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【3月15日書籍発売】アラサー魔導士の辺境湖畔暮らし〜初級魔法で魔王を瞬殺してしまった俺は、無気力に引きこもりたい〜  作者: 未来人A
第五章 温泉旅行

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「凄い寒いわね……」


 エミルがそう言った。

 30階は冷気が漂っていた。

 俺はレベル9999になってから、過剰な寒さや熱さを感じなくなっている。

 暖かいや、涼しいくらいの感覚以上になることがない。

 30階は俺の感覚だと涼しいという感じだった。

 リオンとシーラもあまり寒さは感じないのか、平気そうな表情だった。

 地底湖があるとなると、水がいっぱいあるのだろうし、気温が低くてもおかしくはないか。

 先にすすで行くと、地底湖が見えた。

 透き通った非常にきれいな水だった。魚が泳いでいるのも目視できる。

 かなり広い湖で、対岸は相当先にある。これだけ広ければ、色んな魚が棲んでいそうだ。

 わくわくしてくるな。


「早速釣りをするか」


 俺は釣りの準備をする。

 最初に魔法でダンジョンの岩を加工し、それを桶のような形にする。

 その後、湖の水を桶に入れた。魚が釣れたら、まずはここに入れることにする。

 正直、何の餌に食いつくかわからないので、そこは手探りでやるしかない。

 一応、色んな種類の餌は持ってきたが、全部だめな可能性もある。

 まあ、その時はその時だ。

 最初は虫を餌につけて、釣竿を投げた。


「私も釣ってみよっと」


 エミルがそう言ってきた。

 彼女も釣竿を持参してきたみたいだ。釣りをみるだけじゃなく、釣りを実際にすることが修行になるとエミルは思っているようである。


「私はこのエサをつけてみるわ」


 と言って、小さなエビを釣り糸につけて、湖に垂らした。


「釣りなど面倒なことを。魚が欲しいならそんなもの使わなくても、魔法でやればいいだろ」


 リオンがそう言った。


「それじゃあ、面白くないだろ。釣竿で釣るから楽しいんだ」

「理解できんな」


 呆れたような表情のリオン。


「ま、お前に釣りは出来ないだろうし、そこで見とけよ」

「なんだと?」


 出来ないと言ったら、少しカチンとした表情をリオンは浮かべた。


「私にできないはずなかろう。馬鹿にするな」

「ほんとか? 釣りは繊細な作業が要求されるからな。向いてなさそうだぞ」

「大雑把なバカ女とでも言いたいのか? いいだろう。釣りなど楽勝にできると証明してやる。釣竿を貸せ」


 苛ついた様子でそう言ってきた。なんか結構ちょろいな。

 予備の釣竿を結構持ってきたので、一本くらいは貸しても大丈夫だ。

 俺はリオンに釣竿を貸した。

 餌は俺がつけた虫とは違う虫だ。俺の虫は芋虫っぽい見た目で、リオンが付けたのは、ミミズみたいな虫である。


「シーラもやってみる~」


 シーラも俺たちに並んで釣りをした。俺と同じ餌をつけていた

 四人で並んで釣りを行う。

 数分経過するがまだ誰も釣れない。


「釣れないわね~」

「餌が悪かったか? いや、まだ数分だし、こんなこともあるか」


 入れてすぐかかることもあるのだが、数分では釣れないことの方が多い。

 気長に待ってみよう。


「退屈だ。やっぱり、直接魔法で獲ったほうが……」


 とリオンが行っていると、釣竿がしなり始めた。

 結構強い引きだった。

 リオンは集中しておらず、竿を引き上げるのが遅れる。

 引き上げた時には、魚は付いておらず、餌だけが食べられていた。


「もっと早く引き上げないと」


 エミルがため息をつきながらそう言った。


「まあ、初心者だし仕方ないな」


 最初は釣りも意外と難しい。

 引き上げるタイミングとかを間違えると、餌が食べられるだけで終わったりもする。逆に速過ぎれば、餌にかかり切る前に引き上げることになる。この場合は、餌を失うことはないが、魚は釣り上げることはもちろんできない。


「……」


 リオンは明らかにイラついた表情を浮かべていた。


「魚の分際で……この私をコケにするなど……許せん」


 怒ったような表情で呟く。


「釣りのコツを教えろ!! 絶対に釣り上げてやる!!」


 リオンは怒りながら叫んだ。

 そう言えばこいつは結構負けず嫌いな奴だったな。

 一度魔界に落とされ、魔王となったが、そういう一面は変わっていないようだ。


「分かった」


 俺は言われた通り釣りに関してのコツを教えた。

 飲み込みは早い奴だし、すぐ上達しそうだ。ま、俺を超えるのはまだまだ先の話だと思うがな。

 今度は俺の竿に当たりがきた。

 リオンの餌でも俺の餌でも当たりがきたので、割とここの魚はいろんなものを食べているのだろうか。

 釣竿を握りながら、手のひらに神経を集中させる。


 来た!


 ちょうどいい引き上げるタイミングが来た。

 俺はすぐに糸を引き上げる。

 魚を釣り上げることに成功した。

 真っ黒い魚が釣れた。

 目が退化したのかない。牙は鋭く、噛まれると普通の人間の指なら食いちぎれそうだ。


 この場に普通の人間はいない。エミルも高ランクの冒険者だから、この程度の魚に指を持っていかれたりはしないだろう。

 しかし、初めて見る魚だな。

 なんていう魚なのだろうか。正直、見た目的にはあまり美味しそうには見えないのだが、どうなんだ?


