↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【3月15日書籍発売】アラサー魔導士の辺境湖畔暮らし〜初級魔法で魔王を瞬殺してしまった俺は、無気力に引きこもりたい〜  作者: 未来人A
第七章 花見

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/82

67

 ラウント山は結構遠い場所にあった。


 俺たちの速度で移動しても、6時間ほどかかった。

 まあ、俺一人だけなら全然もっと早くつけたが、一人だけ先に行くわけにもいかんからな。

 五人で1番移動速度が遅いのはライラだ。彼女に合わせたので、少し遅くなってしまった。

 ゆっくり景色を眺めて移動するのも嫌いじゃないので、楽しみながら飛行した。

 ラウント山近くに到着する。


「町に立ち寄りましょう。お花見するならもっといろいろ買っておきたいし」


 エミルがそう提案した。

 ラウント山付近には、町がある。名前はそのままラウントだ。

 結構大きめの町だ。人口も多い。中央には大きな城がある。この辺りを治めている貴族が住んでいた。

 確かに町によった方が、花見をするにはいろいろ買えていいかもしれない。

 現状、調味料とか料理道具、釣り道具は持ってきた。食材は魚は獲れるが、ほかのものが取れるか分からない。一応パンなどは買っていった方がいい。

 また、酒はもってきていないので、酒も買いたかった。

 俺は普段はあまり酒は飲まない。

 レベル9999になったからなのか、体質のせいなのか。酔えないのだ。酒を飲んでもちょっとだけ気分が高揚するくらいである。


 魔力が多ければ多いほど酔いにくくなるという話は、聞いたことがないが、もしかすると、多すぎると効かなくなったりするのかもしれない。

 正直、酔えないなら酒よりジュースを飲んだ方が美味しい。

 まあ、花見とかでは、酒を飲んだ方が楽しい気がするので飲みたい。

 ほかにも本屋でラウント山麓の湖で釣れる魚について、情報を知りたかった。

 何も分からない状態で釣りをしても、うまく行かないことが多い。

 もちろん、適当に釣っても何とかなることもなくはないが、それは単なるビギナーズラックだ。

 ちゃんとどんな魚がいて、どんな釣り方をすればいいか調べてから行った方が、釣れる確率は高くなる。


「わかった。町によろう」


 俺はそう言った。

 反対するものはいなかったので、全員で町の前に入った。


「この町は魔物を見破る、探魔師がいるわ。あんまり派手に行動すると騒ぎになるから、シーラ、リオン、ライラは宿でゆっくりしてて」


 エミルがそう言った。

 探魔師がいるのか。町に潜んでいる魔物をあぶりだす仕事をしている者たちだ。魔物は人間に扮せるので、放っておくと悪事を働くケースも多い。シーラとかライラのような、人畜無害な魔物ばかりではない。

