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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!3月30日二巻発売!】  作者: 徒然ナルモ
二十二章 アド・アストラVSマレウス・マレフィカルム
905/932

834.魔女の弟子と最強と呼ばれる者達

「全く勘弁してほしいな」


皮のグローブをつけ直し、靴に踵を入れ、紅刃を構え……息を整える。


「ブラッドパイセン!どうするんすか!」


「どうもこうもないでしょうが」


隣で喚くピンク頭、食神ペティ。自認可愛い後輩が青い顔をして見遣る先には、フォルミカリウスの多重強化外壁を突き破り侵入してきた怪物。


「全員!覚悟するように!!」


孤独の魔女の弟子エリス、最近じゃあ破滅の流星なんて呼ばれ方もしている魔女大国側の随一の怪物だ。既に流星旅装を展開しており、魔力を嵐のように滾らせている。


侵入されたのだ、迎撃の暇もなく外壁を突破された。そしてこの部屋に入ってきた、狙いは決まっている。ここには十天魔神が六人……つまりほぼ全員が揃っている事から、俺達を潰しに来たのだ。


最悪、敵軍は目の前まで来ているのに魔神が動けないどころか全滅の憂き目に遭う可能性があるなんて。


(正直、第三神以下は戦力になりそうにない)


今ここにはペティ、デスペラード、俺、バフォメット、バティスタ、ジョバンニがいる。そして第三段階に入っているのはバティスタとジョバンニのみ。勿論全員魔力波覚醒してるが……。


アイツの強さはもうそういう次元にいない。マジでクレプシドラ級……つまりセフィラを除けばマレフィカルムにて勝てるのはイノケンティウス様のみと言われる段階に立っている。

十天魔神総がかりでもどこまでいけるか。


(けど負けるわけにはいかんのよな……)


紅の刀を構える、構えるしかない。無抵抗でもどうせやられるなら、せめて抵抗してやられてやる。


「私とバティスタが前に出る!バフォメット!他の者の指揮を!」


「うむ!分かったぞ!」


『第五魔神』バフォメットは灰色の髪を振り回して杖を構える、同時にバティスタとジョバンニが前へ。同時にエリスが動く、軽くその場で数回ジャンプをして肩を回し準備運動に入る。


来る、歴戦の魔神達が全員揃ってそう感じた。その時だった。


「壊滅です」


一言、その一言が宣言となりエリスの行動は始まった。背中を覆う程の巨大な魔力噴射が竜巻のように吹き荒れエリスに速度を与え。


(ッて!バカ早え!)


まるで蜘蛛の巣が張ったように、一瞬で形成されるのはエリスの残す光芒の嵐。奴の姿は消え、俺達の間をすり抜けるように飛翔。壁を蹴って何度も何度も乱反射を繰り返し捉えることの出来ない速度で飛び回る。


(セフィラをこれを相手に互角に戦ってたのかよ、あんま偉そうな口利けないな……!)


動けない、下手に動くとエリスの射線上に入ってしまいそうで怖い。そう、分からないのだ、エリスが今どこにいるか。どこから攻撃が来るのか分からない以上攻撃どころか移動も出来ない。


まず、足を止めないと─────。


「魔力覚醒!!『龍王転生』!!!」


ドスンと音を立てて突如変身したのはバティスタだ、一気に巨大な龍に変身し空間を制圧しエリスの動きを止めようと───。


「邪魔ッ!」


「ガッ!?」


否、止まらない。バディスタの尻尾に、翼に、次々と穴が開く、エリスが貫通して飛んでいるのだ。その上で腹に蹴りを加えあの巨大なドラゴンを吹き飛ばし壁に叩きつけた。容赦なさすぎだろ……。


「エリスッッ!」


「来ますか!ジョバンニ!」


しかしその隙を突きジョバンニが迫る、地面を滑るような走法で一気に肉薄し無数の拳をエリスに振るうが、まるでエリスは未来が見えているかのようにジョバンニの拳を次々と弾き返していく。


「一度見た動きは効きませんよ!」


「無法極まる……!」


「無法者に言われたくないです!!」


ジョバンニの旗色は悪い、エリスの動きはそもそも他とは隔絶したレベルで速く、なにより一度ジョバンニと戦った経験から攻撃を予測し切っており生半可な攻撃じゃ通じない。

あのままジョバンニに任せたら、やばいか。


(仕方ない、どの道ここで負けたら死して骸に一直線。なら命賭けるしかないか)


