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早朝。
俺は目覚めて、軽くあくびをした。
窓から光が差し込んで来ている。天気は快晴だ。
腹が減ったな。
早速飯にするか。
俺は食料庫に向かい、現在の食料を確認する。
貝があるな。
この世界にも貝がある。これは湖で採れたルトン貝だ。見た目はアサリっぽい。実の色は真っ白である。味はアサリとほぼ同じだ。
寄生虫などの心配はなく、ゆでれば普通に食べられる。
まあ、俺は仮に寄生虫がいても、問題なく食べられるのだが、気持ち悪いのであまり食べたくはない。
貝のスープを作って食べるか。
野菜と一緒に煮込もう。
貝と野菜を取り出して、解凍する。
野菜を魔法で程よい大きさに切る。
貝はそのまま入れる。
最初にニンニクをオリーブオイルで炒めた。その後、野菜を入れて、これも軽く炒める。
その後、水、ハーブ、そしてルトン貝を入れる。
そのままじっくり煮込んでいく。
10分ほど煮込んで完成した。
いい色のスープだ。匂いもいい。結構美味しそうだ。
「お、おはようー」
いきなり声が聞こえてきた。
振り返ると、エミルがいた。
どうやら、スープの匂いを嗅いできたようである。
「な、何を作ってるの?」
「朝飯だ」
「へ、へー」
めちゃくちゃ食べたそうだ。
「食べるか?」
「え、いいの!?」
「あ、でも一人分しかない」
「え、そ、そうなんだ……じゃ、じゃあいいわ」
目に見えてエミルは落ち込む。
「嘘だ。結構たくさんあるから食べていいぞ」
あまりにも食べたそうにしていたので、ちょっと意地悪をしてしまった。
明日も食べられるように、結構多めに作ったので、エミルの分くらいはある。
「え? そ、そうなの? 紛らわしいわね!」
エミルはちょっと怒りながらも、料理が食べれるという事実が嬉しいのか、笑みを隠せていなかった。
「おはよう〜」
シーラが家に入ってきた。相変わらず元気良さそうである。
「これ何〜?」
「スープだ。食べるか?」
「うん!」
元気よさそうにシーラは言った。
魔物はご飯を食べなくても生きてはいける。ただ、人間界にきた魔物は、何かを食べていることが多い。味覚はあるのだろうな。
スープをお椀に装う。三皿分入れた。まだまだ残っている。作りすぎたかもしれない。
さらにパンを焼く。その後、バターを塗った。
「早く食べるとするか」
突如声が聞こえてきた。
なぜかリオンが部屋の中にいて、まるで自分の部屋のように椅子に座っていた。
残っていたスープを勝手に注いで、さらに自分でパンも焼いて準備万端という様子である。
「そこで何をしている」
「もちろん貴様の監視だ」
「俺の目に人が作った飯を勝手に食おうとしているように見えるんだが?」
「監視対象がどんな料理を作っているか、調査する必要がある」
「ないだろ」
「ある」
リオンはそう言いながら、めちゃくちゃ食べたそうな目でスープを眺めていた。
絶対こいつ料理が食べたいだけだ。
そんな食い意地張った奴だったけ……
いや……
確か昔も結構いっぱい食べていたような。かなり食いっぷりがよかった気がする。
魔王となった今でも、食欲は変わっていなくても不思議ではない。
まあスープは残っていて困っていたし、別にあげてもいいか。
「……嫌なら強引に止めれば良い」
リオンはそう言ってきた。
別に嫌というわけではない。
まあ、余っているし、分けてやってもいいか。
「分かった。食べていいぞ」
リオンは何も言わなかったが、どこか嬉しそうな表情を浮かべた。
「そ、そいつも一緒に食べるの?」
エミルが明らかにいやそうな表情を浮かべる。
この二人はあまり仲良くはない。
シーラも最初は怖がっていたが、普通に接するようになっている。
「嫌だというなら、力尽くで追い出すんだな」
「なっ……」
エミルは立ち上がる。
「上等じゃない」
