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「はぁはぁ……来るんじゃなかった……」
ペトルダンジョン、十層目。
高ランク冒険者の男、アンドレ・ジョンソンはボロボロになりながら呟いた。
「泣き言言わないでくださいよ」
パーティーメンバーである、女冒険者、リット・パールはそう言った。
「今更言っても仕方ねぇーしな」
同じくパーティーメンバーの男冒険者、テレンス・ロードがそう言った。
アンドレは、3人でパーティーを組み、ペトルダンジョンに挑んでいた。
全員、冒険者ランクは二桁の実力者。
アンドレは四人の中で最高の冒険者ランク51位である。
リットは77位。テレンスは85位だ。
SSランクダンジョンを攻略するのなら、十分なメンバーではあった。
しかし、今回のペトルダンジョンの攻略は苦戦を強いられていた。
全員が体に怪我を負っている。
3人とも疲れた表情をしており、体力の消耗が激しそうだった。
(考えが甘かったな……まさか、ここまで魔物の数が多いとは……)
アンドレは反省する。
SSランクダンジョンの中でも、ペトルダンジョンは難易度が高い方だったようだ。
「お前ら怪我の具合はどうだ?」
「あまりよくないわね……」
「回復魔法を使うか?」
「ここで使っちまったら、戦闘用の魔力がなくなっちまうからな……回復魔法はかなり魔力を食う」
「しかし、この怪我で戦闘するのも困難よ……戦うのは最悪魔法なしでもできなくはないわ」
「そうだが……強敵相手だと勝てない」
「強い奴が来たらもう逃げるしかないな」
「うーむ……」
アンドレは悩む。
「分かった。回復魔法を使おう」
悩んだ末、そう決断した。
回復魔法を使用する。
3人の怪我はある程度回復した。
しかし、全快はしていない。回復魔法で完全回復させるには、かなりの魔力量が必要だ。
アンドレは高位の冒険者で魔力量も多いのだが、それでも完全回復させるには足りなかった。
完全回復はできなかったが、ある程度怪我を回復させたので、3人の顔色は良くなった。
疲労もだいぶ回復したようである。
「じゃあ、行くか。なんとか脱出するぞ」
アンドレの言葉にパーティーメンバーの二人は頷いた。
今更先を目指す気は3人ともなかった。
一度出て、パーティーメンバーを増やして再挑戦するつもりだった。
「ここ出たら、二人誘ってリベンジしようぜ」
「そうね」
「ああ」
アンドレの言葉に二人は頷いた。
気を取り直して、ダンジョンを出るため歩き始める。
その時、
「グルルルル」
低い唸り声が、後ろから聞こえてきた。
アンドレたちは慌てて振り向く。
瞬時に戦闘体制をとった。
接近してきた者の姿を確認する。
鋭い牙。岩のような皮膚。
四足歩行で尻尾がある。尻尾の先端は鋭く尖っている。
「ストーンタイガー……!」
アンドレは目を見開いてそう言った。
ストーンタイガーは魔物ではない。この世界に元からいる生物である。
岩のように硬い皮膚と、鋭い牙が特徴的だ。
見た目は重そうだが、動きもかなり早い。
高難易度ダンジョンに生息していることが多い。
なぜダンジョンに生息しているかと言うと、魔物が大好物だからだ。特にCランクの魔物が大好きで、よく狩って食べている。
Cランクの魔物を狩って食べていると言うことは、ストーンタイガー自体が凄まじく強いということでもある。
繁殖力はあまり高くなく、ダンジョンに大勢いることはない。
出会う可能性もあまり高くはない。
ただ、とにかく強いので、出会ったら最後と言われている。超強力な生物だった。
「こ、こんな時に……」
「ど、どうする?」
高位の冒険者が3人いるが、真正面から戦って勝てるような相手ではなかった。
逃走したいところではあるが、ストーンタイガーは機動力に優れている。
背を向けて逃げるのは逆に危険であった。
高威力の魔法を一撃打てば、逃げていく可能性もあった。ただ、先ほど回復魔法を使ったので、もう魔法は使えない。
どうしようか悩んでいる間に、ストーンタイガーが襲ってきた。
鋭い爪で切り掛かってくる。
「くっ!!」
アンドレは剣で受け止めた。彼は魔法も使えるが、近接戦闘も得意な、万能タイプの冒険者だった。
他二人は魔法はあまり得意ではないが、リットは弓、テレンスは大剣の扱いに長けていた。
リットが弓を放ち、ストーンタイガーの目を狙う。
高速の矢だったが、ストーンタイガーは見切り、軽く避ける。額に当たる。
目は硬くないようだが、額は硬い。矢は刺さらず軽く弾かれた。
テレンスが大剣を振りかぶり、ストーンタイガーの首を狙って切り掛かる。
ガッという大きい音が響いた。剣はストーンタイガーの首を切り裂けず、逆にテレンスの剣がポッキリと折れてしまった。
「お、俺の剣が!?」
あまりの出来事に呆然とするテレンス。
その後、ストーンタイガーが尻尾を振る。
狙いはリット。弓使いである彼女は、弓の腕は確かだが、防御力はあまり高くない。
ストーンタイガーの攻撃を喰らえば、ひとたまりもないだろう。
「はああ!!」
アンドレが即座に動いて、リットを庇うように立つ。
ストーンタイガーの尻尾を剣で受け止めようとするが、尻尾の攻撃は強力だった。
剣はへし折られ、その後、胸元に尻尾が直撃する。
質の良い胸当てをしていたため、胸を切られるということはなかったが、それでも強い衝撃が発生し、アンドレは数メートル吹き飛ばされてしまう。
「ぐあぁあああ!!」
「アンドレ!!」
地面に強く打ち付けられ、アンドレはぐったりする。
体が動かない。
「グルル……」
ストーンタイガーがアンドレに近づいてくる。
体を起こそうとするが、力が入らない。
(ちくしょう……ここまでなのか?)
もはやうつてはなかった。
アンドレはストーンタイガーの顔を見る。
「があああああああ!!」
大きな唸り声をあげて、ストーンタイガーが飛びかかってきた。
死んだ。
そう思った時。
「魔弾」
そう声が聞こえきた。