 ラウントのように、大きめの町だと高確率で探魔師がいるので、魔物はあまり派手に活動はしない方がいい。

 宿でちょっと過ごすだけで、探魔師に発見されることはまずない。

 買い物などは俺とエミルの二人で行くことにしよう。

 まずは宿を探して、部屋を借りる。

 リオン、シーラ、ライラの三人を置いて、買い物に向かう。


「お兄ちゃんとお姉ちゃん。すぐ帰ってきてね」


 シーラは寂しそうな表情でそう言った。ちょっと可哀そうであるが、仕方ない。

 リオンとライラにシーラのことは任せよう。

 魔王ではあるが、リオンは元人間である。人間の町で不要な騒ぎは起こさないだろう。

 俺とエミルの二人で町を歩く。


「さて、買い物するか」

「そ、そうね」


 エミルは少し顔を赤らめた様子でそう言った。

 少し様子がおかしいな。


「なんだ? 体調悪いのか?」

「わ、悪くないわよ! どうしてよ!」

「いや、ちょっと様子変だったから」

「へ、へへへ変じゃないわよ!?!? なに言ってんのよ!!」


 顔を真っ赤にしてエミルは言った。やっぱり変である。


「もう……意識してバカみたいじゃない」

「意識? 何の話だ?」

「何でもない!」


 怒ったような表情でエミルは言ってきた。

 なんだかよくわからないが、怒らせてしまったようだ。

 なんでだろうか? 理由が分からん。

 理由が分からないのに、謝っても逆に怒らせてしまいそうだな……

 どうするか……

 周囲を確認すると、アイスクリームを売っている店があった。

 美味しそうだ。俺は店員に話しかけ、アイスクリームを二つ買った。


「ほい」


 買ったアイスクリームをエミルにひとつ渡した。


「え? いいの?」

「ああ。なんか分からないが機嫌直して欲しい」

「……あ、ありがと」


 エミルは受け取ってアイスを食べた。


「美味しいわ!」

「そりゃよかった」


 俺もアイスを食べる。なかなか濃厚なミルク味のアイスだった。

 結構久しぶりに食べたので、非常に美味しく感じた。


「ご、ごめんなさいね。怒っちゃって。心配してくれたのに。ライズは別に悪くないわ」

「そうなのか?」

「うん」


 照れた表情でエミルは頷いた。

 俺が原因でないようで良かった。

 なら、なんで様子が変なのか聞きたいところではあるが、聞くとまた怒らせる可能性が高い。

 体調は悪くないということなので、そっとしておこう。


「あ!」


 エミルが何かを発見したように目を見開いた。

 屋台があった。フルーツとクリームを挟んだサンドウィッチがある。

 日本ではフルーツサンドと呼ばれている料理だが、この世界ではクリームフルーツパンという呼び名だったはず。


「あれ大好きなんだ! 一緒に食べようよ!」

「確かに美味しそうだな」


 普段の生活では甘いものはあまり食べない。魚とか肉ばっかり食べているからな。

 甘いものは、ラウントのような大きめの街に行かないと食べられない。小さめな町や村には売っていない。

 めちゃくちゃ甘いものが好きというわけではないので、わざわざ買いには行かないのだが、こうして目の前にあると食べたくなってきたな。


「残り一個だよ!」


 屋台の店主がそう言った。


「い、一個なんだ……」

「そうか。俺は気にせず食べていいぞ」


 ちょっと残念だけど仕方ない。甘いものはさっきアイス食べたから、あれでいいと言えばいいからな。

 エミルはクリームフルーツパンを買ってきて、それを半分食べた。

 その後、


「は、はい。あげるわ」

「え?」


 差し出してきた。

 意外な行動に驚く。


「いいのか? 食べなくて」

「だ、大丈夫よ。いいから食べて。さっきのお返しよ」


 そう言って渡してきた。

 本人がいいと言っているのだから、いいんだろう。

 遠慮せず食べようと思ったが、ここでこのまま食べると間接キスであるということに気づく。

 い、いや、俺はもう30になる男だぞ。

 確かに恋愛経験ゼロではあるが、間接キス程度でドギマギしていいような年齢じゃない。

 こ、こんなの何ともない。

 俺はそう心に言い聞かせ、パンを食べた。

 甘味が口の中に広がっていく。フルーツの味と合わさって絶妙な美味しさだった。

 この店はクリームフルーツパンの店の中でも、かなり評判がいい店に違いない。

 全部食べ終えた。


「美味しかった?」

「ああ、絶品だった」

「良かった」


 エミルは嬉しそうに微笑んだ。

 しかし、よく考えれば、半分渡すなら割れば良かっただけで、自分で食べた後渡す必要はなかったのでは?

