第64話 私の気持ち
センパイとは、最後には笑顔で別れた。たぶん、これで後戻りはできなくなる。ルビコン川を渡ったカエサルの気持ちがよくわかるわ。
「賽は投げられた」
私はつぶやくように英雄の言葉を胸にする。
もう後には戻ることはできない。この後は、自分の全力を尽くすだけ。
そう必死に言い聞かせた。
もう、これで私は優しいだけの幼馴染でいることはできなくなった。センパイをクリエイターの道に戻す。それに挑戦しようとした瞬間、私たちは両想いの幼馴染という関係に収まらなくなってしまった。
私とセンパイは、たぶん時には戦うことになる。お互いに創作者だから……そうしなければ、最高のものを作ることなんてできない。
たとえ、センパイと今の関係に戻れなくなってしまっても、私は前に進みたい。そうしなければ、きっと私たちはダメになる。ずっと居心地の良い関係にひたっていることは、楽しいけど、たぶん、もう二度と前に進めなくなる。
そして、センパイの才能を腐らせてしまう。
大好きな人が、そんな風になってしまうのは、悲しくて見ていられない。
こんなことを言えば、傲慢かもしれない。でも、センパイに対しては、傲慢でもいいから、一緒に前に進みたい。それが私たちの幸せにつながると思っているから。
「絶対にこっちに振り向かせてあげるよ、センパイ」
私は、後ろの公園で立っているはずの彼に向かって、私は小さくつぶやく。
クリスマスイベントの準備に全力を尽くす。
今回は、イベントの演出をすべて任せてもらっている。持ち時間は20分と短いけど、だからこそ私の力が一番わかりやすく反映されるはず。
もう逃げることなんて許されない。
彼に守られてばかりの自分は、もう終わりにする。