その瞬間俺は地面に紅刃を押し当て、一気に魔力を解き放ち。


「魔力覚醒『絳赭紅朱こうしゃこうしゅ赫赤緋彤かくせきひとう』……どこまで通じるかは分からないが、試さないで終われるか!」


一気に刃を振るえば俺の周囲が、俺の服が、髪が、紅蓮に染まり光り輝く。そして同時に踏み込み一瞬でエリスに迫り。


「『レッドドライブ』!!」


「おっと!!」


振り下ろせば、放たれる赤の光。それは斬撃となって飛翔し咄嗟にエリスに身を引かせることに成功する。


「赤……ルビカンテみたいな攻撃ですか!?」


「さぁどうだろうな!受けてみるか!!」


赤く染まった俺はエリスに迫りながら刃を振るう、俺の覚醒の性質上……その効果は看破され難い、故にその間にジョバンニとバティスタが体勢を立て直して……。


「分かりました、受けてみます」


「は?」


ビッと音を立ててエリスは俺の斬撃を指で受け止め、人差し指と親指で刀身を挟む。同時に放たれた赤がエリスの手に付着する。

嘘だろこいつ、どんな覚醒かも分からないのに受け止める選択肢が出てくるかよ普通。


「マジか」


「もし、行動束縛系ならエリスが高速移動を始めたタイミングで使っている。もし、一撃必殺型なら、こんなタイミングでは使わない……そして身体能力もあまり強化されてませんし」


「…………」


「恐らく、概念抽出。そしてその効果は……熱ですね?」


咄嗟に身を引くと同時に、エリスの手に付着した赤が炎を発する。俺の魔力覚醒『絳赭紅朱こうしゃこうしゅ赫赤緋彤かくせきひとう』は赤を飛ばし、付着した赤の色の温度は自在に操れると言う物。限界まで高めれば鉄すら溶かす……熱の概念を操る覚醒。


そこを一瞬で看破された、なんで分かるかね。と言うかアイツ、なんで腕が燃えてるのに普通の顔してられるんだ!?


「あなたみたいなタイプの使い手と戦ったことがあります。でそう言うタイプは決まって、肉体に付着しなければ意味がない。


ブンとエリスが一度腕を払えば、俺のつけた赤が霧散する。防壁だ、非常に薄い防壁を手袋代わりに装着し、それで赤の付着を防いでいたんだ。

通りで、豪胆に受け止めるわけだ……!


「厄介ですね、お前を倒します」


その宣言から、エリスが動くまでにはほぼ間がなかった。一瞬で飛んできた拳が俺の顔面を打ち抜き、遥か彼方にあったはずの壁を粉砕し貫通して体が更に飛ぶ。痛みが表出化するよりも前に。


「はいっ!どうぞっ!!」


「ゴッ!!?!?」


一撃、即座に俺の目の前に現れたエリスの蹴りが地面を転がる俺を捕まえ、砕く、床を。瓦解する足場、黒鉄の地面が破砕され俺の体は地面を超えて更に下層へ。

やばい、手がつけられねぇ……!


「『ダイヤモンド・ドラゴン』!!」


「むッ!」


瞬間、落ちていく俺を追いかけるエリス、そこに煌めく一撃が叩き込まれる。全身をダイヤモンドで固めた龍人が襲いかかったのだ。バティスタだ、助かった……!


「邪魔しないでください!!」


「ウルセェ、よくもデモンズをやりやがったな!!」


「そう言うあなた達はよくもホリンさんとラクレスさんをッッ!!」


既にエリスの標的は俺ではない、下層に落ちた俺は空を見上げ、殴り合うエリスとバティスタを見遣る。全身をダイヤモンドで覆うバティスタ、そして星の煌めきを纏うエリスの殴打戦は凄まじく、余波だけで城が壊れていく。


「『流星火雷掌』ッ!」


「効かないねぇ!!防御特化のダイヤモンド・ドラゴンだ!テメェのへっぽこパンチなんざ痛くも痒くもねぇよ!!」


エリスの攻撃すら無効化するバティスタの防御力。それもそのはず、なんせあれはダイヤモンド以上の防御力を持っているのだ。


バティスタの魔力覚醒『龍王転生』はまさしくバティスタのためにあるような覚醒だ。その効果はバティスタの思い込みを力に変える覚醒。

バティスタが『これはこう言うもの』と思い込んだそれを、龍の形に投影する。アイツは龍が最強だと思ってるから龍の姿を取る限り無敵に近い力を発揮する。

そしてアイツの中でダイヤモンドは壊れない物という認識だから、ダイヤモンド以上に今のアイツの体は壊れない。


正直、上司だからこう言うことは言いたくないが、バティスタはすげぇバカだ。バカだからこそ思い込みが強い。その思い込みがある限りアイツはやられない!


しかし、それでも。


「だったら!」


それでも、エリスはなお強い。空中で回転を始める、高速の横回転。エリスの体が横に伸びる、そして……。


「これならどうですかッッ!!」


「ガッッ!?」


そして繰り出される回し蹴り、足先がプラズマを放つ程の速度で放たれたそれはバティスタを吹き飛ばす。体は壊れずともバティスタは壁を貫通して他の部屋へと吹き飛ばされていく、避けることも出来ない痛烈な一撃。


それを繰り出したエリスはジロリと俺に視線を向ける。マジかよ、まだ俺のやるのかよ!


