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魔法使い宣伝番  作者: あき
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その男、少女の御使いに出掛ける 其の一

お久しぶりです。

生きてます。

今日も、俺は掲示板の横で番をしている。

ここ暫くは依頼も無く、本を読みながらのんびりと一日を過ごしている。


いやー、これが本来の宣伝番の役割なんですよ。

雨の日の番は、寒さが骨に沁みるほど辛いが、もう一週間近く晴れが続いている。

要するに、番をするのにうってつけというワケ。


「ふんふーん」

鼻歌混じりに掲示板周りの掃除をし、本日の仕事は終了! と役所に戻ろうとしたら、一人の少女が掲示板の近くでうろうろしていた。


ファンタジアでは珍しい黒髪を、ツインテールにした可愛らしい少女だ。見馴れない顔だから、もしかするとこの前リンゴが話していた、この村に引っ越して来た一家の子供かもしれない。


「どうしたの? 道に迷った?」

営業用スマイルで、俺は少女に話しかける。

お前の微笑んだ顔は、接待に向いている! と村長にこの前褒められた顔で。


「え、えと……。この村の、宣伝板って……ここ、ですか?」

少女の声は、鈴を転がしたかのように爽やかな声音だった。

正直、専門家の下で適切な指導を受ければ、歌手も目指せるかもしれない。……いや、確実になれるだろう。


「ああ、うん。そうだよ」

それで俺は分かった。

彼女は依頼主だ。まずは彼女から、俺がただの民間人であることを分からせて、この村の誤解を解くんだ!


「依頼かな? ん~でもごめん、今日はもう終了なんだ。明日また来てくれる? 俺も早起きして待ってるから」

と、言うと女の子は目を潤ませ、ちょっと泣きそうな顔をした。


急ぎの用事だったかな? でもまあ、次に魔法使いさんが来るのは五日後だから、どんなに急ぎの用事でも、暫くかかるし……。

まあ、いいか。


「オーケー。じゃあ今回は特別に、依頼を聞いて上げよう」

そう言うと、女の子は途端に笑顔になった。


「名前と、依頼の内容を教えてくれる?」

笑顔というのは、見ている側も自然と幸せになれる。

どうやら俺も少女の笑顔を見て、上機嫌みたいだ。

……これがあるから、この仕事を辞められないんだよな。


「えっと……、名前は、ヒスイ。あの、本を買ってきて欲しいの!」


「本? 何て言うタイトル?」


「えっと、"漢の掟"っていう漫画……です」


「へ、へぇ……随分熱い感じな本だね」

彼女の見た目からは想像できないタイトルだ。度肝を抜かれた。


「あ! 違くて、お兄ちゃんのお誕生日プレゼントで!」

ああ、成る程。そういう訳か。

誕生日プレゼントを贈るなんて、なんて良い子なんだろう。

うちの妹なんて、俺の誕生日に汚れ物を渡してきたぞ。

『兄ちゃん今日、掃除当番だよね!』って……。


「あの………明後日が誕生日だから……急ぎでお願い……します」

ヒスイはもじもじと、恥ずかしげに言った。


え? 明後日?

本屋は山を下った中規模の街にはあるが、この村にはない。

勿論魔法使いなら、箒を飛ばせば三十分で依頼は済む。

が、民間人なら三日はかかるだろう。おまけに、夜の山は危険だ。魔物が活発に動くのは、主に夜間帯。強力な種族も現れるため、ド田舎のこの村の山でも十分に危険。


「お金沢山払いますから、お願いです! "魔法使いさん"!」

本当は魔法使いじゃないし、自ら危険を犯したくない。

俺は魔法使いじゃないと言えば済む話なのだろうけど。


けれども、懸命にお願いするヒスイを見てたら……。


「じゃあ、明後日のお昼頃持ってくるから、役所で待ってて」

今夜は夜通し魔物狩りになりそうだ。

あと、俺は魔法使いじゃねぇ!

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