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【3月15日書籍発売】アラサー魔導士の辺境湖畔暮らし〜初級魔法で魔王を瞬殺してしまった俺は、無気力に引きこもりたい〜  作者: 未来人A
第六章 エミルの過去

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「この辺りの……はず」


 エミルは、魔物が現れたダンジョン付近の村に行こうとしていた。

 すでにダンジョンにはおらず、別の場所に移動しているようなので、エミルは付近の村を目指した。

 出現した魔物が残忍な性格なら、人間を狙う可能性が高い。まずは村の無事を確認する必要があった。

 もし無事なら聞き込みなどをして、魔物がいる場所の手がかりを探すつもりだった。


「あった、あそこね」


 空から村の場所を確認した。

 のどかな村だった。魔物に襲われているような様子はない。空から見る限り、人々も通常通り生活しているようだった。

 エミルは村に降り立ち、事情を聞きに行こうとした。

 その時、


「!!」


 前方から光の矢が飛んできた。

 攻撃だ。エミルは咄嗟に雷轟剣を引き抜き、矢を切り落とした。


「なかなかの反応だねぇ」


 矢を飛ばした敵がそう言ってきた。

 青い肌、2本の角を生やした魔物がいた。

 身長はかなり低く、人間の子供くらいのサイズである。顔つきも幼い。

 子供に見えるが、魔物の見た目と年齢は一致しないことも多い。エミルは見た目で油断はしなかった。


「僕は風雪、ラポンスタ。君は中々美味しそうだ。食べさせてほしいな」


 ラポンスタと名乗った魔物は、邪悪な笑みを浮かべてそう言った。

 最近になって、シーラやライラなど、そこまで悪くない魔物の存在もエミルは知ったが、ラポンスタは明らかに悪だとすぐに分かった。

 空を飛んでいるので魔力を保有しているはずだが、ラポンスタの魔力は読めない。どうやら隠しているようだ。

 魔力を隠す魔物は知能が高く、実力もかなり高い可能性が高い。

 冒険者パーティーを壊滅させたという話も嘘ではなさそうだ。


(……厄介なことになったわね……ここで戦わないといけないなんて……)


 エミルはラポンスタの実力というより、戦う場所に厄介さを感じていた。

 この場所は村の近くである。ラポンスタがどんな攻撃を行うかは現時点では不明だが、もし広範囲に及ぶような攻撃をするのなら、村を庇いながら戦うことになる。

 下手に逃げるように注意喚起をしても、もう間に合わない。逆に村を守りながら戦わないといけないと、ラポンスタに知られて更に不利な戦いを強いられる可能性が高い。

 エミル自身の攻撃も、少しセーブしないといけない。

 何かを守りながら戦うのは、普通に戦うより明らかに難しかった。

 先に魔物の場所を発見し、人里離れた場所で戦いたいと思っていたが、こうなっては遅い。


(場所を変えてほしいって言って聞いてくれるとは思えないわね。あの人みたいに一撃で倒せればいいけど、流石に無理だし。何とかやるしかないわね)


 ラポンスタは実力的にはAランク以上は確定だ。アリアの話では、Sという可能性もあるようだ。

 Bランクくらいの魔物なら、一撃で倒せることもあるが、流石にAランク以上となると一撃で倒すのは不可能だった。

 エミルは雷轟剣を構える。一撃では倒せないだろうが、なるべく早く決着を付けるため、先制攻撃を行う。


「雷轟滅斬(らいごうめつざん)!!」


 最初に大技を使う。村に当たったりしないよう、雷撃の威力は少し弱めて攻撃した。


「わああ〜」


 ラポンスタは気の抜けた声を上げながら、攻撃を避けた。

 かなり俊敏な動きで攻撃を回避する。

 エミルの攻撃は雷撃と斬撃を同時に飛ばす。斬撃は避けられたが、雷撃は当たった。


「うっ!」


 電気をくらい、ラポンスタは痺れたようにうめく。


「はあああああ!!」


 エミルはその隙に、ラポンスタに斬りかかった。


「氷壁《アイスウォール》!」


 ラポンスタは手を目の前にかざしながらそう言った。

 氷の壁が発生する。氷のはずなのだが、かなりの硬度をがあり、エミルの斬撃を防いだ。


「ふー、危ない危ない。君厄介な攻撃するね」


 余裕そうな表情でラポンスタはいった。


「爆風《ウィンドバースト》!」


 凄まじく強い風が発生し、エミルを吹き飛ばした。


「くっ!」


 地面に叩きつけられる。


「う、うわ!?」

「なんだ!?」


 ちょうど着地地点が、村のど真ん中だった。

 驚き戸惑う村人たちの声が上がる。


「ま、魔物だ!」

「逃げろ!」


 村人たちは空に浮かぶラポンスタの姿を見て、パニックになり逃げ出し始めた。


「落ち着いて!」


 エミルは叫ぶが聞く人はいなかった。

 ちりじりに逃げられると、逆に守りにくくなる。村人からすれば、自分だけは助かりたいという思いで逃げているのだろうから、止めようがない。


「あれ? ここ人がいっぱいいるね」


 村に近づいてきたラポンスタがそう言った。


「全部食べちゃおうかな? でも、君が一番美味しそうだしな」


 ニヤリと笑いながらラポンスタはそう言った。彼にとって人間は捕食対象以外の何者でもないようだ。


「他の人間はどうでもいいでしょ? アンタの相手は私よ」

「そんなに君僕に食べられたいんだね」


 ラポンスタは愉快そうに笑いながらそう言った。


「お望み通り食べてあげるね!! 氷追尾弾《アイス・ミサイル》!!」


 ラポンスタは真上に手をかざしながらそう言った。

 空中くから大量の氷の棘が、エミルを襲う。

 避けると追尾してきた。雷轟剣で斬り落とす。


「!!」


 ミサイルのうち、一つだけが、村人の子供の方に飛んで行った。

 エミルは慌てて斬り落とす。


(あ、危ない……)


