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孤独の魔女と独りの少女【書籍版!3月30日二巻発売!】  作者: 徒然ナルモ
二十二章 アド・アストラVSマレウス・マレフィカルム
904/932

833.魔女の弟子と二つの流星


ヴィルヘルム要塞陥落の知らせが届いた、先日突如として急激な動きを見せたアド・アストラ軍によりたったの一日で十三の要塞が陥落、参加していたセフィラの大部分が生死不明、作戦参加していた十天魔神のシャカリキもまた行方知れずになってしまった。


その知らせを受け取ったゴルゴネイオン本拠地、別名『黒帝城フォルミカリウス改』。五百年前、ゴルゴネイオンが創立された時に建造された巨大城。それをこの決戦に際して改造されたその巨大な城……今はアルクカースの平原のど真ん中に突き刺さるように、空高く聳える縦長の城は、今混乱の只中にあった。


「ば、バティスタ様!お待ちください!バティスタ様!」


「うるせぇ!これが待ってられるかよっ!!前線の連中がやられたんだろ!シャカリキも!デモンズも!!」


荘厳な廊下を無数の配下に止められながらもズンズン歩くバティスタは、そりゃもうガチギレしながら吠え立てる。前線部隊の壊滅、その報告を聞いたからだろう。つい先日まで前線にいた彼としては面白くないだろう。


自分が一日長く向こうに残っていたら、なんとかなったかも知れないのに。ってね。


「クソがァッ!!ネツァクの野郎ッ!あんだけ偉そうなこと言っておいてボロ負けじゃねぇか!……どーなってんだよ、テメェはよぉ!セフィラァッ!!!」


「私に言われても」


ギロリと廊下の壁に体重をかける私に対して吠えるバティスタ。彼は黒金の廊下をガンガン叩くように歩いてきて、私の前に立つ……。


「ダアトぉ、テメェんところの将軍がよぉ、偉そうなこと言っておいて、このザマだぜ、おい」


「だから、私に言わないでください」


ネツァクは負けた、ホドとイェソドという戦力を用いながら、セフィラ達が負けたのだ。誰かと一対一で戦って、ではなくつまり軍団に囲まれて逃げ場を失って負けたのだ。

セフィラとは言え人間、並大抵の軍など比較にならない練度と人数を持つアド・アストラ軍数百万に囲まれたらもうどうしようもない。ましてや将軍とかもいたんでしょう?どうしろと。


「これだから、セフィラは信用ならねぇ!」


(遂に不信感を隠さなくなりましたか)


軽くため息を吐き、ダアトは腕を組み直す。カロケリ山での撤退を受け、私はこの本拠地たるフォルミカリウスにて英気を養っていました。あと、まぁ色々と『裏で動いていた』わけですが、それは今回の戦争とはまた関係ないことなので割愛。


ともかく、仲間と合流したエリスさん達は目覚ましい活躍を挙げられているようで……と、手放しに喜べたらいいんですが、そうもいきませんねぇ。


(やはりこちら側の戦力をアド・アストラ側が上回り始めている。マクスウェルの腕前でも対応不可とはちょっとやばいですね……)


識確の力で色々確認したいが、エリスさんの関与のせいでもうめちゃくちゃな未来しか見えない。かろうじて確認出来たのがマクスウェルの敗北、そしてレナトゥスさんの潰走。

ただ分からないことがある、レナトゥスさんの行方だ。どう演算してもレナトゥスさんがこちらに戻ってくる未来が見えない。


まさかどこかで野垂れ死んだ?いやありえない、それなら彼女の未来を予測することすら出来ないはず。と言うことは……まさか彼女は────。


「聞いてんのか!テメェ!」


「おっと」


瞬間、バティスタの拳が私に向けて振るわれる。まぁ当然避けますが、しかしまさか手まで出してくるとは。


「貴方、これが意味する事。分かってるんですか?」


「テメェこそ分かってんのか!こっちはな!大事な仲間がやられてんだよ!!これ見ろ!!」


そう言ってバティスタは懐から六角形の石盤を取り出す。なにそれ、とは言わない。マレフィカルムに通ずる者なら噂くらいは聞いたことがある。

あれは十神盤、イノケンティウスを中心に十一の光が宿った石板。それぞれ宿った光は十天魔神の命に直結しており、その光が潰えると言うことはその人物が死んだことを意味する。


で、だ。そのうちの一つが消えている……デモンズの欄だ。


「デモンズが死んだ!アイツはカーヴル平原にいたんだ!敵の攻勢が最も激しい地点に!シャカリキと一緒に残ってた!そいつが死んだってことは……デモンズは魔女の弟子達に殺されたんだ!!」


(実際にはまぁ、違うんでしょうが)


ここら辺はエリスさんの影響が少ないため明瞭に見えた、デモンズを殺したのは覚醒愛好家ことマクスウェルの仕業だ。デモンズは相当珍しい覚醒を持ってましたし、殺して奪ったんでしょう。まぁ言いませんが、言ったら本格的に敵対しそうですし。