「パイセン!!」


「ペティ!」


そこに飛んできたのはお菓子を抱えてもちゃもちゃ食ってるペティだ、こんな時にもお菓子かよと言いたいが、違う。あれも立派に戦闘準備だ。


「パイセンどうしよう!」


「どうしようもこうしようもない、お前覚醒を使え。バティスタでもジョバンニでもダメなら、お前の覚醒しか倒す方法がない」


「え?シュガー・エクリプスのこと言ってる?けどあれを当てる自信が無いよ!!」


「俺が、なんとかする」


ペティには一撃必殺の技がある、当てれば確実にエリスを戦闘不能に持っていける。だが確かにシュガー・エクリプスを当てるのは今のままじゃ厳しい、俺がなんとかするしか無い。


「ヘイメーン、一人でカッコつけは許さねぇぜ?」


「デスペラード……!」


「大丈夫〜かぁ〜!」


瞬間、空から飛んできたのはデスペラードだ。隣には空飛ぶ杖に乗ったバフォメットもいる、ジョバンニもまた上層からエリスを睨みつけている。こいつら全員の力でエリスを惹きつけて、ペティの一撃を当てる!!


「よし、全員でかかる。いいな、デスペラード、バフォメット」


「勿論だぜメーン!」


「任せよ!第四魔神の力見せたるわ!!」


そして構えを取ったデスペラードは、バフォメットは。


「魔力覚醒!『デンジャー・ウルト』!!」


「魔力覚醒!『黒羊礼賛宴』!!」


モリモリと肥大化するデスペラードの筋肉、そして黒いツノを生やし、紫色の炎が噴き出す魔術陣を周囲に生み出すバフォメット……それと。


「魔力覚醒!『フルアーマー・コンフェクション』!!」


ペティは全身から光を放ち、纏うのはクッキーの鎧、チョコの剣、マシュマロの盾、全身をお菓子の武装で固め、甘味の騎士となりエリスと向き合う。魔力者四人、これで倒せりゃいいが。


「いくぞ!みんな!!」


「応!!」


そして、一瞬で散開する四人。目にも止まらぬ、影さえ残さぬ速度の散開、しかしエリスは動じることなく地面に降り立ち。


「見えてます」


バチバチと目元に電流が走る。そのまま拳を握り……。


「そこ!!」


「ヒェアッッ!!」


衝突。それはゴングのように鳴り響く拳の拳の衝突。筋肉に魔力を吹き込み、肥大化させることで魔力と筋力を合算するデスペラードの怪力からなる剛拳。そして光を纏うエリスの星光が振り向き様に放たれ大地が弾け飛ぶ。


「『黒刃魔誘』!!」


「む」


しかし、次の瞬間。エリスの背後でバフォメットが動く、魔術の達人と呼ばれるバフォメットが操る覚醒、それは様々な魔術を即座に発動出来る魔術陣を常に周囲に五つ浮かべると言うもの。


そこから発せられる黒い炎は肉体を引き寄せ、そして焼く。螺旋を描きエリスを吸い寄せ……。


「『星光一閃』!!」


しかし、指先を払い放った一条の細い光が、魔術陣を打ち抜き粉砕する。本来は触れられないはずの魔力の塊である黒い魔術陣を、魔力で粉砕したのだ。


「星の光!噂に聞く通り本当に操れるとは!!」


「邪魔!」


バフォメットが感嘆した隙、それはあまりにも僅かな間ではあったものの、エリスにとってはそれが致命へ誘うには十分過ぎる時間だった。即座にバフォメットに向けて飛び、両足を合わせた蹴りを槍のように放つ。


「おおっと!危ない!」


「身代わり……!」


しかしバフォメットも伊達じゃ無い、第四魔神だ、うちで四番手、エリスの攻撃を見抜き魔術陣と自分の位置を置換する魔術を発動しエリスの攻撃を回避。同時に炎を放つが……。


「チィッ!!面倒臭い!」


打ち払う、拳でだ。星の魔力を纏うエリスの攻撃は魔術を正面から破壊する力があるのか。こりゃどうしようも無いな。


だが、エリスが魔術を警戒したなら……次は。


「『隼一触』」


「グッ!?」


見えない、俺にもエリスにも、始まりから終わりまで、その攻撃の全てが見えない速度で行われた。空から飛んで来たジョバンニ様はいつの間にか極・魔力覚醒「『武神流秘奥ぶしんりゅうひおう五位之光拳ごいのこうけん』を発動させている。


五位之光拳、ジョバンニ様曰く魔術を超える武術の極致らしいが、ぶっちゃけ効果はよく分からない。だが瞬速の拳がエリスの頭を打ち、エリスの体が僅かに揺れた。


「ペティ!今だ!!」


「あいあい!クリームフロア!!」


ペティが動く、足元をクリームに変え高速で滑る。彼女の扱う菓子錬金はあらゆる物をお菓子に変える。それを応用した魔力覚醒『フルアーマー・コンフェクション』はそれを更に拡大、その効果を糖分にまで及ぼしたある種の極致、それが……。


「『シュガー・エクリプス』!!」


「グッ!?」


叩きつけられる、チョコレートの剣が。それがエリスに触れた瞬間……。


「なっ!アグッ……!?」


更にエリスの体が大きく揺れる、顔色が悪くなり、エリスの目が定まらなくなる。決まった!ペティのシュガー・エクリプス!