「やめろ。喧嘩するな」
俺はすかさず止めに入る。
「別に一緒に食べるくらい良いだろ? それに喧嘩しても絶対に勝てないぞ」
「むう……」
エミルは渋々納得し、椅子に座った。
「じゃあ食べるか」
喧嘩を止めた後、全員席につき、食べ始めた。
「美味しい〜」
シーラは無邪気にそう言った。
喜んでくれているようで何よりだった。
「あ、相変わらず美味しいわね」
エミルはどんどんスープを飲む。この勢いだと、すぐに完食しそうだな。
「おかわり」
そう言いながら、リオンはお椀を置いた。お椀の中は空っぽだった。
「もう食べたのか!?」
「別に普通だろう」
いや、5秒くらいだったが。もっと味わって食えよ。
「早くおかわり」
「もうねぇよ」
「作ってくれ」
「嫌だ。材料もないし、食いたいなら自分で作れ」
俺がそういうと、リオンは少しだけがっかりしたような様子になった。
どんだけ食べたいんだ。
それだけ俺の料理を美味しいと思ってくれたということなら嬉しくはあるが。
「皆さん! 朝ごはんですか!? 私も食べたいです!!」
そう言って、リオンの部下であるライラが入ってきた。
残念ながらスープは4人分しかなかった。
彼女の食べる分はない。
「済まない。もうないんだ」
「がーん!」
ライラはショップで膝をついていた。
「貴様の分は私が作ってやろう」
「え!? 良いんですか!?」
リオンがそう言った。
作ってやるのか。案外魔王としては良いやつなのかもしれない。
「素材を借りるぞ」
冷蔵庫から肉や野菜をリオンは取り出す。
その後、何らかの魔法を唱えた。聞いたことのない魔法である。
真っ黒い液体が、鍋の中に注がれた。
その中に野菜などを入れていく。
い、いったい何を作ってるんだ?
俺は疑問に思ったが、聞けずに調理を見ていた。
火をつけて煮込んでいく。
嗅いだことのない独特なにおいが、部屋に立ち込めてきた。
臭くはないが……食欲が沸くような匂いではない。
「う……な、なに作ってるのあいつ……」
エミルは気分悪そうに呟いた。
「わー、美味しそう~」
逆にシーラは目を輝かせていた。
もしかすると、魔界では人気の料理とかか?
「な、なんでしょうかあれは……ま、魔王様の作るものだからきっとおいしいはず……」
ライラを見ると、不安そうな表情でつぶやいていた。
魔界独自の食べ物というわけではなさそうだな。
しばらく見守ると、料理が完成した。
ライラの前に出される。
「さあ、食べろ」
「は、はい~」
リオンの圧力に負けて、ライラは料理を食べ始める。
「!?!?」
ライラは目を見開く。
「な、なんか美味しい気がします! します!!」
そう良いながら、一心不乱に食べ始める。
なんだか食べ始めてから目つきが怪しい。
明らかに正気じゃない目というか……本当に美味しいのか?
ライラはその後も一心不乱に食べ続け、完食した。
「ありがとうございます! 魔王様の料理美味しかったです」
「そうか。当然だな」
「早速魔王様のために働いてきます! うおおおおおお!!」
そう言いながら、ライラは外に出て行った。
「何を食わせたんだ?」
「精力剤みたいなものだ」
「はぁ……」
確かにやる気がみなぎっていたが、みなぎりすぎじゃないか?
「美味しいって言ってたわね……どんな味なのかしら……」
エミルが気にしていた。さっきのを見て、味が気になるとはかなり食い意地が張ってるな。
「人間が食べるとどうなるか分からんから、やめておいた方がいい」
リオンがそう言った。魔物用の食べ物なのか。でも、ライラも初めて見たという様子だったけどな。
「まあ、ライズなら何も起こらないから食べられるだろうがな」
「俺は食べんぞ」
「そうか」
リオンは少しだけ残念そうな様子でそう言った。
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