「そんな危険な地帯に置き去りにして!マクスウェルの野郎は援軍すら寄越さなかったらしいじゃねぇか!!」


「だから、それを私に言われても。ネツァクだって色々大変だったんですし」


「だったら最初から偉そうなこと言うなよ!」


「それはそう」


ですがネツァクは基本誰にでも偉そうですよ、彼が忠誠を誓うのはレナトゥスとガオケレナ総帥だけです。なので偉そうに言うな!と言うのはあれだ、ネツァクに対して死ねと言うようなもんだ。


「信用ならねぇ、信用ならねぇ!最初からそうだ!これなら俺達が前線に出ていたほうが良かった!」


「果たしてそうですかね」


「あンだとォッ!!」



「やめないかッッ!!バティスタ!!」


「ッ!」


私に殴りかかろうとしたところを止めたのは、廊下の奥からやってきたツルピカ頭のスキンヘッド男に止められる。顎髭を蓄えた彼は……ホプキンスだ。


第三星神ホプキンス、第二龍神バディスタからすれば格下だが、長きに渡りイノケンティウスを支え、なにより天番島の戦いでは魔女レグルスと邂逅しながらも生き延びたと言う抜群のネームバリューを持つイケメンハゲだ。


「ホプキンス……でもよぉ!」


「ここでセフィラの離反を招けばそれこそ終わりだと何故分からん、……ダアト殿。申し訳ない、バディスタは未だ若く物の分別がつかぬ男でして」


「若いって私と同年代ですけど、まぁいいですが。貴方が頭を下げてくれるなら許します」


「ケッ」


静々と頭を下げるホプキンスの後ろでポケットに手を突っ込むバティスタは不機嫌そうだ。いい身分ですねバディスタ、年上に頭下げさせて自分は悪くないって顔。どんな気分で生きてんだか。


「しかし、デモンズが死んだと言う報を聞いた時は私も驚きました、彼は些か死に急いでいる部分がありましたが……惜しい男を亡くした」


「戦争なんかしなきゃよかったですね」


睨まれた、だが事実だ。私達に残された道は敵を一人残らず殺すか、私達が一人残らず殺されるかのどちらかだ。そこについて覚悟をせずここに来たのだとしたら、申し上げにくいが死んで当然かもしれない。


「ダアト殿、正論ばかり言えば良いと言う物ではありませぬ。相手の気持ちを慮り、時には気遣う必要もございますぞ」


「必要なら、します」


「友達いねーだろ、お前」


「む!」


バティスタにチクリと言われてちょっとむくれる、私だって友達くらいいます。一人はまず確実にいるでしょ?そこにエリスさんも加えたら……二人です!


「ともかく、これは序章となりますな。ダアト殿、これより先戦場はどのように動きますかな?」


「間違いなく、敵は勢いに乗りました……まぁ確実にここに攻めてくるでしょうね」


「上等だ、今度こそ全員殺す!」


「果たしてそう上手くいくものか。私はどうにも不安ですな……」


「まぁこっちもこっちで色々動いているので、まるっきり手出しが出来ないってこともないと思いますよ?」


「む?」


こっちはセフィラを投入しまくってるんだ、そう簡単にやられてたまるか。事実、ヴィルヘルム要塞に入り込んでいた『彼女』は恐らくまだ敵に見つかっていない。ならまだ少し面白いことになるだろう。


「ふむ、そちらもなにやら動いている様子。流石は識確の使い手ですな」


「それほどでも」


「そんな未来すら見通す知恵者に告げるには、些か気恥ずかしいのですが……一つ良いですかな?」


「なんです?」


ホプキンスはヒゲを撫でながらチラリとこちらを見下ろす、なんです?と聞きつつも、見える。彼がこれから提案する話が、なるほど。面白い、流石は歴戦の猛者。実力は或いはバディスタに劣るかも知れないが……その知恵と大胆さはゴルゴネイオン随一か。


「一つ、ご提案が」


この提案、乗る価値がある。


……………………………………………………………


「見えてきたな」


「あんなものがアルクカースのど真ん中に突き立てられているとは」


ヴィルヘルム要塞での戦いを終えて二日、アド・アストラ軍はようやく敵の本拠地を見つけた。それはなにもない平原にズドンと空から降ってきたような巨大な円柱型の城だった。

常軌を逸しているのはサイズ。並の城の三倍はあるぞ、あれほど巨大な建造物は……中々ないな。


「気を抜くなよ、メルクリウス。ここからが正念場だ」


「分かっています、アーデルトラウト将軍」


私はアーデルトラウト将軍の言葉に頷く、我々アド・アストラ本隊組は敵の目を引く囮となって進軍を続けた。既に敵に捕捉されているだろう、それでいい。それだけの大戦力だ。

特にこちらにはアーデルトラウト将軍、クレア団長、マリアニール団長、そしてナリア君と私……そしてエリスがいる。


第三段階だけで数えても五人いる。かなりの戦力だ、敵も無視は出来ない。


だが……あくまで囮。


「ラグナ達も既に動いているな」


別方面で動いているラグナ達こそが本命、向こうにはラグナ、ネレイド、ゴッドローブ将軍、タリアテッレ団長、ベオセルク隊長がいる。そして救出が上手くいっていたらラクレス殿やホリン殿も。