ペティの覚醒は『糖分を力に変える』覚醒、さっきまで菓子を食ってたのはその分覚醒を強化するため。それは応用すれば……相手の糖分を自身の力に変えることも出来る。


糖分は体を動かすエネルギーの源泉、それを強制的に剥奪すれば相手は意識障害、肉体的疲労、その全てが一気に襲いかかる。いくらエリスでも人間だ、糖分を奪われれば意識だって保てない!これなら……。


「ッ……」


動く、エリスは動く、ペティの姿を確認後、一秒ほどの時間を置いて即座にポーチに手を突っ込み、箱の様な何かを取り出し、バキバキと食い始めたのだ。


「プハッ!復活!」


「な訳なくなーい!?!?」


信じられん、今の一瞬で自分の体に何が起きたかを把握し、緊急用の食料を口にしたのだ。あれは恐らくブドウ糖の塊……旅の時に持ち運ぶ用の緊急食糧。アイツ普段からそんな物持ち歩いてたのか!流石はディオスクロア一周の旅人……!!


だがいい!あんな小さなブドウ糖で回復するわけがない!


「構うな!攻め続けるんだ!奴のスタミナは殆ど削ったはずだ!!」


瞬間、俺は紅蓮の剣を手にエリスに斬りかかる、赤い軌道を残し、繰り出される回転斬り。エリスはそれを飛び上がり回避するが、受け止めない。さっきまで受け止めていたのに避けた。それだけの余力がないんだ!!


「畳み掛ける!全員でかかれ!!」


ジョバンニが叫ぶ、デスペラードが動く、ペティが剣を構えバフォメットが迫り俺が刃を立てる、このまま一気に押して……押して!!!


────しかし、違った。俺はエリスと言う存在を誤認していた。と言うより見逃していた、以前会った時は黒の工廠、あそこで戦った時はまだなんとかなりそうな段階だった。そこから数ヶ月でここまで成長したんだ。


なら、今はその成長が止まっている、なんて誰が言える?寧ろ、戦争という逼迫した戦闘の連続の中で、エリスの進化速度が……劇的に向上していたとしたら。


エリスはまだ、底を見せていないとしたら。



「ッッ流星旅装」


その瞬間、エリスの流星旅装が輝き────。


「『八式襤褸はっしきらんる』……!」


「なりじゃそら」


エリスの纏う旅装が変わった。八色、赤緑青黄紫橙黒白……それそれの色の帯を裾から垂らし、さながらつぎはぎの如く色が混ざり合った色鮮やかな姿。ジョバンニの言う話では奴の纏うコートの姿が変わったら……。


「気をつけろ──────ッ!」


ジョバンニの言葉共に、飛んで来たのは、嵐の様な乱撃。エリスの裾から伸びる八つの光が伸びて、凄まじい勢いで振り回されたのだ。その一撃はデスペラードを弾き飛ばし、ペティの鎧を砕き、バフォメットの防壁を叩き砕き、俺の脇腹に直撃し……エリスは地面に四つ足を突く。


まるで八本の尻尾を持つ怪物の様に……。


「これはッ……」


ジョバンニは察した。以前自分に対して見せた『戦襲』が近接特化なら、この八式襤褸は属性特化であると。


エリスの裾から伸びる八つの帯はエリスの属性魔術の具現である。赤は炎、青は水、緑は風、黄は雷、紫は震動、橙は岩石、白は星、黒は魔力。それそれがそれぞれに対応した古式魔術級の魔力を有する一つの魔術として高速で振るわれる。


「まだちょっとクラクラしますが、問題ありませんね」


振るわれる八つの帯、それはエリスの意識で完全に統制されており、その上で第三の腕として動く。この場にいる全員を即座に攻撃が可能な形態へと進化した。


「ッ……!バティスタ!!」


この形態に対応出来るのはジョバンニのみ、だがそれもいつまで持つか分からない。故に叫ぶ、それと共に壁の向こうから飛んで来たのは……。


「極・魔力覚醒!!」


壁を粉砕し、飛び込み、叫びを開上げるバティスタ、そして。


「『超極龍大転生アルティメット・ドラグーン』!!」


変身する、巨大な龍……ではなく大きさはそのままに紅蓮の鱗と巨大なツノを持つ人間、半人半龍へと。そして帯を振るうエリスに向けて突っ込み。


「『龍炎絶拳ドラグーン・フィスト』!!」


「効きません!!」


バティスタの炎を纏う拳とエリスの橙の帯が衝突し壁が融解するほどの炎熱が飛び散る。相変わらず凄い威力だ、アイツの極・魔力覚醒は火力一辺倒だがその分出力が凄まじい……!


あれとジョバンニの覚醒が組み合わされば……行けるか?


(いや、俺も……動くんだ!)


