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【3月15日書籍発売】アラサー魔導士の辺境湖畔暮らし〜初級魔法で魔王を瞬殺してしまった俺は、無気力に引きこもりたい〜  作者: 未来人A
第五章 温泉旅行

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「はぁはぁ……来るんじゃなかった……」


 ペトルダンジョン、十層目。

 高ランク冒険者の男、アンドレ・ジョンソンはボロボロになりながら呟いた。


「泣き言言わないでくださいよ」


 パーティーメンバーである、女冒険者、リット・パールはそう言った。


「今更言っても仕方ねぇーしな」


 同じくパーティーメンバーの男冒険者、テレンス・ロードがそう言った。

 アンドレは、3人でパーティーを組み、ペトルダンジョンに挑んでいた。

 全員、冒険者ランクは二桁の実力者。

 アンドレは四人の中で最高の冒険者ランク51位である。

 リットは77位。テレンスは85位だ。


 SSランクダンジョンを攻略するのなら、十分なメンバーではあった。

 しかし、今回のペトルダンジョンの攻略は苦戦を強いられていた。

 全員が体に怪我を負っている。

 3人とも疲れた表情をしており、体力の消耗が激しそうだった。


(考えが甘かったな……まさか、ここまで魔物の数が多いとは……)


 アンドレは反省する。

 SSランクダンジョンの中でも、ペトルダンジョンは難易度が高い方だったようだ。


「お前ら怪我の具合はどうだ?」

「あまりよくないわね……」

「回復魔法を使うか?」

「ここで使っちまったら、戦闘用の魔力がなくなっちまうからな……回復魔法はかなり魔力を食う」

「しかし、この怪我で戦闘するのも困難よ……戦うのは最悪魔法なしでもできなくはないわ」

「そうだが……強敵相手だと勝てない」

「強い奴が来たらもう逃げるしかないな」

「うーむ……」


 アンドレは悩む。


「分かった。回復魔法を使おう」


 悩んだ末、そう決断した。

 回復魔法を使用する。

 3人の怪我はある程度回復した。

 しかし、全快はしていない。回復魔法で完全回復させるには、かなりの魔力量が必要だ。

 アンドレは高位の冒険者で魔力量も多いのだが、それでも完全回復させるには足りなかった。

 完全回復はできなかったが、ある程度怪我を回復させたので、3人の顔色は良くなった。

 疲労もだいぶ回復したようである。


「じゃあ、行くか。なんとか脱出するぞ」


 アンドレの言葉にパーティーメンバーの二人は頷いた。

 今更先を目指す気は3人ともなかった。

 一度出て、パーティーメンバーを増やして再挑戦するつもりだった。


「ここ出たら、二人誘ってリベンジしようぜ」

「そうね」

「ああ」


 アンドレの言葉に二人は頷いた。

 気を取り直して、ダンジョンを出るため歩き始める。

 その時、


「グルルルル」


 低い唸り声が、後ろから聞こえてきた。

 アンドレたちは慌てて振り向く。

 瞬時に戦闘体制をとった。

 接近してきた者の姿を確認する。

 鋭い牙。岩のような皮膚。

 四足歩行で尻尾がある。尻尾の先端は鋭く尖っている。


「ストーンタイガー……!」


 アンドレは目を見開いてそう言った。

 ストーンタイガーは魔物ではない。この世界に元からいる生物である。

 岩のように硬い皮膚と、鋭い牙が特徴的だ。

 見た目は重そうだが、動きもかなり早い。

 高難易度ダンジョンに生息していることが多い。

 なぜダンジョンに生息しているかと言うと、魔物が大好物だからだ。特にCランクの魔物が大好きで、よく狩って食べている。

 Cランクの魔物を狩って食べていると言うことは、ストーンタイガー自体が凄まじく強いということでもある。

 繁殖力はあまり高くなく、ダンジョンに大勢いることはない。

 出会う可能性もあまり高くはない。

 ただ、とにかく強いので、出会ったら最後と言われている。超強力な生物だった。


「こ、こんな時に……」

「ど、どうする?」


 高位の冒険者が3人いるが、真正面から戦って勝てるような相手ではなかった。

 逃走したいところではあるが、ストーンタイガーは機動力に優れている。

 背を向けて逃げるのは逆に危険であった。

 高威力の魔法を一撃打てば、逃げていく可能性もあった。ただ、先ほど回復魔法を使ったので、もう魔法は使えない。

 どうしようか悩んでいる間に、ストーンタイガーが襲ってきた。

 鋭い爪で切り掛かってくる。


「くっ!!」


 アンドレは剣で受け止めた。彼は魔法も使えるが、近接戦闘も得意な、万能タイプの冒険者だった。

 他二人は魔法はあまり得意ではないが、リットは弓、テレンスは大剣の扱いに長けていた。

 リットが弓を放ち、ストーンタイガーの目を狙う。

 高速の矢だったが、ストーンタイガーは見切り、軽く避ける。額に当たる。

 目は硬くないようだが、額は硬い。矢は刺さらず軽く弾かれた。

 テレンスが大剣を振りかぶり、ストーンタイガーの首を狙って切り掛かる。

 ガッという大きい音が響いた。剣はストーンタイガーの首を切り裂けず、逆にテレンスの剣がポッキリと折れてしまった。


「お、俺の剣が!?」


 あまりの出来事に呆然とするテレンス。

 その後、ストーンタイガーが尻尾を振る。

 狙いはリット。弓使いである彼女は、弓の腕は確かだが、防御力はあまり高くない。

 ストーンタイガーの攻撃を喰らえば、ひとたまりもないだろう。


「はああ!!」


 アンドレが即座に動いて、リットを庇うように立つ。

 ストーンタイガーの尻尾を剣で受け止めようとするが、尻尾の攻撃は強力だった。

 剣はへし折られ、その後、胸元に尻尾が直撃する。

 質の良い胸当てをしていたため、胸を切られるということはなかったが、それでも強い衝撃が発生し、アンドレは数メートル吹き飛ばされてしまう。


「ぐあぁあああ!!」

「アンドレ!!」


 地面に強く打ち付けられ、アンドレはぐったりする。

 体が動かない。


「グルル……」


 ストーンタイガーがアンドレに近づいてくる。

 体を起こそうとするが、力が入らない。


(ちくしょう……ここまでなのか?)


 もはやうつてはなかった。

 アンドレはストーンタイガーの顔を見る。


「があああああああ!!」


 大きな唸り声をあげて、ストーンタイガーが飛びかかってきた。

 死んだ。

 そう思った時。


「魔弾(バレット)」


 そう声が聞こえきた。

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