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「わぁ~綺麗!」
シーラが目を輝かせる。
山頂には巨大な木が一本だけそびえて居た。
樹齢千年は超えてそうなくらいの大きさだ。
木には濃いピンク色の綺麗な花が咲いてた。桜とはちょっと違うが、かなり綺麗で見ごたえがある。
風が吹くと花散り、花吹雪が地上に降り注いでいる。幻想的な光景だった。
こんな綺麗な木があるとはな。結構この世界に生まれて長いのだが、知らなかった。
まだまだ知らないこともたくさんあるんだな。釣りは楽しいけど、それだけじゃなくて旅行とかももっと行っておくべきだったかもしれない。
「綺麗でしょ! これがラウント山名物の、アノスの大樹よ! 今年は満開ね! いいタイミングでこれたわ!」
エミルは満足げな表情で、大樹を見ていた。アノスとは木の種類のことだ。この大樹のように、濃いピンク色の綺麗な花を咲かせる。
見たことはあるのだが、ここまで巨大なのは初めて見た。
「確かに綺麗だな。しかし、この場所は不思議だな。こんな高い場所にあるのに、温かいし、普通に植物も生えている」
リオンが不思議そうにそう言った。
言われてみれば確かにそうだ。
木は大樹以外に生えていないが、草は地面に生い茂っている。
ラウント山はかなり高いので、普通ならめっちゃ寒いはずなのだが、なぜか温かい。どういう理屈なのだろうか。
「ここは特殊な魔力が流れているみたいで、その関係で温かいみたいね。詳しくは知らないけど」
エミルが説明した。まあ、よくわからないが、特別な場所なんだな。
暖かい方が花見には良いだろう。
「さて、飯を作るか」
この綺麗な花を眺めながら、飯を食べて酒を飲みたい。
俺は食材の調理を開始した。
「私も手伝うわ!」
エミルがそう申し出てきた。
「お、お前が?」
「な、なによその顔は! 手伝うくらいは出来るわよ!」
正直不安ではある。
料理は細かい作業も多いので、手伝ってくれる人がいれば、早く終わるが……エミルは不器用そうなので、果たしてちゃんとできるだろうか。
本人はめちゃくちゃやる気みたいで、断っても手伝ってきそうである。仕方ない許可するか。
「わかったよ。じゃあ、このドラゴンの肉をサイコロみたいに切り分けてくれ」
「了解よ!!」
エミルは気合を入れて、切り始めた。流石に切るのは得意なようで、すぐにサイコロサイズに切った。
切ったドラゴン肉を塩コショウにまぶす。サイコロステーキを作るつもりだ。
「これちょっと立ったら焼いてくれ。焼き加減は任せるけど、焼すぎだけはだめだぞ」
「うん!」
エミルに出す。焼くくらいは流石に出来るだろう。
「シーラも手伝う~」
今度はシーラが手伝いを申し込んできた。
良い子である。
「ありがとう。このパンを切り分けてくれるか。そのあと、コップに飲み物を注いでくれ」
「は~い」
元気よくシーラは返事をしていた。
ちなみにリオンは座っており、そのリオンの肩をライラがもんでいる。偉そうなやつだな全く。まあ、もう手伝ってほしいことはないから、良いけどな。
俺は魚の料理に入る。
ロブトを塩につける。そのまま丸焼きにするつもりだ。この魚はシンプルに料理するのが一番おいしい。
そしてクレストルだが、大きいのでまずは肉を切り分ける。
クレストルの切身は、綺麗な白色だった。脂も結構乗ってそうな感じである。
そのまま焼いても美味しそうだが、ここは調味料を使って照り焼きを作ろう。
あと、川魚だが生でも食べられそうだ。全く臭みがないし。
刺身にするのもよさそうだ。
頭は切り取って、鍋に入れる。途中で収穫した山菜、調味料と一緒に煮込んでスープを作るつもりだ。この頭からは良い出汁が出そうな気がする。
始めて作るので、美味しくならないかもしれないが、その時は仕方ないな。
クレストルの切身にたれをかける。たれは自分で作った特製のやつだ。
今日は一応持ってきていた。たれにつけて、しばらく寝かせる。
残った切身は、さらに切って刺身にする。身が綺麗で美味しそうだ。
その間に、ロブトを丸焼きにした。
しっかり焼いていく。
「焼きあがったわよ!!」
エミルがそう言った。
ドラゴンのステーキが美味しそうに焼けていた。中はちょっとレアである。
めちゃくちゃ美味しそうだ。
「皿に盛りつけてくれ」
「はい!」
俺の指示でエミルがさらにステーキを盛り付ける。
ロブトがもうそろそろ焼きあがったので、火を消して皿に盛り付ける。
その後、照り焼きを焼き始める。
美味しそうな匂いが、周囲に漂ってきた。これはかなり美味しそうだ。
鍋はもう少し時間がかかりそうだ。結構いい匂いがしている。うまいのかもしれない。
数分後、照り焼きが焼きあがった。おいしそうである。早速皿に盛りつける。
スープも完成し、お椀に注いだ。
料理が完成した。シーラが切り分けてくれたロングパンと、酒もある。
贅沢な料理だった。
「それじゃあ、食べるか」
「うん!!」
前世ならここで乾杯とかしてそうだが、この世界にその文化は存在しなかった。
それぞれ飲み食いし始める。
まずは照り焼きから食べた。
一口食べてみる。
美味い。
めちゃくちゃ柔らかく、食べた瞬間口の中でとろけた。魚の旨味と、たれの旨味が同時に舌を包み込む。絶品だった。
クレストルの刺身も食べてみる。塩をつけて食べた。
これもうまい。
とにかく身が柔らかい。ひと噛みすれば、旨味が刺身からあふれ出して、口の中全体に溶けて広がっていく。
こんな美味しい魚だったのか。今日は釣れてよかった。
酒も飲んでみた。日本酒、ではなくヤマット酒だったか。
飲んでみる。
中々美味しい。
ただ、酔いそうな感じは一切しなかった。
「どの料理も美味しいね! お兄ちゃんは料理の天才だね!」
シーラが無邪気にほめてきた。天才と言われて結構嬉しい。まあ、ぶっちゃけ大したものは作っておらず、素材がいいから美味しくなっているではあるが。
ほかのも食べてみるが、どれも美味しい。
スープも美味しかった。クレストルの旨味がしかっりスープに溶けだしており、絶品だった。
酒を飲みパンを食べながら、料理を食べていく。
ちらりと横の様子を見る。
エミルがぐびぐびとウイスキーを飲んでいた。
顔が赤く染まっている。明らかに酔っぱらっている。
確かエミルは酔うと暴れるんだっけ? 暴れて料理が台無しにされてはまずいので、いつでも何とか出来るよう警戒する。
しかし、エミルは暴れない。
なぜか真っ赤な顔でこちらをじっと見てきていた。
な、なんだ?