剣を杖代わりに立ち上がる。まだ、寝てられない。


……………………………………………


「機巧錬金───」


「そこ」


「ぐっ!?」


咄嗟に機巧錬金を行おうとするが、やはり阻止される。最早何度目か、私の動きが先んじて阻止されるのは。


今、メルクリウスは敵の城を前に足止めを喰らっている。突如として飛来したマレフィカルム最強クラスの使い手『知識』のダアト。他のセフィラを隔絶する強さ持つこいつとやるのは二度目だが……。


「さて、次はどうしますか」


(強すぎる……まだ及ばんか!)


奴は未だ覚醒すら使わず私を前に余裕の表情を見せている。錫杖を手にニコリと微笑み、私の動きを待っている。前回は私達魔女の弟子は東部で奴と戦い、そしてものの見事にやられた。


あの時から私も成長したと言うのに、結果がまるで変わっていない。あの時から少しも奴との差は埋まっていないかの様だ。


(……見識が作用しないか)


意識を集中させれば一応奴の動き自体は先読みできる。だがブレるのだ、ダアトが右に動く未来と左に動く未来が同時に見える。かと思えば奴は動かない、まるで意図的に私にそう言う情報を与えているようだ。


だと言うのに奴の先読みの精度は私を上回っており、……以前戦ったピスケスの識確模倣の兵器を使う……名前はなんだったか、思い出せないがそんなのがいたが。奴と戦った時は逆に私が先読みを無効化できていた。しかし今回は逆か。


(これは、勝てんか……)


「そんな事はありません、正直貴方の極・魔力覚醒は脅威です。私としても先読みがなければかなり危うい戦いですよ」


(心まで読まれるか)


クスクスと笑うダアトはそのままクルクルと錫杖を回し。


「なので、ここで倒させてもらいます。第三段階持ちは少しでも減らしたほうがいい」


「言っていろ、そう簡単にやられるか!!」


「では、試させてもらいましょう」


踏み込んでくるダアト、同時に私は背後に城塞を形成し……。


「撃て───」


「無理です」


がしかし、気がつくとダアトは私の背後に。同時に形成した城塞が一瞬で粉砕されており、巨大な瓦礫を掴んだ彼女はそのまま凄まじい膂力でそれを私に向けて投げ飛ばして来たのだ。一瞬か、一瞬。進化をしていないとはいえ私の城塞を!


「チッ!『消えろ!』


咄嗟に手を払い飛んで来た瓦礫を我が力で消滅させると……。


「どこを見ているんですか?」


「ぐっ!?」


瓦礫の影に隠れていたダアトが飛び出し、凄まじく重い拳を私の腹に叩き込む。その一撃は私でさえ耐えきれず、一歩引き下がるほど。


「しかし、驚きです」


振るわれる拳、それが今度は私の右頬を撃ち抜く。肘から魔力を噴射し行われる打撃はモーションが存在せず、いきなり飛んでくるようにも見える。


「ある程度予測していたとはいえ、まさかこの速度でここまで強くなるとは」


「ガハッ!?」


そして弧を描く様にダアトの拳が今度は私の顎を叩き抜く。さながら流星の軌道の様にも思えるそれを受け、グラリと視界が揺れ。


「本当に、まるで時代が選んだかの様な……そんな凄まじい才覚の持ち主たちだ」


「っぶふっ!!」


体が上に伸び、がら空きになった胴体に一撃。鋭い打撃が叩き込まれ、衝撃波が背後に抜ける。まずい、動きが早すぎる……このままじゃやれる。

そう考えた私は手元に銃を作り。


「この!!」


「しかし」


まるで、銃を向けられるのが分かっていたかの様に、彼女はグイッと向けられた銃を掴み横にズラし、誰もいない方向に向けて私は発砲してしまう。と思ったのも束の間、今度は木を切り倒す様な勢いの蹴りが私の脛に叩き込まれ、この体は呆気なく大地に倒れ込むことになる。


「それでも、貴方達はもっと強くならねばなりません。私は貴方達全員の成長を望んでいます」


「ッ……何を」


倒れ伏しながらも、即座に大地を掴み立ち上がり───。


「まぁ、それはあくまで個人的な感情なので、立場的に普通にぶっ殺しますが。これ矛盾してますか?」


「ァガッ!?」


しかし立ちあがろうと突いた手が、ダアトの錫杖に打たれ力が抜ける。立ち上がれない……!


