砲を撃つタイミングを見計らっていたが、なかなか来ない。

 そうこうしている間に、魔力をどんどん消耗してしまう。


「マーズ! トドメを刺してあげてください!」


 スノがそう言った。

 指示を受け、マーズは杖を振る。

 持っていた剣、鎌、槍が魔力を帯びて、光始める。

 マージは重ね合わせ、魔力を集中させる。

 強力な攻撃が来る。受け切れる可能性は低いので、回避するため全神経を手中する。


「殲滅砲《ジェノサイド》!!」


 技名をスノが叫ぶ。

 それと同時に、凄まじい魔力の砲撃がリオンに向かって飛んで行った。

 かなりの速度の攻撃だったが、避けられなくはなかった。横に大きく飛んで避ける。


「!!」


 砲撃は進路を変えて、リオンの避けた方向に飛んできた。

 どうやら追尾してくる攻撃だったようだ。

 これだけの速度で追尾してくるとなると、逃げ切るのは難しい。


「くっ! 闇壁《ダーク・ウォール》!」


 魔法の壁を張り、防御することを選択した。

 凄まじい攻撃が壁に直撃する。

 重ねて張る時間がなかったので、一枚だけしか張ることができなかった。

 あっさり破壊され、攻撃がリオンに直撃する。


「ぐああああああ!!」


 痛みで雄叫び上げた。

 リオンは力なく地面に倒れる。

 何とか力を入れて、立ち上がるが、ボロボロだった。肩で息をしており、今にも意識を失いそうだった。


「凄いですね。今の攻撃を受けて立てるとは。魔界でとても強くなったんですね」


 心から関心したような表情でスノはそう言った。


「旧知の中としては殺したくはないですが……生かしておいても邪魔になるだけですので、ここは殺して差し上げましょう」

「くそ……何が旧知だ。勝手に私の知り合いを名乗るな」

「本当に私はスノですよ。初めて会った時のあなたは中々希望に満ちていい目をしていましたよ。あの時は、魔導書を仕入れて売ってあげたんでしたっけ。懐かしいです」

「……本当に、スノなのか?」

「最初からそう言っているでしょう」


 リオンは否定はしていたが、本当にスノであるとどこか気づいていた。

 姿形、声などは変わっていたが、表情の作り方や喋り方など、どこか共通点が残っていたからだった。

 それでも違うと信じたかったが、昔の話をして、本人であると確信した。


「さて、トドメを指してください。マーズ」


 マーズは主の指示に声で応答はしなかったが、淡々と実行しようとする。


(くそ……こんなところで……死ぬわけには……)


 何とか避けようと思ったが、体動かなかった。

 魔力を大量消費した上に、先ほどの砲撃を受け、肉体も大きく損傷した。

 気力で立っているだけで、まさに限界寸前という状況だった。

 マーズが魔法を使う。

 光の剣がリオンに向かって飛んで行った。


「魔弾《マジック・バレット》」


 剣がリオンに当たる寸前。

 聞き覚えのある声が聞こえてきたと思ったら、剣が爆発し消し飛んでいた。

 リオンは振り向く。

 悠然とライズが佇んでいた。

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