彼らが側面を突く形であの城を叩く。それで敵を南方に退かせる……そして南に逃げたところでデルセクト側から別動隊を動かして挟撃する。


「メルクさん、デルセクト側の別動隊はどんな感じです?」


後ろから歩いてきたエリスに、私は軽く頷き。


「既に動かしている、デルセクト側にアド・アストラ別動隊……その数一千万。第三段階級の強者はいないが敵方戦力にとっては脅威だろう」


「う、動かしましたね」


「全体の十数分の一だ、これで終わらせられるなら安いものだろう」


アド・アストラ軍は億に届く軍勢を持つ、今回動員しているのはうち二千万ほどだ。十分の一と言えば数字的には大きいとも小さいとも言えん。だがそれだけの数を動かしているのだ、相応の力や費用は必要になっている。


だがそれを差し引いても、問題ないと思える結果となるだろう。ゴルゴネイオンを倒せば八大同盟は全滅、マレフィカルムは総崩れ、セフィラは裸となる。


ここで奴らを南へ押し切り、その上でデルセクトと挟み撃ちにして潰す。それがラグナの思い描いた構図だ!


「エリス、メルクリウス、クレア、そしてマリアニール、サトゥルナリア」


そんな中、アーデルトラウト将軍が軍の先頭に立ち、紅の大槍であるグングニルを手に肩越しに私たちを見て。


「お前達はこの本隊における最高戦力だ、だからこそくだらない命令で縛ったりしない。自由に動け、やりたいようにやれ、それが可能なだけの実力があることは確認済みだ」


「任せてください、アーデルトラウトさん」


「敵をぶっちめればいいんですよね、楽勝」


グッと拳を構える物騒なアジメクコンビ、エリスとクレア団長は共に凄まじいやる気だ。無論私もそうだ、やりたいようにやらせてもらえるのはありがたい。


「私達も共に戦いましょう、サトゥルナリア……。まさかルシエンテスの子とこうして戦場で肩を並べる日が来るとは」


「よろしくお願いします、マリアニールさん。エトワールコンビとしてアジメクコンビには負けないよう!がんばります!」


「ええ、そうですね」


そしてマリアニール団長とナリア君のエトワールコンビもやる気十分、後は……。


「あとは、攻勢を仕掛けるだけ……ですな、アーデルトラウト将軍」


「ああ」


私とアーデルトラウト将軍は共に前に進んで丘の上に立ち、敵方の巨城を見据える。もうホドはいない、恐れる敵の数は少ない。仕掛けるなら……今だ。


そう捉えたアーデルトラウト将軍は、大きく槍を上に向け、振り下ろす。鋒を敵の城に向けて。


「魔女様が守り抜いた八千年の歴史あるこの地を!穢す根源たる敵方本拠地は目前ッ!切除せよッッ!!アド・アストラ連合軍ッッ!!」


『おおおおおおおおおおおおお!!!』


アーデルトラウト将軍の号令が響き渡り、大地を揺らすアド・アストラ軍の怒号が一斉に放たれる。その威圧、その気炎、その闘気、巨大な怪物となった軍勢が今目の前の敵目掛け。


「進めェーーーーッッ!!」


進軍を開始する。一気に全軍が歩を進め、地震が発生する程の勢いで軍靴が地を打つ。敵の城を骨まで残さず食らい尽くす為に。


「さて、行くか」


私の横を騎兵が駆ける、銃士隊が走る、戦士がすり抜ける、巨大な人の運河の中。腕を組んで悠然と歩く私は軽く右手を掲げる。既にエリスもクレア団長もアーデルトラウト将軍も、ナリア君達も動いている。


なら、私は私なりの戦い方をする。


「『機巧錬金』!!」


指を鳴らし、腕を払えば大量の砲台が目の前に展開される、それを数度繰り返し、数百の大砲を錬金術で作り上げる。そして。


「デルセクト銃士隊!!砲撃用意!」


腕を組み直し、肩に乗せたコートを羽織り直す頃には既に軍勢の中からデルセクト連合軍達が規律よく現れ砲台一つにつき三人体制で構えを取る。


「砲撃開始、敵の城に蜂巣の如く穴を開けてやれ!」


『了解!!』


私が機巧錬金で作り上げたのは『錬金機構搭載型アマルガム砲台』。魔力を込めるだけで砲弾を内部で作り上げる仕組みをしている。内部には一つにつき百発分の魔力を入れてある、それを使い、デルセクト銃士隊諸君の判断で砲撃を行う。


「撃て撃て!」


次々と放たれる砲撃、アマルガム砲台から放たれる砲弾は特別製だ。射出と同時に形状が変わり前面が尖り両側に鉄の翼が生まれ飛翔する。より効率よく、スピードを落とすことなく敵地に向けて飛ぶ。

そしてインパクトの瞬間、砲弾は再び変形。星型の楔状となり敵の城壁に大穴を開けながら爆発して……む?