「ほら、次はどうしますか?」


「ッ……」


そして続け様に叩き込まれる魔力加速による蹴り、顔を蹴られグラグラと視界が大きく揺れて、体から力が失せる。


強い、派手さはないが着実に私の行動を潰し、その上で的確に打撃を叩き込むスタイル。極・魔力覚醒を相手にしても苦にもならない実力と未来を見る識確の相性がここまでいいとは。……ダメだ、見えない。


「それとも諦めますか?」


(勝てるビジョンが全く見えない)


私を見下ろすダアトの目に、狂気にも似た闘争心が宿る。真っ向勝負で戦っても勝ち目がないのが目に見えている、これはただ強いだけじゃ勝てそうにない。


だが、諦めるか……諦めるわけには、いかんよな。


「ッ城塞よ!」


「ほう」


錫杖がグリグリと抉り込まれる手を開き、そのまま大地に魔力を通し、形成する城塞。それはダアトを私ごと覆い……周囲の景色が無骨な石造りの城へと変わる。


「撃て!!」


「かっこいいですね」


壁から飛び出るのは大量の銃口、それが全てダアトに向き、数百、数千の銃口から弾丸の雨がダアトに注がれる──。


「面白い極・魔力覚醒だ、私の情報をドンドン抜いている。適応しようとしている?なるほど」


しかしダアトは冷静に錫杖を持ち上げ、振るう。超高速で回転させ周囲の弾丸を全て弾いていき、それらを全て寄せ付けない。

しかもだ、今、私の極・魔力覚醒の適用対象からダアトが消えた。ダアトへの適応が止まった?まさか、極・魔力覚醒が行う情報分析を識の力で防いだのか!?


そんなことまで出来るとは……。


「チッ!」


だが錫杖が抜けた、私は即座に転がりながら立ち上がりダアトに向けて手を開き。


「『打破』!!」


解き放つのは打破の概念、触れた全てを吹き飛ばす不可視の打撃。それを銃撃を防ぐダアトに向けて放つ。少しでも、ダメージを与えるんだ!銃撃を防いでいる今なら奴に当たる!!


「……『攻性情報出力』」


「なっ!?」


しかし、弾丸の雨が止む。ダアトが虚空から何かを取り出す、慌てて周囲を見ると……全ての銃口が潰れていた。まさかダアト、弾丸を弾いて他の銃口に当てて壊していたのか!?


「『界傷剣』ッ!!」


そして虚空から取り出した赤黒い板の様な剣を振るい、なんと概念すら切り捨てる。なんだあれは……そう思い見識で確認すれば。

なんとあれは、この星が記憶する『痛みの情報』そのもの。人間が味わう遍く痛みの大元となる情報の欠片を取り出し剣として使っているのだ。


それは概念すら切り裂き……。


「痛かった手を上げてください」


すれ違う、ダアトの体が私の横をすり抜け。痛みの情報を備えた剣が私の体を通過する。傷はない、斬られていない、だと言うのに……。


「ガッ!?ぎゃぁあ!!!」


痛い、痛い痛い痛い痛い、あらゆる痛みが体の中で暴れ狂う、転けて足を擦りむいた痛みが、骨が折れ走る痛みが、歯を抜かれた苦痛が、髪を毟られた苦痛が、目を抉られた苦痛が、死ぬほどの激痛が、一気に全身に広がり私は頭を押さえて転がり回る。


あまりにも痛い、思考が定まらない、痛すぎて頭まで痛くなって来た。


「お手上げ、ですか?」


未だに嵐の様な痛みに悶える私を、ダアトは静かに見下ろす。極・魔力覚醒を使っても、傷一つ与えられんとは……!!


「さっきも言いましたが本気で殺す気です。今回は前回のように見逃す理由もないので、と言うか見逃したらいよいよやばいので、死んでもらいます」


「ッ貴様……!」


「葡萄酒がお嫌いなら、感謝を。花束がお好きなら憎悪を」


意味不明なことを言いながらダアトは錫杖を振り上げ、私に向けてその矛先を振り下ろし──ピタリと止まる。


「やはり時代に選ばれているか」


瞬間、ダアトは錫杖を持つ手を変え、思い切り握り直すと……。


「『剛の型・伐採』!!」


「『ラグナロク・スコルハティ』!!」


振るう、振るわれる、激突する。突如出現した槍から放たれた絶技とダアト錫杖が激突し、私の城塞を芯から粉砕するほどの衝撃が走り……。


「メルクリウス!こいつは私が請け負う!軍を動かせ!!」


「おや、アーデルトラウト将軍。現人類最強を帝国にて名乗ってる様で……些か分不相応かと」


現れたのはアーデルトラウト将軍だ、時間を止めて私の元まで走って来たのだ。しかし末恐ろしいのはダアト、時間停止からの不意打ちなどどうやって防いだのか、即座に反応して逆に切り返したぞ。


「貴様だな、エリスの言っていた『ボケナス』のダアトやらは」


「む、それはネガティブキャンペーンです。私は『知識』のダアトですよ」


「どちらでもいい!貴様の相手は私だッッ!!」


「ッ!ここで始めるな!」


私はそう叫び、即座に飛び退くと。乱れ飛ぶ錫杖と槍の乱撃、嵐の様に吹き荒れ、津波の様に押し寄せ、噴火の様に周りを破壊する。そこ破壊の旋風から逃げ出し、距離を取る。


……まずいな、始まってしまった。


(マレフィカルム最強と魔女大国最強の戦いが……)


離れながら、苦虫を噛み潰す。ダアトは今は違うとは言っていたが、それでもマレフィカルム最強を名乗り、呼ばれているダアトと、ルードヴィヒ将軍が退いたこの世界にて人類最強を名乗るアーデルトラウト将軍の戦いが。


両陣営最強の戦い、これは出来れば避けたかった。だが始まってしまった、この戦いの結末は……少なく見積もっても陣営に多大な影響を与える。


もし、どちらかが負ければ、その陣営は大きく士気を落とす。最悪アーデルトラウト将軍が負ける様なことがあれば……。


いや、考えるのはやめよう。今私に出来るのはアーデルトラウト将軍の穴を埋めること!!


