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妖怪戦国記  作者: 大沢月
出会い編
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8/9

恋した姫

 城に戻ってすぐに冬代に連れて来られたのは、所謂『奥』と呼ばれる場所の境目の廊下だった。ここは普段、女ばかりが出入りしているため、勘九郎は落ち着かなくて周りをキョロキョロと見渡す。

「ちょっとここで待ってて」

「え!ちょ、ちょっと待「パタン」

 とある部屋の前で止まると、冬代は勘九郎の言葉を最後まで聞かず、その部屋に入る。一人残された勘九郎はただ部屋の前で待っているしかなかった。

(お願い!早く出てきて〜)

 その時、部屋の襖が開き、中から冬代が出てくる。

「お待たせ!この子がさっき話した妹の春代」

 冬代は背中に隠していた妹―春代の手を引っ張ると、勘九郎の前に出す。

 春代も兄と姉に負けず劣らず美しい顔をしていた。冬代より大人っぽい顔つきで、ぱっと見、春代のほうが姉に見える。冬代と同じく、腰まである長い髪の髪先をくくり、着替えた冬代と色違いの華やかな着物を着ていた。

「初めまして。松野春代と申します」

 春代は勘九郎に向かって礼儀正しく頭を下げる。ギョッとした勘九郎は、慌てて「面をお上げください!」と言う。それを聞いて、春代は頭を上げる。その時、二人の目がバチッと合う。春代は勘九郎の顔から目が離せなくなっていた。

 髪先がうなじにくるようにくくられた黄土色の髪。何処にでもいそうな庶民的な顔。なのに春代は胸が高鳴って仕方なかった。これぞ所謂『一目惚れ』というやつだ。

「春代?どうしたの?」

 冬代が固まった春代の顔を不思議そうにのぞき込む。春代はそんな冬代のことなどお構いなしに勘九郎の手をとる。

「あの!私と祝言を挙げませんか?」

「はい!?」「ええ!?」

 突然の春代の言葉に勘九郎と冬代は同時に声を上げる。

「春代!何言ってるの!?」

「そ、そうですよ!いきなり祝言って」

「この人はあたしの顔を見て笑ってきた意地悪な人だよ!?」

「そこ!?」

 冬代のずれた指摘に勘九郎は猛スピードでツッコミを入れる。春代はそれらに応じず、「私は本気です」と真剣な眼差しで勘九郎を見る。

「と、兎に角!姫様と祝言は挙げられません!」

 勘九郎が悲鳴気味にそう叫ぶと、春代は「まあ、そうですよね。すみません」と言って勘九郎から離れる。

「私、初めて一目惚れというものをしたのもので、つい」

「ひ、一目惚れ!?私に!?」

 春代の言葉に勘九郎は自分を指差しながら顔を赤くする。勘九郎も一目惚れをしたと初めて言われたのだ。

「でも春代、元服したばかりでしょ?祝言はまだ早いってきっとお兄様言うよ」

「尚更無理です!」

 冬代の言葉を聞いて、勘九郎は改めて断りを入れる。すると、「ようやく帰ってきたか」と怒気の籠もった声が聞こえ、三人が驚いて振り向くと、そこには般若のような顔をした藤十郎がいた。その姿を見た瞬間、冬代はダッと走りだした。それを藤十郎が追いかける。勘九郎が唖然と二人が走り去った廊下を見つめる中、これが日常茶飯事なのか、春代はまたかといった様子で「はあ」とため息を吐いた。そこに「待て!殿!」と言って七兵衛が現れる。

「藤・・・殿、何処に行ったか知ってます!?」

「ああ。お兄様達なら向こうに」

 春代が二人が走り去った方を指差すと、「あいつ、また冬代様を追いかけ回してるな」と頭を抱えてすぐ走っていく。年齢の割に体力があるのを勘九郎が驚いていると、七兵衛が振り返って「勘九郎君、次は掃除よろしく」と言う。そんな七兵衛の言葉に勘九郎は「は、はい・・・」と頷くしかなかった。

大分カオスな話しになりました。勘九郎は相変わらず置いて行かれていますね。

次回は新キャラが二人でます!お楽しみに!

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