「壊れていない」


傷はついているが、砲弾を受けても穴が開いていない、どうやら相当硬い作りをしているらしい。だがダメージが入っているならこのまま続ける……。


「見ろーー!!敵の城が動いたぞ!!」


その瞬間、敵城が動き出す。正面のハッチが開いて大量のマレフィカルム兵士達が我々を迎え撃つように陣を作り迎撃の姿勢を見せる。それだけじゃない、無数の銃座が飛び出し、次々と銃弾がこちらに向けて浴びせかけられる。


流石に一筋縄ではいかんか……む?


「あれは」


更に、城は上部を開き、六つの穴が開く。巨大な穴だ、何かくる、そう察して構えを取った瞬間、それは撃ち放たれる。


大爆発と共に射出されたのは巨大な黒い釘。いや釘型の城だ、確か報告には聞いていた、開戦直後はあれがビスマルシア周辺に降り注ぎ包囲されたと。それはあの城から射出されていたのか。


そして、今度はそれを大質量の砲撃として放って来たのだ。その一発が我が軍に直撃しただけで大地が捲れ上がり、凄まじい被害が出る。その上でまだ敵陣には釘型の城の備えがあるようで次々と撃たれ。


「あれはまずいか、仕方ない」


肩に羽織ったコートを振り払い、魔力を解放し一気に全てを吹き飛ばす程の魔力を噴出させ、同時に逆流させ……。


「極・魔力覚醒!『オプス・ト・アンドロピー・アガトン』!!」


全身から放たれる魔力が光となり、周囲に無数の城塞を築き上げ、私は飛び上がる。足元に巨大な塔を生み出し、その勢いで空高く飛び上がりながら飛んでくる釘型の城に向け……拳を握り。


「『鉄城拳』」


私の覚醒は技術の結晶を生み出す力。それが城となって表出化しているに過ぎず、生み出される城は領域内であれば場所を選ばない。

故に私は作る。鋼の城壁を、鋼鉄の城塞を、この拳に。ぐるりと腕を覆うように生み出された鈍色の籠手を大きく振りかぶり。


「概念錬成!『爆砕』!!」


そしてそこから放たれる概念錬成により拳の一撃で巨大な城を粉砕する。この一撃により超大質量の黒釘城は空中で木っ端微塵に吹き飛び、瓦礫が四方に飛び散る。


「うぉおおお!!すげぇええええ!一人であの城を粉砕しやがった!!」


「あれは同盟首長メルクリウス・ヒュドラルギュルム様!?拳一つで城を粉砕するとは……!」


眼下で兵達が私の活躍を見て士気を上げている。確かに、巨大な城を一撃で粉砕した、そういえば随分なことのように思える。


だが……。


「『ラグナロク・スコルハティ』!!」


同時に飛んできた無数の黒釘城が中頃からへし折れ、内側から爆散する。その数……五本。アーデルトラウト将軍だ、魔力を纏った一撃で一気に五本も粉砕した。その上でまだまだ余裕。


あれが世界最強の領域、エリスなんかはものの数分で四十本近い黒釘城を跡形もなく吹き飛ばしたと言うし、どうにも私はその領域にはまだ一手及んでいないように思える。


ホドもまた、アーデルトラウト将軍と互角に撃ち合える事を考えると同じ領域。もっと強くならなければ……いや。


(今は倒した女のことなど考えるのはやめよう、私とアーデルトラウト将軍が前面に出た以上敵も何かしらのアクションを見せるはず、その前に一気に極・魔力覚醒の力で戦況をこちらに傾かせる!!)


地面に着地すると同時に背後に巨大な砲撃城塞を形成。数千数万の銃器、砲台を備える攻撃専門の要塞。これを……。


「撃て!!」


一気に解き放つ、次々とばら撒かれる砲弾は敵の銃座を破壊、同時に前面に出てきた敵兵を吹き飛ばしていく。


「強ええ!あれが噂に聞く!魔女の弟子か!!」


「流石は魔女様の後継者だ!これもう魔女様と変わらねーくらい強いんじゃないか!!」


マレフィカルム軍が戦く、自軍が吠える。私は今、味方の象徴となっている、味方を鼓舞し敵を恐れさせる象徴となっている。このまま行けば我が軍はあっという間に城に到達するだろう……そう思えた瞬間。


「させるか!!!!」


「俺達が相手になってやる!!」


敵軍の城門から現れたのは大量の兵士……というには一人一人の顔ぶれに何やらただならぬ自信と威圧を感じる、あれは。


「組織のボス達だ!!みんな前線に出てきてくれた!!」


マレフィカルムという無数の組織の集合体。その無数の組織を束ねる無数のリーダー達、しかも有象無象ではない。全員魔力覚醒をしている。

全く、なんなんだ、少し前まで数えるほどしかいなかった覚醒者がこんなにいるとは。いつぞやルードヴィヒ殿が語っていた予想が当たりそうで怖いよ。


だが……。


「討ち取って見せる!魔力覚醒!!」


「遅いッッ!『大軍城拳』!!」


向かってきた二刀流の大男、そいつが覚醒の兆しを見せた瞬間、振り抜いた拳からそのまま巨大な鉄の城塞を射出。即ち城で殴る、敵がやっていた城をぶつけると言うアイデアを盗用……もとい改良した技だ。


