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その後、宿に帰ったら夜になっていたので、一泊する。
三部屋とっており、男の俺は一人部屋で寝た。
そして、翌日、早朝。
早速釣りをするため、ラウント湖に向かった。
ラウント湖は綺麗な湖だった。水が透き通っている。水質は最高に良いだろう。
近くにラウント山がそびえて居る。
かなり高い山だ。雲がかかっており、山頂を見ることが出来ない。
「さて、釣るか」
「今日は花見をしに来たのよね」
「もちろんだ。釣ったらついでに山も登るぞ」
「言っとくけど、釣りがついでだからね!」
エミルが少し怒ったような口調で言ってきた。
「また釣りか。まあいい。やるか」
リオンは悪態をつきながらも、釣りの準備を始めていた。
この前の釣りで楽しさに目覚めたのだろう。釣り好きが一人増えるのは良いことである。
「つりとは?」
ライラが尋ねてきた。
俺は釣りについて説明する。
「そんなの湖に入って直接捕まえればいいのはないでしょうか?」
「全員それ言うな。それじゃあ、楽しくないだろうが」
お決まりのように湖に入って魚を取れという。
そんなのは百も承知だ。その気になれば、10秒くらいで、この湖にいる魚全部捕まえられる。
それじゃあ、意味がない。この釣竿で魚との勝負に勝つことにこそ意味がある。
「なんかよくわかないんですが、魔王様がやるのなら、私もやってみます!」
魔王の影響を受けてライラは釣りを始めた。
動機がちょっと気に入らないが、始めるのならなんでもいいだろう。
「今回はどんなお魚が釣れるかな~」
シーラは楽しそうに釣りの準備を始めていた。
彼女も割と釣りを楽しんでくれるようになったようだ。
「今回は大物を狙って、湖の中心部で釣る」
「大物楽しみ~。シーラ船作る!」
シーラが自分の能力を使用し、船を作成した。いつものマーブル模様の変わったデザインの船である。
正直、俺は魔法で浮けるのだから、船は要らないのだが、作ってくれるなら乗ろう。
5人で船に乗り込む。
「しゅっぱーつ」
シーラが船を動かし始めた。自分で作ったものを好きに操れるのだから、便利な能力である。
広いラウント湖の中心まで到着した。本によればこの辺りが、一番湖で深い場所のはずだ。
「じゃあ、釣り始めるぞ」
餌をつけた後、長い釣り糸を湖に垂らす。
全員俺に続いて、垂らし始めた。
「きた……!」
釣り糸を垂らして数分後。
リオンの竿に辺りがあった。
強く引いている。かなりの大物だ。
まさか早速クレストルが釣れたのか!?
相当強い引きで、かなり引いている。
しかし、一瞬で引きがなくなった。
「くっ」
リオンは悔しそうに釣り糸を引き上げる。
「む?」
釣り糸に海藻がからみついてた。
これは……
「どうやら地面に引っかかってたんだな。糸を下げすぎたんだ」
「な……」
リオンは少し顔を赤くする。
釣りをする際、よくあるミスである。
確か日本では地球を釣るって言われていたはずだ。ここは地球じゃないので、変な言い方だな。
異世界を釣る、って言い方もおかしいか。
「くそ」
恥ずかしそうな表情を浮かべ、リオンは再び竿を湖に投げ入れた。
結構かわいいとこあるじゃないか。
それから一時間経過するが、誰の竿にも辺りは出ない。
やはりそうそう釣れるものじゃないか。
この深さにはクレストル以外の魚もいないし、ほかの魚を釣ることも出来ない。
「私、ほかの魚狙ってみる」
エミルが糸と餌を変えて、釣りを再開する。5人で釣りをしてなにも釣れないのは嫌なので、これは助かった。正直、大物狙いだとなにも釣れないのは現実的にあり得るからな。
「あ! 来た!」
エミルは餌と糸を変更してすぐに辺りが来た。
魚を釣り上げる。
「わっ! 結構大きい!」
80㎝くらいのなかなか大きな魚が釣れた。
こいつはロブト。鮭みたいな見た目の魚である。味は鮭っぽくはなく、脂身が少ない白身魚である。生臭さがほとんどなく凄く美味しい。
焼いて食べるのが定番である。
シーラに桶を作ってもらい、桶の中に湖の水を入れる。
そのあと、ロブトを入れた。
大きな魚が桶の中を泳ぐ。
見た目が鮭なのでかなり美味しそうに見える。実際、味はだいぶ違うのだが美味しい。
俺はクレストル一本狙いで、釣りを続けていく。
「変えると結構すぐ釣れるんですね~。変えてみます!!」
ライラがエミルと同じく、糸と餌を変えた。
「私は大物を釣ってみせる」
リオンは頑なに変えなかった。俺と同じくクレストル一本狙いのようだ。
どっちが早く釣りあげられるか勝負だな。
「おっきおさかなさんみたいな~」
シーラもクレストルを釣ろうとしていた。
純粋にどんな魚か興味があるようだ。
「お!! きました!!」
ライラの竿が大きくしなる。魚がかかったようだ。
釣りは初めてのようだが、釣りあげられるだろうか?
「釣れました~」
心配しながら見ていたが、意外とセンスがあるようで、絶妙な力加減で竿を引き上げていた。
エミルと同じくロブトを釣り上げた。
大きさはエミルのロブトより大きい。1m近くあるかもしれない。ロブトは大きな魚ではあるが、ここまで大きいのは珍しい。
「なるほど。確かに釣れると結構楽しいですね!」
ライラがいい笑顔でそう言った。釣りの楽しさに目覚めたようだ。
その後、当たりが来ることなく時間が流れる。
クレストルは全然かからなかった。
流石にこれ以上、時間を使うと花見をする時間がなくなってしまう。
そろそろ終わりにするか。
そう思ったその時、
「!!」
俺の竿に当たりが来た。
物凄く大きな当たりだ。
地面に引っ掛けた可能性もあるが……いや、これはちゃんと魚がかかった。
深い場所の魚を引き上げるのは非常に難しい。力加減を間違えると、途中で採れることも多い。
ゆっくり糸を引き上げていく。
かかったら早く引き上げたくなるところだが、逸る気持ちを抑えて、糸を手繰り寄せていった。
そして、魚が目視できる位置まで上がってくる。
金色の鱗を持った巨大な魚だ。間違いない。クレストルである。
ゆっくり糸を手繰り寄せ、船の上にあげるのに成功した。
「よし、釣れた!」
「お兄ちゃん、凄い!」
「お、おっきいわね……」
「おお! 綺麗な魚です!」
リオンを除く四人は褒めてくれた。
「くっ……」
俺と同じくクレストルを狙っていたリオンは、悔しそうな表情を浮かべていた。
クレストルの大きさは恐らく2m50cmくらいはありそうだ。めちゃくちゃでかい。
クレストルは2m越えは当たり前だという話だが、2m50cmもあるのは結構珍しいのではないか。
味もかなりうまいらしい。食べるのが楽しみだな。
「よし、そろそろ花見に行くか!」
「ま、待て! こっちにも当たりが!」
リオンがそう言った。確かに竿が大きくしなっている。
まさか、二匹目が……!?
そう思った……さっきと同じくすぐに引きがなくなり、糸を引き上げたら、海藻がついていた。
また地面に引っ掛けたみたいだ。
「今回は終わりにするか」
「く、くそ……」
リオンは悔しそうな表情を浮かべていた。