 食べてみれば分かるか。

 俺は釣れた黒魚を桶に入れる。

 元気良さそうに泳ぎ始めた。


「うーん、食べられるのこいつ……」


 怪しそうな目つきで、エミルは黒魚を眺める。


「気持ちはわかるが、見た目で味は決まらないからな。こういうのが案外うまいこともある」

「そうかしら……」


 疑いの眼差してエミルは魚を見続けた。

 俺は釣りを再開する。


「わー、なんか釣れたよ!!」


 今度はシーラが魚を釣り上げたようだ。

 結構、大きめの魚だ。

 銀色の鱗で、尾鰭が美しい魚である。

 こいつは見たことがある。

 確かシルバーフィッシュという見た目通りの名前だったはず。

 観賞用の魚だ。食べたことはない。多分は味はまずいと思うが、食べて見るまでは分からない。


「このお魚さんも可愛いかも!」


 見た目は気に入ったようだ。

 シルバーフィッシュを桶に入れようと思ったが、同じ桶だと黒魚が食べてしまいかもしれない。

 鋭い牙だし、魚とかも食べてそうだ。

 念の為新しい桶を作成して、そこにシルバーフィッシュを入れた。


「全然当たりが来ないわね……」


 エミルは不満そうに呟く。

 彼女は最初に釣りをした時から、ビギナーズラックが結構続いていた。たまには全く釣れない日もあるだろう。


「餌変えてみようかしら」


 エミルは餌に使っていたエビを取り外す。

 その後、虫を取り付けた。

 釣り糸を垂らす。


「うーん……釣れないわね」


 虫に変えても釣れないようだった。


「ちっ……」


 リオンがイライラし始めていた。最初はすぐかかったが、それから全然魚がかからない。


「やはり魔法で……」

「やめろ。それは魚に負けを認めたってことになるぞ」


 魔法を使って湖を破壊でもしようとしていたので、俺はそう言った。こんな絶好の釣り場壊されたくはない。


「くっ……」


 苛立った表情を浮かべていたが、魔法を使うのはすんでのところで堪えた。

 やはりかなり負けず嫌いだな。

 リオンは明らかにイライラした様子ではあったが、絶対に釣ってやるぞと、やる気を出したていた。

 それから数分経過。

 俺の竿に当たりが来た。

 竿が大きくしなる。これは、結構大物かもしれない。

 手のひらに感覚を集中。

 逃すことなく、魚を釣り上げた。

 赤っぽい鱗の魚だった。

 パッと見え鯛に見える。この世界で見た目が鯛っぽい魚は初めて見た。味が鯛っぽ奴なら、結構いるけど。

 サイズはぱっと見60cmくらいだ。そこそこ大きい。

 大物というのはもうちょっと欲しいか。

 鯛に似ているので、美味しそうではある。味が鯛なのかは不明だ。そうだったらいいが。

 このサイズなので、調理しがいはありそうだな。


「なんか綺麗な魚ね。でも食べられるのかしら?」

「結構美味しそうじゃないか?」

「そう?」


 エミルはあまり美味しそうに見えていないようだ。

 鯛っぽい見た目の魚が少ない世界なので、美味しそうには見えないのかもしれない。

 それからしばらく経過。

 俺はもう一匹魚が釣れて、計3匹釣れた。釣れたのは最初に釣れた黒魚である。

 シーラは途中から飽きたのか、別のことをして遊んでいた。釣れたのは最初のシルバーフィッシュ一匹である。

 そして、


「どうして釣れないのよ〜!」


 エミルはまだ釣れていなかった。

 こういう日もある。釣りは楽しいだけじゃなく、釣れなくて悲しい思いをする日もある。

 そういう日があるから、釣れた時より楽しめるのだ。

 ちなみにリオンも釣れていなかった。


「……」


 もはや何も言わず無表情だったが、めちゃくちゃイライラしているのは伝わってきた。

 相当きてるなこれは。大丈夫だろうか。


「もういい。やめだ。やってられるか」


 そう言ってリオンは投げ出そうとする。

 すると、竿がしなり始めた。

 相当大物がかかっていそうだった。俺が釣った、鯛みたいな魚よりも確実に大物だろう。


「おい、引いてるぞ!」

「!!」


 引いていたので俺が指摘すると、リオンも気づく。

 少し緊張した面持ちになった。魔王となってリオンと再会してからは、初めて見る表情だった。一緒にパーティーを組んでいた時には、こういう表情もよく見ていたので、彼女がリオンであると改めて実感した。


「大丈夫だ。やれる」

「分かった」


 釣り方はきっちり教えたし、リオンは飲み込みは早い。やれるはずだ。

 俺は信じて見守った。

 リオンは竿を引き上げる。ベストなタイミングだったようで、魚が釣り上げることに成功した。

 釣れたのは大きなグレーの魚だった。2m50cmはありそうだ。かなりの大物である。


「おお!!」

「大物ね!」

「わー、すごい!!」


 俺とエミル、シーラが歓声を上げた。シーラはいつの間にか遊びをやめて、釣りを見守っていたようだった。

 初めて見る魚だな。最初に釣った魚とは逆で、かなり大きな目がついている。結構怖い見た目だ。

 美味しいかどうかは分からないが、見た目的に美味しそうには見える。


「つ、釣れた!」


 リオンは結構嬉しそうな表情でそう言った。可愛い表情だっただけに、ちょっとだけドキッとしてしまう。


「……ふ、ふん。この程度当然だ!」


 そのあと、顔を赤くして、そう言った。嬉しかったんだろうに、素直じゃない奴だな。

 魔王になって人間味を失ってしまったんじゃないかと思っていだが、割と根は変わっていないみたいだな。

 その後、釣りを続けたが、魚がいなくなったのか、それ以上は誰も釣ることができなかった。

 お腹も減ってきたので、魚釣りはやめて、食事をとることにした。


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