「はっ!?城!?げぶふぅっ!?」


当然、そんなものを受ければいくら覚醒者とはいえ一溜まりもなく、周囲の敵ごとまとめて吹き飛び彼方に消える。ふむ、爽快だな……。


「マスター!ようやく、貴方に近づけた気がする」


『栄光』の魔女フォーマルハウト。その戦い方は圧倒的な物量の濁流で相手を轢き潰すゴージャス極まる戦い方。その一端に触れた気がする、物量ではなく質量によって相手を飲む。これが錬金術の本懐か!!


「さぁ全員纏めてかかってこい!私がここから先は一歩も通さん!!」


そして私は銃を杖代わりにし、地面を突きながら吠える。向かってくる組織のボス達、それを纏めて相手にする為。





「メルクさんやってますねぇ」


そんな喧騒を少し離れたところで見ていたエリスは、軽く柔軟体操を終え……。


「じゃあ、エリスも動きますか」


歯を見せ、笑う。


……………………………………………………


『師匠、結局一番強い戦い方ってなんなんですか?』


かつてエリスはそんな話をレグルス師匠にしたことがある、未だ強さを模索している最中のことだ、師匠はエリスに与える影響を鑑みてじっくり考え。


『強い、の定義にもよるな』


そう、答えたんだ。エリスはそう言う当たり障りのない答えではなく、と言うと師匠は更に。


『なら、最も効率がいいのは敵が手出しできないところから殴り続ける戦法だな』


『敵が手出し出来ないところから?』


『ああ、遠方からでもいいし、姿を隠してでもいいし、なんなら人質を取ってもいい』


『い、いや人質なんて……』


『そうか?私は取ったぞ、その方が楽だからな』


まぁそうか、確かに人質を取るのはありかもしれない。結局のところ手出し出来ない状況を作ればいいわけだしね。だが効率を追い求めるあまり非効率な手法を取っては意味がない、そもそも人質を取れるなら敵の寝首をかけるだろってシチュエーションも多いし、あまり現実的とはいえない。

そもそも師匠の強さそのものが現実的ではないのだから、あんまり参考にならないかな。寧ろなんで取ったってレベルだよ、人質を。


『まぁ私が一番得意だったのは、成層圏ギリギリを飛び、そこから属性魔術をばら撒くやり方だな』


『そんなやり方が……でもそれ防壁を張られたら終わりじゃありません?』


『そうしたら星辰魔術でブチ抜く』


『地下に隠れられたら……』


『虚空魔術で地表ごと消す』


無敵か、師匠。師匠レベルの人にそれをされたら多分全人類束になっても勝てないよ、だがあまりにも効率的。だってそれをされたら実際強力かどうかよりもパッと見た感じ突破方がないように思える。これは敵の心を折るだろうな。

まぁ今の段階のエリスには無理だが。いつか、強くなったらやってみよう。


『だがな、エリス』


『へ?』


そんな中、師匠は腕を組み、エリスをジッと見下ろし。


『それでも、効率ばかりでは回らないのが戦場だ。時には非効率な手法を取る必要もある』


『非効率……?』


『そう、そして今のが最も効率の良い戦い方だとするなら……、最も非効率的で、その上で圧倒的に強い戦法がある、それはな───』


それが、かつてエリスに与えられた師匠の薫陶、長く実践する機会を得られず、そして極・魔力覚醒を獲得しようやく実現可能になった戦法の起源。


それこそが敵が手を出せない領域から一方的に殴ること。





────黒帝城フォルミカリウスはその瞬間、最大級の警戒態勢を敷くこととなった。敵の大軍勢が目の前にいてなお発生しなかった最大級の警戒態勢、それは。


「地平より天に昇る流星を確認!!孤独の魔女の弟子エリスが動き始めました!!」


「や、やはり動くか!破滅の流星!!」


城の中で見張りをしていた兵士が隊長に報告する。それは天に昇る流星の確認を知らせるもの、同時に隊長の頬には嫌な汗が湧き上がる。


マレフィカルム側にとって、破滅の流星エリスの存在はまさしく悪魔そのものだった。


……孤独の魔女の弟子エリス。アルクカース側の逆転の目を作り上げだ絶大な力を持った魔術師。本人の国籍はアジメクながらアルクカース王族と婚姻を結び、また特定の国に肩入れすることなく動く立場なき強者。