「全軍!!進め!!」


ボロボロの体を引きずり、銃を片手に号令をかける。戦いの決着がつく前に……本命を落とす!!


……………………………………………………


「凄まじいですね、やはり貴方は強い、アーデルトラウト将軍!」


「喧しい」


打ち合う、既に数百と轟音を鳴らし我がグングニルと奴の錫杖が幾合も打ち合い、火花を散らす。

『知識』のダアト、聞くところによると識を扱う未来予知の達人。まともに戦っても勝負にならんらしい、事実私の特異魔装グングニルで自身の時間を加速させてようやく奴の先読みに対抗出来ているほどだ。


なるほど、マレフィカルム最強と呼ばれるだけはある、だが!!


「『タイム・ストッパー』!」


「お、それは────」


瞬間、時が止まる。我が特記魔術『タイムストッパー』は鼓動が十度行われるまでの間、完全に世界を停止させる。

目の前には静止したダアトが見える。ただまぁ、この魔術は陛下の使う時間停止魔術『停刻』と異なり停止中の相手に直接ダメージは与えられない。


だから、側面に周り。不意打ちを行う……と。


「む、こいつ」


右側面に回って気がつく。見れば錫杖が右側に向いている。私の攻撃を予測し右側に錫杖を振るうモーションをしているのだ、なるほどこうやって対処してくるか。危うく乗るところだった。


「ならばこちらから」


と左側に移り、無防備な左側に立ち……そして槍を大きく振りかぶり、時が動き始めるて共に────。


「『ラグナロク・スコルハティ』!!」


無防備なダアトの左側面に渾身の一撃を見舞う、同時にダアトはようやく動き出し。


「───時間停止魔術ですね」


瞬間、錫杖が右側に振るわれる動きを取るものの、魔力噴射によってダアトの手の中を滑り、左側に向けて伸びる様に突き出され、私の腹を打った。


「ガッ!?バカな!?」


右側に振るうモーションを見せつつ、実際には左側に攻撃を?私が左に移ることまで読んでいたと言うのか!!


「識確に干渉する力を一切持たない以上、時を止めても無駄ですよ」


「チッ!」


クルリと反転し錫杖を高速で振るうダアトの連撃を咄嗟に槍を回し防ぎつつ後ろに引く。初撃をもらってしまった、タイムストッパーを使ったのに。こいつ、時を止める我が技にすら対応してくるか。


面白い……面白い!!


「『フィンブル・ソールマーニー』ッッ!!」


「おっと」


地面に槍を突き刺し、穂先で魔力を爆発させることで周囲の地面を吹き飛ばす広範囲殲滅技。それをダアトの前で解き放ち……全てを光で飲む。


「ッてて、流石にそんな大規模な技使われたら厳しいですよ」


「なるほど、防壁は張れんらしい!!」


地下火山が爆発したような巨大なクレーターを作り出し、飛び上がる瓦礫の上に乗るダアトを追う様に、私も瓦礫を足場に飛び上がり。


「『ムスペル・ナグルファル』ッッ!!」


振り下ろす、槍を。その穂先に魔力を集め一気に解き放つ。その爆発は一瞬で周囲を白く染め上げ、炸裂する。


『うわぁあああ!ちょっと将軍!!』


『助けてーー!!』


「ちょっと!味方巻き込んでますよ!!」


「巻き込んだのではない!巻き込まれたのだ!!そこにいる方が悪い!!」


全身を爆発で焼かれながら吹き飛ぶダアトの言う通り、私の爆発は地面にまで届き、味方の兵士、敵の兵士構わず吹き飛ばしていく。しかし正直そこに考慮出来るほどの相手ではない。ここで倒さねばならん、帝国……ひいては人類最強として!!


「『ヴィグリド・ヨルムンガンド』」


防壁を足場に、振るう槍の斬撃が幾千と枝分かれし台風となって周りを切り裂く。閃光の雨が次々とダアトに降りかかり、奴は必死に錫杖で防ぐが……遅い、速度に差が出ているぞ!!


ここで決める……!


「受けてみろ、我が必殺の一撃」


大きく息を吸い、全身の魔力を解き放つ。


「『ガングレリ───」


「おっ!ヤバッ!」


天に向け槍を回す。槍の穂先に魔力を集中させる『ラグナロク・スコルハティ』と異なり、槍全体を魔力の塊に変える。これは私にとっての渾身の、全身全霊の、必殺の一撃!!


