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【3月15日書籍発売】アラサー魔導士の辺境湖畔暮らし〜初級魔法で魔王を瞬殺してしまった俺は、無気力に引きこもりたい〜  作者: 未来人A
第五章 温泉旅行

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「さっきのは見なかったことにしてくれ」


 服を着て戻った後、俺はそう言った。


「お、お互いね」


 気まずそうな表情でエミルがそう言った。


「ふん、別にあんなの見ても、何とも思わんから安心しろ」


 リオンは腕を組みながらそう言った。

 あんなのってひどい言い方だ。何かは思ってほしいんだが。


「ところでシーラはどうなった?」

「さっきまで暴れてたけど、今は大人しく寝てるわね」

「そうか」


 シーラは近くの岩陰で気持ちよさそうに寝ていた。

 結局原因はなんだったのだろうか?


「このお湯のせいかもしれないわね。魔物が入ると逆に悪影響があったのかもしれないわ」

「なるほど……リオンも一応人間だしな」

「一応とはなんだ」


 リオンは睨んでくる。

 彼女は魔物化しているが、あくまで人間ではある。温泉の悪影響を受けなかったのはそのためだろう。


「ん……あ、おはよう~」


 シーラが目覚めた。


「あ、お兄ちゃんたちだ~、シーラ何してたんだっけ?」


 さっきまでのことをわすれているようである。


「あ~、なんお風呂ある! 入ってみよう!」

「だ、駄目よ!」

「やめろ!」


 再び温泉に入ろうとするシーラを、俺とエミルが慌てて止める。

 その後、入りたいというシーラは何とかなだめた。


「さて、温泉も入ったし、先に進むか」


 温泉に入っていないと思っていたシーラは少し不満げだったが、俺たちは先に進むことにした。


 下の階に降りて順調に進んでいく。

 魔物の数も下に降りるごとに増えていったが、雑魚がどれだけ増えても、特に変わらない。魔物たちを瞬殺しながら先に進んでいった。

 そして、29階。

 前情報だと次が最終階で、地底湖がありそうだ。

 次の階へ行く道を探していると、


「グオオオオオオオ!!」


 大きなうなり声が先から聞こえてきた。


「何の魔物かしか?」

「この声は……ドラゴンだな」


 リオンがそう言った。

 彼女はちょっと前まで魔界にいた。俺たちより魔物には詳しいだろう。

 ドラゴンは知能は低いが、持っている力はかなり強力である。

 高難易度ダンジョンの最奥地に辺りいるという話は、結構聞くことはある。もう29階だし、いても全然おかしくない。

 先に進むとリオンのいう通りドラゴンだった。

 巨大な体躯。二本の角。うろこの色は真っ黒だった。

 真っ青な瞳。額に真っ赤な宝石なようなものが埋め込まれている。


「エンペラードラゴン!?」


 エミルが目を見開いてそう言った。

 エンペラードラゴン。

 確か最強クラスの力を持ったドラゴンだったはずだ。

 出会ったことはないが、特徴は聞いたことはあるので、間違いない。こいつはエンペラードラゴンだ。

 持っている力はSランクの魔物を凌駕するともいわれている。

 流石に魔王級ではないだろうが、相当強いことは確かだ。


「こんなところで出会うとはな。ちょうどいい。魔界の時と同じく餌として食べてやろう」


 リオンがにやりと笑みを浮かべながらそう言った。

 魔界にいたときはドラゴン食べてたのか? なんかとんでもない生活送ってそうだな。

 リオンならエンペラードラゴンを倒せるだろうから、嘘とではなさそうだ。


「うわ~。おっきなトカゲさんだ~。こっちの世界にもいたんだね~」


 シーラはのんきにそう言った。

 彼女は魔物なので、魔界で見たことがあるのだろう。

 あまり怯えている様子はない。

 エンペラードラゴンだろうと、その辺のトカゲだろうと俺にとっては正直変わらない。

 瞬殺するか。

 そう思って魔法を使おうとすると、


「待って!」


 エミルがそう言って、止めてきた。


「なんだ?」