その伝説は凄まじく齢を七歳八歳の頃から『大いなるアルカナ』と戦い、十八を超える頃にはアルカナを壊滅させたまさしくマレフィカルムキラー。

その強さはここ数年で跳ね上がっており、八大同盟を壊滅させ、つい先日はあの怪物王女クレプシドラすら打倒せしめた脅威の成長率を持つ女。


その現在の実力は間違いなく筆頭将軍アーデルトラウトに並ぶとされており、特定の国の軍に参加していないと言う特性上最高戦力にカウントされることはないものの、少なく見積もってカストリア大陸最強の座は揺るがないだろうと言うのがマレフィカルムの見解。


それが開戦初期から暴れ回ったんだ、一瞬で戦場を横断しどこにでも現れ抵抗も許さない強さで壊滅させる。止める手段がほぼ存在せず、軍人ではない為指揮系統の乱れにも影響されないある意味生きた災害のようなもの。


そして先日の戦功、『十分でマレフィカルム側の要塞を十二個陥落させた』。これがエリスに破滅の流星の渾名を付けさせる確たる要因となった。


今回の大軍団がフォルミカリウスを包囲したこの瞬間においても、マレフィカルム側はエリスがいるとかどうかを個別の注意項目として捉える程には警戒しており、そして事実として現れた。


「どうしますか隊長!対空魔防壁の展開を試みますか!」


「聞けば、防壁は貫通されるらしい。そもそも魔術による相殺も不可能に近いと言われている……」


エリスが来た時点で損害は確定、それがゴルゴネイオンの出した答えだった。だが……ダアトは言った。


「だが、急ぎダアト様の仰られたものを展開しろ!」


「あ、あれですね!了解!!」


そうしている間にエリスは雲よりも高く飛び上がり、フォルミカリウス上空を旋回。グルグルと周りながら魔力を高めている。

悪夢、その二文字が過ぎる程の魔力量、空飛ぶ怪物がこちらを見ている。そんな感覚に襲われた……その時だった。


「来た!!」


天候が変わる。圧倒的な熱がばら撒かれ雲が蒸発、天に穴が開く。それと共に空を赤く染める力の炎雷が一斉に到来、終わりを予感させる景色の中。


「『避雷砲』!発射!!」


フォルミカリウス上部からばら撒かれるように放たれたのは無数の鉄球、それも拳大の鉄球だ、とてもじゃないがエリスの魔術を防げる代物ではない……が。


「やはり!雷だから鉄に引き寄せられるんだ!!」


雷の軌道が曲がり、次々と放たれた鉄球に吸い寄せられ爆散していく。エリスの攻撃は基本的に属性魔術、どれだけ凄まじくとも属性魔術の基本であるレジストを心がければある程度の弱体化は望める。


ダアトの語った策が見事にハマった!


「よし!これならいける!!」


「報告!!エリスに動きが!!」


第一波を防いだ、そう隊長が拳を握ったその時。自身の魔術が防がれた事を感じたエリスは……超上空からの魔術爆撃を第二のフェーズに移す。それは未だ誰も見たことがないステージ、それは。


「な、何をしてるんだ」


高速で旋回しているエリスが、停止した。上空でエリスの動きが止まり……ある場所で構える。それはフォルミカリウスの前方上空、そこでピタリと止まったエリスは。


「な……」


「嘘だろ……」


兵士達は愕然とする、隊長は頭を抱える。それは絶望するほどの魔力量を持っていると思っていたエリスが、更に数段上の魔力を放出し始めたからだ。


エリスを中心に集まる光はやがてエリス自身を覆い尽くし、それでも止まることなく拡大。巨大な光の玉となり、やがてそれは炎雷の塊へと変ずる。その様はまるで……。


「太陽……?」


そこに出来たのだ、新しい太陽が。大地を焼き尽くし、強く光を照らす太陽。それが巨大な魔力の螺旋と共に生み出されなおも巨大化していく。


その時マレフィカルムは悟る。先程エリスが行っていた攻撃、あれは我々に取っては致命的な一撃だったが……エリスにとってはそうではなかったこと。


先程までのはエリスにとって速射連射重視の『ジャブ』。そしてこれから来るのが……フルチャージで放たれる正真正銘の最大火力。本物の火雷招である事を。


「終わった」


思わず誰かが呟く。あれは鉄球による避雷針など関係ない、純粋な熱の塊が飛んでくるのだ、防ぐ術は存在しない。


唯一存在する対抗手段は、チャージに専念するエリスを今から叩いて止める事だが、あんな上空にいるエリスを攻撃する手段などない。


「ここまでか!!」


膝を突き、自分達の快進撃が終わったことを悟る。エリスという存在一人に全てを崩された。最早打つ手なし、そう……誰もが諦めた。


この男以外の、誰もが。


「ならばここからは私が請け負う」


「ッホプキンス様!」


エリスの放つ光に叛逆するようにキラリと光を反射するスキンヘッドをぺチリと叩いたのは『第三星神』ホプキンスだ。


「むぅううん!参る!」


そして両手を合わせたホプキンスが放ったのは。


「『トリキュミアコミティス』ッッ!!」


裂帛の気合い、そこから放たれた魔術は一瞬で世界の光景を変える、ホプキンスは恐らく現代魔術史上最大の規模を持つ魔術の一つと言われ、アーデルトラウトの『タイムストッパー』に匹敵する規模感を持つ唯一の御技と言われる……『星間魔術』を発動させる。