 まさか狙って間接キスを……

 そ、そんなわけないか。キモい妄想はやめよう。多分割ると中身が崩れてしまうから食べたんだろう。

 多分そういうことだ。


「こっちに商店街があるみたいよ。行ってみましょう」


 エミルがそう言った。忘れかけていたが、今回の目的は花見のための買い出しであった。

 色々買っていきたい。

 商店街に入る。様々な店が並んでいた。屋台も結構ある。

 人も大勢歩いており、賑わいを見せていた。


「パンを買っておきたいよね」


 調味料などは持ってきたが、パンは持ってきていない。途中で作ることもできない。

 やはりパンはあったほうが、料理は美味しく食べられる。出来れば持って行きたかった。


 パン屋に入る。


 食パンや、フランスパン……この世界ではロングパンと呼ばれていたか。様々な種類のパンが置かれていた。

 食パン五枚とロングパンを一本購入した。


「次は酒だな」

「お酒かぁ……」


 エミルの反応は微妙だった。


「なんだ? 苦手なのか?」

「いや大好き……でも、ちょっと酔いやすい体質で、飲んだら何かしちゃいそうで怖いのよね」

「悪酔いするタイプか。何かって何なんだ?」

「暴れたりする時もあったわね。なんかお金使いすぎたりした時もあるし」

「そうか。暴れたら俺が止めるから安心しろ」

「ど、どうやって止めるの?」

「捕縛魔法を使う」

「う、縛られるのね……それなら動けないだろうけど」


 縛られるとかいうと、ちょっとエロく聞こえるからやめてほしい。

 もちろん酔ったエミルにエロいことをしたりは絶対にしない。するわけがない。


「止めてくれるなら飲んでみようかしら」


 エミルは酒を飲む気になったようだ。


「逆にライズは酔わないの? 二人とも酔ったら意味ないけど」

「俺は絶対に酔わない」


 レベル9999になってから、何回か酒を飲んで試したが、どんだけ読んでも、酔うという状態にはならない。

 本当に少しだけ気分が高揚するくらいである。あれは酔っているうちには入らない。


「それは頼もしいわね。お酒強いのね」


 前世ではそんなに強くはなかった。

 レベル9999になる前は、年齢的に飲まなかった。

 この世界では酒の年齢制限などは法律でかかったりはしていない。無論、子供は飲まないよう推奨されているが、飲ませても罰せられたりはしない。

 ただ、前世での常識があったので、飲む気になれず、飲まずに過ごしていた。

 20歳を超えてから飲んでみたら、全然酔わなかったというわけだ。


「じゃあ、今回はがっつり飲んじゃおうかしら。お酒いっぱい買っちゃお」


 エミルは楽しそうにそう言った。酒自体はやっぱり結構好きなんだな。

 俺たちは酒屋に入った。

 商店街には複数酒屋があった。一番大きな酒屋に入る。

 中に入ると、様々な酒が並んでいた。


 この世界で一番ポピュラーな酒はウイスキーである。

 ウイスキーを水で割って飲む場合が多いが、そのまま飲むやつも結構いる。

 ほかはワイン、ジン、ビールがある。

 ビールはそんなに売っていないイメージなのだが、この酒屋には売ってあった。品揃えが豊富だ。


 遠い異国の酒もあった。


 匂いを嗅がせてもらうと、今世では嗅いだことはないが、前世では嗅いだことのある匂いだった。


「日本酒か?」

「にほんしゅ?」


 エミルが不思議そうな顔で聞いてくる。

 この世界に日本はない。日本酒という名前では絶対にないだろう。


「これはヤマット酒だね。珍しいから結構高いよ」


 ヤマット酒か。確かこの世界には和風な国があった気がする。今のところ行ったことはない。いつか行こうと思っていたが、遠すぎて面倒なので後回しにしていた。

 日本酒っぽいものがあるのなら、本当に昔の日本みたいな場所かもな。行ってみたいかもしれない。

 値段はそこそこしたが、買えない値段ではなかった。

 まあ、正直俺の場合、金を稼ぐのは困らない。ちょっと強めの魔物や生物を倒して素材を売ったら、すぐに金は稼げる。酒に金をかけるくらい何の問題もなかった。


「買おう」

「毎度あり!!」


 日本酒もといヤマット酒を購入した。

 あとはウイスキーやワインも購入する。結構いっぱい買ったので、飲みまくれるな。

 花見も盛り上がりそうだ。

 また、ジュースも買った。

 シーラが飲むようだ。彼女は魔物なので酒を飲んでも平気、ではあると思うのだが、あんな小さな見た目の子が酒を飲んでいるのは、正直見てられない。ジュースを美味しそうに飲んでほしい。

 買ったのはリンゴジュースである。搾りたての美味しいやつだ。シーラも気に入るだろう。


 飲み物を買い終わったあと商店街を歩いていると、本屋を発見した。


「ちょっと寄っていいか?」

「いいわよ。でも、何買うの?」

「山付近に湖があるんだが、そこで何が釣れるか、どんなエサで釣れるかとか調べる」

「アンタ釣りのことしか考えてないわよね」


 エミルは呆れた表情でそう言った。

 しか考えてないということはない。釣りを最優先で考えて行動しているだけだ。

 エミルの許可もあったし、俺たちは本屋に立ち寄る。

 古めの本屋だった。果たして売っているか。

 探していると、魚関係の本を発見する。トラント湖の生物について、というタイトルだ。

 ちなみにラウント山麓の湖の名前はトラント湖という。響きが結構似ている。

 早速買ってみた。


「買えてよかったわね」

「ああ」


 早速読んでみると、凄い数の魚が釣れるようだ。

 俺が住んでいるアブロ湖でも、釣れるような魚が釣れるみたいだ。

 アブロ湖にもいない魚も釣れる。


「お、これは!」


 本を読んでいて思わず声を上げる。


「ど、どうしたの?」

「ラウント湖では、クレストルが釣れるらしい」

「何よクレストルって」


 エミルはぽかんとしたような表情で聞き返した。

 知らないのか。まあ、無理もないか。珍しい魚だから、釣り人は知っているが、詳しくない人は知らないのだろう。

 湖にいる2mを超える巨大な魚である。綺麗な湖にしか生息しない魚だ。湖の中でも一番深い場所にいるとされている。

 アブロ湖では釣ることが出来ない。あの湖は水質は非常に綺麗なのだが、深さがあまりないため、クレストルが生息できる環境ではない。


 ラウント湖は非常に深いのだろう。


 今まで一度も釣ってみたことがないだけに、ぜひ釣ってみたいものだ。

 深い場所にいるので、長い糸が欲しいな。

 持ってきた釣り具に、そこまで長い糸はなかった。買う必要がある。

 商店街で釣具屋にもより、長い糸を購入した。

 ほか本を読みながら、適切な餌を選び購入した。

 これで釣り準備も万全である。


「本当に釣りが好きなのね」

「まあな」

「なんで釣り好きになったの?」

「それは……退屈だったから釣りを始めてみたらはまったんだ」

「退屈……だったの? ライズくらい強いなら、毎日楽しそうだけどな」

「そんなことない」


 強すぎても相手が弱すぎて何も楽しくはない。

 戦いを楽しい思ったことは、レベル9999になって以降なかった。

 この世界に来た当初は、修行の冒険に、大変だったけど楽しかったんだけどなぁ。


「何を遠い目して」

「なんでもないさ」


 昔を思い出して、遠い目をしてしまったようである。


「私もライズみたいに強くなったら分かるかしらね」

「そうだな」

「なら頑張って修行しないとね! これからもよろしくね!!」


 やる気出した表情でエミルは言った。

 エネルギーに満ち溢れた表情を見て、うらやましいと思った。それと同時に、エミルのことがどこか魅力的に見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。