「ここは私に戦わせて。温泉で魔力が増えたと思うから、力を試してみたいの」


 真剣な表情でエミルは言った。

 エミルは最強になることが夢だったはずだ。力が上がったら試してみたくなるのも当然のことか。

 装備している雷轟剣≪らいごうけん≫を抜き、エンペラードラゴンの前に立った。

 ここは見守るか。

 エンペラードラゴンは強い魔物だし、エミルと言え楽には倒せないはずだ。

 危なくなったら助けてやろう。


「グオオオ!!」


 エンペラードラゴンが大きな口を開けて、エミルに突進した。

 鋭い牙で噛みつく。エミルは横にジャンプし回避した。


「はあああ!!」


 回避した後、剣を振りかぶってエンペラードラゴンに首元を攻撃した。

 首の鱗に辺り、がぎいいん!! という音が響き渡る。首を斬ることは出来なかったようだ。

 斬れなかったが、エミルは雷撃を放つ。

 強力な雷撃が、エンペラードラゴンの首元を襲う。


「ほう、確かに前に比べて威力が上がっているな」


 リオンが感心したようにそう言った。

 確かにぱっと見雷撃の規模が増えているような気がする。

 エンペラードラゴンが痺れたのか、動きを止めた。

 エミルはその隙に、エンペラードラゴンの舌に雷轟剣を突き刺す。

 そして、再び雷撃を放った。

 舌は鱗で覆われていない。強力な雷撃をもろにくらい、エンペラードラゴンはゆっくりと倒れた。

 倒したか?

 と思ったが、そう簡単な相手ではなかった。

 エンペラードラゴンはゆっくりと起き上がり、エミルを睨みつける。


「グオオオオオオオオオオオ!!!!」


 ひときわ大きな雄たけびを上げた。その後、翼をはためかせ飛び上がった。

 ダンジョンは地下にあるのだが、天井は意外と高い。20m近くあった。

 天井ギリギリまでエンペラードラゴンは飛び上がり、そこから黒い炎の球を吐き出した。

 次々に吐き出す。炎の球は地面に着弾し、爆発した。


「くっ!」


 エミルは爆風を喰らい、少しバランスを崩す。

 次々に炎の球が飛んでくる。何とか避けていくが、全弾を回避できず、少し喰らってしまう。


「くっ……」


 エミルは少し苦しそうに声を出した。

 直撃は避けたので、大ダメージは受けなかったようだが、少しダメージはあったようだ。

 空中に飛んでいたエンペラードラゴンが、エミルに向かって急下降する。

 鋭い爪を振り回して、攻撃してきた。

 エミルは回避はせず、剣で受け止めた。

 金属音が響き、火花が散る。

 エンペラードラゴンにもエミルは力負けせず、攻撃をしっかりと受け止めた。

 再び雷轟剣から、雷撃を迸らせる。


「グギャアアアアア!!」


 三度強力な雷撃を受けたエンペラードラゴンは、倒れ伏し、痺れて動けなくなった。

 ドラゴンは腹部がほかの部位に比べて鱗が薄い。

 エミルは移動して、雷轟剣で腹部を斬り裂いた。


「グガアアアアアアアアアアアァァァ!!」


 断末魔の悲鳴がダンジョン内に響いた。大量の血が噴き出し、エンペラードラゴンは倒れ伏して絶命した。


「ふう……やったわね」


 額に搔いていた汗をぬぐいながら、エミルはそう言った。

 エンペラードラゴンは確かに強い勝ったが、それを特に負傷することなくエミルは倒した。

 彼女は強い冒険者ではあるが、エンペラードラゴン相手だともっと苦戦していてもおかしくない。

 温泉の魔力増加は、思ったより大きかったのかもしれない。


「やっぱり強くなってる……ここにきて良かったわ!」


 エミルは嬉しそうな表情でそう言った。彼女も魔力アップを実感しているようである。

 ドラゴンの肉は食べることが可能だ。地底湖で魚を釣った後、食事をするつもりだし、一応食材として持って行っておこう。

 俺はエンペラードラゴンの死体を魔法を使って捌いた。

 エンペラードラゴンは巨大だが、美味しく食べられる部位は少ない。

 2kgぐらいの肉を取り出した。残りはダンジョンにいるほかの魔物か、生物が食べるだろう。

 俺たちは先に進み、30階に降りた。

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