それは突如として天を裂き、現れる。山のように巨大な大岩。即ち……隕石だ。


「ほ、ホプキンス様!大きすぎます!あれが地面に落ちたら我々ごと!!」


第一級禁忌『星間魔術』。星の力を借りる星辰魔術の数ある亜種の一つ、星辰魔術の威力だけを再現した銀河魔術に並び立つもう一つの星の魔術。それこそが星間魔術。


魔力によって宇宙空間の隕石を捕まえ、引き寄せる。或いは生成する魔術。その規模は明らかに人類が扱っていい領域を超えており、存在そのものが秘匿される第一級禁忌の扱いを受けている存在。


それを、なんの躊躇もなくホプキンスはエリスに向けて放ったのだ。


あれが落ちたらそもそもアルクカースを倒す倒さないの前にこの星が滅びる、そんな予感さえ感じさせる規模の隕石。だが……。


「見ていろ、エリスはこれを放ってはおかん!」


そのホプキンスの言葉通り、エリスは突如として狙いをフォルミカリウスから頭上の隕石に変え、チャージした火雷招を遠慮なくぶっ放した。


その熱線は天に昇り、一瞬で隕石を貫通、真ん中に巨大な穴を開けたその瞬間……隕石は内側から赤熱し大爆発。跡形もなく吹き飛んでしまったのだ。あんなものがこちらに向けて放たれるところだったのかと兵士達は顎が外れるほど口を開けて驚愕する。


「フッ、どうだ。破滅の流星、お前がその手を使うなら、こちらも玉砕覚悟でいかせてもらう。どのみち防げなければ死ぬことに変わりはないのだからな」


ホプキンスの狙いはそこにあった、結局防げなければ死ぬ、であるなら自身の命を天秤に乗せ賭けに興ずること。エリスとてあの隕石が落ちる事を承服しない。


確実に止める、その為にはフルチャージの火雷招を使わねばならない。つまりエリスは実質フルチャージ火雷招を封じられたのだ。


「さて、次はどう出る」


火雷招の掃射、一撃必殺の火雷招も封じた。さて次はどうする、ホプキンスがそう問いかけた瞬間。エリスは答えるように動き出す。


「は、破滅の流星移動開始!進路は……」


「ここか!」


瞬間、エリスは莫大な加速にてこちらに向けて飛んでくる。高度の有利を捨て敢えて突っ込んでくる。その胆力の良さにホプキンスは笑いながらも。


「十天魔神に通達しろ!あと数秒後に!魔女の化身が来るぞ!!」


「数秒じゃ無理です!!」


そんな叫びが木霊するその時、超加速したエリスは……数多の銃座や魔術砲撃の雨を弾き返しながらフォルミカリウスのど真ん中に突っ込み、壁を粉砕して内部に入り込んできたのだ。


そして、それはなんたる奇遇か。




「おいおい、嘘だろ」


「最悪ぅ〜〜!!」


フォルミカリウス中腹の大規模待機場。これから出撃する兵士達が待機するその部屋に、ガラガラと瓦礫を降り注がせ突っ込んできたエリスは……。


「師匠の言った通り、こっちの方が間怠っこしくなくていいや」


睨む、偶然……否、あえてエリスが狙いを定めて突っ込んだ先に待機していた。


「ここに来るかよ!」


「ブラッド先輩やばいよーー!!」


「アーイエー、こりゃ、デモンズの後を追うことになりそうだぜぇメーン」


「……チッ」


十天魔神、デモンズ、シャカリキ、サルニッタ、即ちここまで敗北してきた者以外のゴルゴネイオン主力の集まる場所で、エリスは標的である十天魔神を睨む。


それは、魔女レグルスの語ったもう一つの戦法。


『結局真正面から突っ込んで全員ぶっ殺すのが一番早い』


と言う、必勝戦法である。


「全員ここでぶっ潰しますので、悪しからず!!」


「チッ、上等だ……」


「野郎!よくもデモンズを!!」


前面に立つのはジョバンニ、バディスタ。そして。


「むぅ、やべぇ〜……死ぬかも」


「頼むぜバフォメット、こりゃ魔神総出で挑まないと終わりだ」


「燃えてきたぜメーン……!」


「デモンズパイセンもサルニッタパイセンもやられたのにアタシで勝てんの〜!?」


『第四魔神』バフォメットは冷や汗を、『第五紅神』ブラッドは焦りを。『第七暴神』デスペラードは闘志を、そして『第十食神』ペティは絶望を。それぞれの感情を覗かせながらも迎撃の姿勢を取る。


天下無敵とまで言われた十天魔神が六人も集まりながらも、なおも勝算薄き戦い。そんな絶望的な戦いの中エリスは身を低く屈ませ。


「やりましょうか」


浅く、ただ浅く、不敵に笑う。


…………………………………………………


「進め!城門まであと少しだ!!」


エリスが敵城に飛び込んだ、城に大穴が開いた。あと少し、もう少し進めばこちらもエリスの援軍に行ける。そう考えたメルクリウスは味方を鼓舞しながら敵の海を弾き返していく。