 何とか間に合い、子供は無事だった。


「よそ見は禁物だよ!! 巨大氷槍《ギガ・アイス・ランス》!!」


 ラポンスタは大きな氷の槍を構え、そして突いてきた。

 雷轟剣で槍を受け止める。


「!!」


 体の温度が急激に下がるのを感じ、エミルはすぐに槍から離れた。


「寒いかい? 君の剣も斬る以外のことができるみたいだけど、僕の槍も同じなんだ。相手を凍り付かせることができる」

「く……」

「普通なら今ので凍りついているはずなのに、全然動けるなんてやっぱり凄いね」


 ラポンスタは感心したようにそう言った。


(体が重い……)


 ラポンスタの氷結攻撃を受け、エミルの動きは鈍くなっていた。


(それなら……!!)


 エミルは雷轟剣に魔力を込める。

 雷撃を発生させた。雷の矢を複数作り、それをラポンスタに向けて放った。

 ラポンスタは氷壁《アイス・ウォール》で雷を防ぐ。


「まだまだよ!!」


 エミルは魔力をどんどん注ぎ続け、遠距離攻撃を撃ちまくった。


「な!」


 強化されたエミルの魔力は凄まじかった。次々に雷撃が襲って来て、ラポンスタも防戦一方になる。


「雷砲!!」


 大量の魔力の込められた、強力な雷撃がラポンスタに向かって放たれる。

 氷壁《アイス・ウォール》を吹き飛ばし、ラポンスタに強力な雷撃が直撃した。


「うわあああああ!!」


 叫び声が上がる。


「はぁ……はぁ……倒したかしら」


 連続攻撃で魔力を大量消費したエミルは、息を切らしていた。

 ただ、普通なら魔力切れになるくらいの攻撃をしたので、まだ残っているのは魔力アップのおかげである。


「く、くっそおおおお!! 人間が!! 人間の分際でこの僕をっ!!」


 大声が上がった。

 先ほどまで余裕の表情だったラポンスタだったが、怒り心頭という表情を浮かべていた。

 ボロボロの状態だったが、まだ死んではないようだ。

 魔力を隠す余裕がなくなったのか、自分の魔力を全力で曝け出している。


(こ、この魔力! 間違いなくSランク相当よ!)


 エミリはかなりの魔力を肌で感じ取った。アリアの予想通りAランクではなく、Sランク相当の強さを持っていそうだった。


「全部、壊れちゃえ!! 暴風雪《アイスウィンド・ストーム》!!」


 ラポンスタは魔法を使う。凄まじい風が起こり、雪が降り注いできた。

 ただの雪ではない。一粒一粒に凄まじい魔力が込められていた。


(まずい!!)


 あれに当たったら、おそらく無事ではすまない。一般人だったら、死ぬ可能性が高い。

 そう思ったエミルは、咄嗟に魔法を使う。

 無数の雷の矢を作りだし、ぶつけて行った。

 雷の矢が雪にぶつかった瞬間、雪が爆発した。エミルの見立て通り、一般人が当たればタダではすまないだろう。

 雪も無数に降り注いでいる。それでもエミルは凄まじい集中力で、全ての雪に雷の矢を当て続けた。

 何とか全ての雪に当てることに成功した。

 しかし、


「くっ……」


 大量の矢を放ったからか、エミルの魔力は限界に近かった。魔力が切れかかっているため、ふらふらと真っ直ぐ立つことができなくなっている。

 一方、ラポンスタも先ほどの魔法で魔力を大量消費して、疲労が見えるが、まだ切れかけというわけではなさそうだった。


「はははは! 勝負あったな!!」

「くっ……」


 ラポンスタは高らかに勝利宣言をした。エミルは悔しそうな表情を浮かべる。


(ここまで……なの?)


 もはや魔力は切れかけ。防御の手段はない。こちらかの攻撃手段もない。

 ここから逆転できる可能性はゼロに近かった。


(結局私は……あの人みたいにはなれないっていうの? あの狼の魔導士みたいに……)


 幼い頃の記憶がエミルの脳裏に蘇った。

 自分を助けてくれた狼の魔導士。強力な魔物を一撃で倒したあの魔力。

 狼の魔導士のようになりたいと、幼い頃強く願った。

 それはもう叶うことはない。そう悟りエミルは絶望した。


「さあ、死ねええ!!」


 ラポンスタは魔力を貯めきり、魔法を放とうとした。

 その時、


「魔弾《バレット》」


 聞き覚えのある声が聞こえてきたと思ったら、魔法の弾がラポンスタに直撃。

 ラポンスタは断末魔の悲鳴を上げる時間もなく、跡形もなく消滅した。


「……ライズ?」


 そう思って、魔法が放たれた場所を確認してみると、


「え?」


 狼の仮面を付けた魔導士が佇んでいた。

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