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「は、はあ? 魔界送り?」
全く身に覚えがないことだった。
「魔界には自分で行ったんじゃないのか?」
「好き好んで魔界に行く奴がいるか!!」
激怒した様子でリオンが叫んだ。
「魔王ベルゼブブを倒した後、私たちは別々の道を歩んだ……私は勇者と呼ばれていたが、お前の力には遠く及ばないことは自覚していた。厳しい修行をしながら勇者の称号に相応しくなれるよう頑張っていた。そんなある日のことだ。貴様から手紙が届いた」
「手紙?」
そんなものを送った覚えはない。
「もう一度会って手合わせをしたという手紙だ。私はお前を目標に修行をしていた。勝てるとは思っていないが、どのくらい近づけたのか確認したかった私は喜んで会うと返答した。騙されているとも知らずにな」
言葉を発する度に、リオンの怒りはどんどん深くなっていった。
「指定された待ち合わせ場所に行ったら、貴様はいなかった。代わりに罠が仕掛けてあった。魔界行きのゲートが開き、私は魔界に落とされてしまった。そこから人間界に行く方法も分からなかった。貴様を殺すことだけを考え、魔物どもを喰らっていった。ゲートの開きからは早い段階で知ったが、その段階で戻っても勝ち目はない。貴様を殺せるくらいの力を蓄え、ゲートを開いた……それを……」
リオンは心の底から悔しそうな表情を浮かべた。
はっきり言って身に覚えはない。
そもそも魔界へのゲートの開き方も知らないので、出来ないのだ。
「はっきり言っておくが、全部濡れ衣だ。俺はそんなことしていない」
「嘘だ!」
「嘘じゃない。手紙を貰ったと言ったが、それが俺が書いたものだとはどうやって判断したんだ」
「それは筆跡だ! 貴様の筆跡を私が見間違いるわけがない」
「な、なんでそんなこと言いきれんだよ! お前、俺の書いた文字知ってんのかよ」
「もちろんだ。貴様が魔術の勉強をしている時、文字を書いているのは見ていた。また、毎日日記を付けていたようだが、それも読んでいたからな」
「……なんで俺の日記をお前が読んでいるんだ?」
「え……そ、それは今はどうでもいいことだ! 話を逸らすな!!」
リオンは動揺した様子でそういった。
いや、どうでも良くないだろ。何で人の日記を勝手に読んでるんだ。読んでいいとか言った記憶は一度もないぞ。
「と、とにかく! 筆跡は間違いないく貴様のものだった! それは断言する!」
「仮にそうだとしても、筆跡なんて真似できるだろ。罠にかかった場所で直接を俺を見たりはしたのか?」
「見ていない」
「じゃあ、別人の可能性だってあるだろ」
「ふん、あくまでもシラを切るつもりか」
どうもリオンの中で俺が犯人という確信があるようだ。
「私が罠にかかった時、動きを拘束されそれから魔界へのゲートが開き、魔界送りにされた。私を拘束する罠には強い魔力が込められており、身動きが全く取れなくなった。魔界へのゲートを開くにも恐らく大量の魔力がいるだろう。それだけの魔力を持つものなど、貴様以外にいない」
「確かに大量の魔力が必要にはなりそうだが、俺以外に用意不可能というのは暴論だろ! 複数人でお前を嵌めた可能性だってあるはずだ」
「誰がそんなことをするというのだ!」
「知らないけど、とにかく俺はやってない!」
「信じられるか! 私は貴様を殺すために魔界で力を貯めてきたんだぞ!!」
かなり感情的になっているようだな。
言葉で説得しても納得はしなさそうだ。
「納得できないだろうが、俺はやってないと言うしかない」
「ちっ……」
恨みを込めた表情をリオンは浮かべた。
「くそぉ!!」
リオンは渾身の力で俺を殴ってきた。
その手を片手で受け止める。
「ぐ……」
力を使い果たしたのか、リオンは魔物のような姿から元の姿に戻った。
膝をつき息を切らしている。
もう戦いは継続できなさそうだ。
「俺の勝ちだな」
リオンは力を使い果たしてなお、殺意を込めた目つきで俺を睨んでくる。
「そんなに俺が嵌めたということにしたいのか?」
「……もう何が正しいか分からん」
かなり混乱している様子でそう言った。
どうやら少し頭が冷えて、俺が犯人であると確信できなくなったようだ。
「分かったのは、貴様には今の私では勝つことができないということだ。そして、もしかすると、貴様が私を嵌めた犯人ではない可能性もゼロではないということ」
ゆっくりと起き上がりながらリオンはそう言った。
「だが、一番怪しいのは間違いない! しばらく貴様を見張りつつ、ほかの犯人がいないかを部下の魔物どもに探させる!」
「な、なんでそうなる!?」
とんでもないことを言い出した。
「嫌なら今すぐ私の首を刎ねるがいい!」
「で、出来るか!」
「ならばしばらく貴様の近くに住み監視させてもらおう」
とんでもないことを言い出したが、殺せとまで言われたら断り切れない。
まあ、昔の仲間に恨まれ続けるというのもあまり気持ちのいいものではないし……仕方ないから許可するか。ゆっくり誤解を解いていこう。
「分かった。ただ、魔力は隠しておけよ」
「それは言われなくてもそのつもりだ。冒険者どもが集まってくると、色々面倒だからな」
こうしてリオンが湖に住むことになった。
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