「『千人役者・莫逆のコロス』!!」


「『絶影のキアロスクーロ』!!」


千人に増えたナリアの大行進が敵を薙ぎ倒し、漆黒の魔力を刃に纏わせたマリアニールの乱舞が敵を吹き飛ばし、そしてメルクリウスの砲撃が敵を叩き潰す。想定していた十天魔神の出撃はない、これならいける。


既にクレアとアーデルトラウトは別方面から叩いている、これなら或いは……ラグナの奇襲がなくともなんとかなるかもしれない。


「いけるぞ!」


そうメルクリウスが叫んだ……その時だった。



「いけません」


「は?」


その瞬間だった、天から飛来した光が音もなく大地に着地、メルクリウスの背後に降り立つと。


「『速の型・一閃』!!!」


「ごはぁっっ!?!?」


一撃、予見することすら不可能な攻撃が振り向いたメルクリウスの腹に叩き込まれる、小型の城壁を纏い防御力を上げていたのに、一撃でそれは粉砕され、メルクリウスは地面に転がる。


「ぐっ……なんという威力!」


「メルクさん!無事ですか!」


「ッいかん!ナリア君来るな!」


既にメルクリウスに一撃を当てた存在は乱戦に紛れて消えており姿が確認出来ない。そこで駆け寄ってきたナリアの背後に……その黒外套は現れ。


「『剛の型・隆砕』!」


「ガッ!?!?」


その脇腹目掛け鋭い蹴りを加え、口元から血を吐かせると共に吹き飛ばす、一撃。それも覚醒していない状態でこのスペック。あり得ない程の強さを持ちながら魔力を感じさせない特異体質。


この恐ろしい影に覚えがある、メルクリウスはそう歯噛みしながら……立ち上がる。


「貴様、ダアトか!」


「ええそうですよ、見識持ちのメルクリウスさん、貴方も若干識の才能があるようですね、まぁ私の予測を狂わせる程度ではないので助かりますが」


「何故貴様がここに」


現れたのは敵方最高戦力の一人『知識』のダアト、その出現は完全にメルクリウスにとって寝耳に水、エリスが動けばそちらの対処に動くだろうと考えていたダアトが、エリスを放置して前線に出てきた。その事実に戦慄する。


「貴様、ッッ!サトゥルナリアは我が友の残した子、それを傷つけるなど許さんッ!!」


瞬間、マリアニールが絶閃の踏み込みで背後に立つ、ダアトの背後に立ちその剣を振りかぶり……。


「悪いですが、私は今回エリスさんの対処に当たりません、そもそもエリスさん係ではないので」


「ガッ!?」


踏み込んだところに配置されていたダアトの拳に打たれるマリアニール、ダアトは一瞥すらせず拳を数度振るい。


「それより貴方達を全滅させた方が戦力的価値は高いでしょう?」


「ぐっ!?ガハッ!」


一撃で剣を弾き、二撃目で腹を打ち、三撃目で顔を打ち。そのまま飛び上がったダアトは……。


「『剛の型・爆脚』!!」


「ぐぶふっっ!!!」


爆裂する勢いの蹴りを、魔力による衝撃で強化した一撃を、マリアニールの頭上から放ち、地面に埋める。その上に着地しコートを着直し。


「さて、やりましょうか」


(この一瞬でナリア君とマリアニール団長がやられた……相変わらず凄まじい強さだ、だが)


メルクリウスは極・魔力覚醒を維持したまま、構えを取る。ダアトは強い、強いには強い、だが。


「ホドと戦えた自分なら、或いは時間稼ぎくらいは出来る。そう考えていますね」


「ッ!」


「図星のお顔ありがとうございます。まぁなんでしょうね、ホドは私に次ぐ実力者ですし、確かにめちゃくちゃ強いですが……」


コン、と銀の錫杖で地面を突き、関節を鳴らすダアトは……。


「ホドと互角に戦えて勘違いしてるようですね。私、これでもちょっと前まで……『マレフィカルム最強』って言われてたんですよ、もうバシレウス様に譲りましたが」


浅く、ただ浅く、不敵に笑う。

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破滅の流星………ドラゴンか何かかな?しかもちゃんと物理的に破滅の流星できるのバグだろ……… そして師弟揃ってどっちも蛮族⭐︎ あの師匠あってこの弟子だな……… やっぱ識確の力が封じられていないダアト…
マレフィカルム四倍特攻持ちのエリスさん改めて年齢遍歴聞くと天敵ってレベルじゃないよもうw 隕石ならもっとやばいのクレプシドラがやってたから予習復習もバッチリですな 雷には避雷針!でレジストされて続…
結論エリス強い どんだけメタ張っても純粋な暴力で黙らせてくるから無駄という レナちゃんはどこに行ったのか…… ダアト対メルクさん!! 識を乱さない以上メルクさんに勝ちの目はなさそうですね。
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