「───ヴァラスキャルヴ』」


一閃、解き放つ刺突は空気を切り裂き大気を穿ち、全てを通す光の柱のとなってダアトに向けて駆け抜ける。空の彼方まで貫き通すこの一撃を受ければ……死体は残らん。


「ッッ!!」


そこで明確にダアトは表情を変え、ギュッと目を閉じ……。


「『位置情報誤認』」


突如奴の体にノイズが走り、転移する。いや、最初からそこにいたのか?まるで私が奴の居場所を間違えたかの様にガングレリ・ヴァラスキャルヴの射線の少し上に奴が現れる。


タネは分からんが避けられた、空に向けて飛び上がるダアトは我が渾身の一撃を避けるのだ……だが。


「必殺と言ったはず」


だが、必殺とは必ず殺すと書いて必殺だ、避けられた程度で終わる攻撃なら必殺とは言わん。即ち……。


「極・魔力覚醒」


ダアトは目を閉じながら、頬から冷や汗を流す。だが遅い、もう発動する……我が。


「『須臾瞬息弾指』──────」


───『須臾瞬息弾指』、それはアーデルトラウトの持つ文字通り必殺の極・魔力覚醒。効果は対象一人以外の時間を停止させること。即ちアーデルトラウトではなくダアト以外の時間を停止させると言うもの。


時間は一分、その間世界はダアト以外停止する。勿論その間のことはアーデルトラウトも認識出来ない。


これが必殺となる所以は……文字通り、相手以外と全てが停止することにある。空気も、埃も、瓦礫も、何もかもが停止し鋼で縫い止めたように動かなくなる。

その中で少しでも動こうものなら、埃に体を引き裂かれ、瓦礫に体を撃ち抜かれ、全身がズタズタに引き裂かれる。勿論魔力も動かないから防壁も張れないし遍在も効かない。


そして停止が解除された瞬間。停止した分子と擦れて生み出された莫大な摩擦熱により一気に発火、相手は塵も残さず消え去ることになる。


攻略法は一つ、動かないこと。だが高速で動くアーデルトラウトと戦いながら、いつ発動するかも分からない極・魔力覚醒を警戒し、咄嗟にその行動ができる存在はいない。故に必殺。


特に今回は念を入れた、ダアトが先読みが出来るなら極・魔力覚醒の発動タイミングが割れている。故に絶対に避けなければならない攻撃を加え、避けた瞬間を狙って発動した。上に向けて飛んでいるタイミングで。停止はできない、どうやっても止まれない。


故にこその必殺の一撃、最大級の攻撃を叩き込んだ後を狙い極・魔力覚醒を発動させる。誰にも対応出来ない必殺の陣である。


そして、時が動き始めれば……。


「ガッッ!?!?」


即座に景色が入れ替わる、ダアトが血を吐き、全身を引きちぎられ、血まみれになり、摩擦熱で発火し地面に落ちていく。


防壁で全身を守ることも出来ないダアトは、止まった時の世界を動いてしまった。タイムストッパーはそこら辺も融通を利かせてくれるが、極・魔力覚醒『須臾瞬息弾指』はそうじゃない、世界そのものに引き裂かれたのだ。


「終わりだな」


落ちていく血まみれのダアトはやがて火の塊になり、朽ちていく。マレフィカルム最強、打ち取ったり────。


「……魔力……覚醒」


「む?」


しかし、動いた。血まみれのダアトは動き出し、ギロリとこちらを睨むと同時に。


「『無二のモノゲネース』……!」


「ッ!!」


覚醒、瀕死の体で魔力覚醒を発動させたのだ。その瞬間ダアトの体は青白い光に包まれ……。


「肉体情報再編……!!」


「グッッ!?!?」


一瞬で肉体が元に戻り、同時に光の如き速度で私に向けて飛んできて、腹に奴の拳が突き刺さる。


「……極・魔力覚醒が、瞬間発動型なら、これ以上の戦闘能力の向上はないですよね」


「ッッ……!」


「使いたくなかったですが、使わなければ死んでしまうので、やらせてもらいますよ。人類最強ッ!!」


青い髪、青い瞳に変じたダアトは魔力覚醒を発動させた。だと言うのに、その出力は極・魔力覚醒すら大きく上回っている。


肉体すら再生させる魔力覚醒だと……これは。


(面白い……!)


槍を握り直す、やはり一筋縄ではいかんか!マレフィカルム最強よ!!


こいつは、私が相手をする。ここで食い止める!その間に……頼むぞ、ラグナ!!

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― 新着の感想 ―
「あなたみたいなタイプの使い手と戦ったことがあります。でそう言うタイプは決まって、肉体に付着しなければ意味がない。 」がないの、また発見!!!
エリス強すぎだって………主人公というよりレイドボスだよ。見てると十天神側を応援したくなってしまう。 ダアトも強いけどアーデルトラウトさんも強い。流石は人類最強。 ダアトとアーデルトラウトさんが互角か…
ついに出てきたエリスの新型流星旅装 属性ってことはさらに強くなれば星と識の帯も生える? メルクさんではキツかったか…… アーデルトラウトさん識なしなのにダメージ与えたのすごいな……流石は人類最強! ボ…
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