第63話 しずかの真意
俺が、しずかの家に行くと、彼女はすべてを察したかのように笑って、俺を散歩に誘った。
「家の中じゃ冷静に話せないから、少しだけ冷たい空気を吸いたいの」と微笑するしずかは、覚悟を固めていた。
俺たちはいつもの公園に向かう。たしかに、話すならここが一番だと思った。
「社長からお話は聞いたよね?」
「ああ、全部な」
「実は、センパイにお仕事を頼みたいっていう提案は、私が発端なんだ。マネージャーさんに、無理を言って頼み込んで、社長まで許可をもらったの。あなたとコラボさせて欲しいって」
「でも、俺はずっと活動からは、離れちゃってるし」
「うん。でもね、間違いなく、皆があなたの復活を望んでいると思う。私とコラボすれば、あなたの復活はさらに注目を浴びる。天才の復活の場に、ふさわしい舞台になると思うわ」
「俺の才能が枯渇していたら?」
「その時は、私の見る目がなかっただけ。ただの、ミスだよ」
「……俺のアンチがみすずに迷惑をかけるかもしれない」
「たしかに、アンチは怖いよ。でもね、センパイ。アンチの後ろには、私たちを応援してくれているたくさんのファンがいるんだよ。たしかに、アンチは目立つけど、私たちを純粋に好きって言ってくれる人はもっとたくさんいる」
ブランコは、ゆっくりと動き始めた。
「それに、私は先輩とずっと同じ方向を向いて生きていきたいんだ。あなたは、WSは、すい星のように登場した私たち同世代のスターだったんだ。みんな、あなたに憧れていた。才能を信じていた。だから……」
今度は懇願するように彼女は続ける。
「もう一度、こっちの世界に戻ってきて。勝手なことを言っているのはわかっている。でもね、この気持ちだけは嘘だと思えない」
「しずか……」
「だから、私はクリエイターとして、同世代の天才・WSさんに勝負を挑む。私の全力があなたの心に届かなかったら、私は負けを認める。でも、届いたら私の勝ち。ひとつだけ言うことを聞いて?」
クリエイターの勝負に明白な勝ち負けなんて基準はない。ただ、自分が負けたと思ったら負けなんだ。かなり分が悪い勝負をしていると思うぞ、しずか。
「わかった」
「よかった。その言葉を聞いただけでも、Vチューバ―になってよかったと本気で思うよ。私は先輩を振り向かせてみせる。そして、同じ夢を一緒に見る。覚悟してね、大好きだよ、センパイっ!」