よくわからない。まあ、酔っぱらいの行動に意味は求めない方がいいかもな。
「ライズ!!」
リオンがいきなり言ってきた。こいつも酒をたくさん飲んだのか、明らかに酔っている。
「お前は強い! 認める! だが、絶対超えてみせるぞ!」
と力強く力説した。なんか、口調が変だ。昔のリオンみたいになっている。
「うわあああん、魔王様~美味しい、美味しすぎます~」
ライラは号泣しながら料理を食べていた。泣き上戸だなこいつは。
「皆変になってるね~」
リンゴジュースを飲みながらシーラが言った。彼女には酒でなくジュースを飲んでもらっていた。
「そうだな」
「お兄ちゃんは普通だね」
「俺は酒に強いからな」
「凄いね~。このジュース美味しい~」
シーラはリンゴジュースの味が気に入ったのか夢中になっていた。
そのまま食べ続けた。
どれも大満足の出来だった。
満腹になるまで食べ続けた。
「ねぇライズ。ちょっと来て」
食べ終わった直後くらい、エミルにそう言われた。
「なんだ?」
「いいから」
とエミルは俺の腕に自分の腕を絡めて来た。
エミルの豊満な胸が、俺の腕に当たりドキッとする。
言われるがままエミルについていった。一体何の用事なのだろうか。
結局エミルは暴れることなく、食事を終えていた。
なぜか俺の方をずっと見てきていたが、それ以外変な行動は取っていない。
頂上から少し降り、人気ないところまできた。
「ここならいいわね」
「何をするんだ?」
尋ねると突然エミルが抱き着いてきた。
「!?」
「もう我慢できない」
突然の抱擁だった。その後、エミルは自分の服を脱ぐ。
「ちょ!?」
ど、どういう状況だ。なんで脱いでるんだ?
エミルの巨乳が視界に入る。
何回か見たことはあるが、至近距離で見ることになった。
「触って」
エミルは厚い吐息を口から漏らしながら、そう言った。
「そ、それは……」
触れと言われも、すぐに触れない。
エミルは俺の手首をつかみ、自分の胸に俺の手を押し当てた。
柔らかい感触が手に広がる。
思わずもみもみとしてしまった。最高の感触である。
エミルは酔ってこんなことをしている。止めなければいけないと分かっている。実際、俺の力があれば、やめさせることだって簡単にできた。こういう状況になってしまっては、歯止めが効かなくなってしまうのが、男の本能だった。
「ライズ」
エミルが俺の名を呼びながら、自分の唇を俺の唇に近づけてきた。
唇と唇が触れる直前の距離まで近づく。
そして、
「くー……」
触れる直前、エミルがぐったりと俺の胸に顔を押し付けて、寝息を立て始めた。
どうやら酔いすぎて寝たようだ。
このまま行けばもうちょっとで……
これ以上考えるのはやめよう。
俺はエミルに服を着せて、眠らせた。
それから山から降りて宿で一泊した。
エミルは山から降りる際もずっと寝ていたので、俺が運んだ。
翌日。
「き、昨日のことは忘れて!」
朝起きたらエミルが顔を真っ赤にしてそう言ってきた。
酔いすぎて記憶が飛んでそうだと思ったが、普通に記憶があったようだ。
それはそれでこちらもちょっと照れる。
何せ胸を揉んだあと、さらにキスしそうになったんだからな。
「努力する」
「ど、努力って何よ〜」
「ま、まあ、気にするな。酔ったらそういうこともあるさ」
「……別に酔ったからってわけじゃ……誰にでもするわけじゃないし」
「ど、どういう意味だ?」
「あ、ち、違う! 酔ったからよ! やっぱり私酒飲むとダメね!」
何だかよく分からないが、やっぱり酔ったからなのだろう。
あんまりエミルに酒を飲ませないほうがいいかもしれない。
俺の方が抵抗すればいいだけの話ではあるが……昨日理性が持たなかったからな。
「でも花見は楽しかったな。誘ってくれてありがとうな。おかげでいい景色が見れた」
「そ、それはよかったわ。私も楽しかったし、来年もいきましょう!」
エミルは嬉しそうな表情でそう言った。
花見は終わり、全員で家に帰った。




