二人の忍
「藤十郎様達、一体何処まで行ったんだろう・・・」
勘九郎は物置小屋から取ってきたほうき片手にそんなことを呟いた。
(七兵衛様が追いかけていったから大丈夫だろうけど、冬代様、藤十郎様に泣かされていないだろうか)
般若のような顔で冬代を追いかけた藤十郎を思い出して、勘九郎は気がかりに思った。そんなことを考えながら勘九郎はある部屋に入る。畳を踏むと、突然畳が浮き、勘九郎は「うわああああ!」と悲鳴を上げて腰を抜かす。落ち着いて見ると、畳から顔人形が飛び出して、勘九郎の足元に落ちていた。勘九郎はすぐに偽物だと認識できず、また「うわああああ!」と悲鳴を上げる。
「くくく、首〜!」
「あはは。驚きすぎ」
突然天井から声が聞こえて、勘九郎は驚いて見る。すると、そこから「よっと」と人が畳に着地する。それを見て、勘九郎はまた「うわああああ!」と悲鳴を上げる。
「て、ててて天井からひ、人が」
「人を化け物みたいに言うなよ!」
その人は少し怒った顔をした後、勘九郎のあまりの驚きっぷりを見て、「あはは!」と今度は豪快に笑う。
「どんだけ驚いてんだよ。あ〜おもしろ」
「そ、そんなに笑わなくったっていいじゃないですか!」
その人の笑い声に今度は勘九郎が怒る。
「あ〜っと、敬語じゃなくていいよ。俺達歳変わらねえし。俺、『北条時光』。よろしく、勘九郎」
そう言って人―時光が手をさしだす。またもや名乗っていないのに自分の名前を知っていたことに勘九郎は手を取りつつ首を傾げる。
「あの、どうして私の名前を知って・・・」
「ああ。だってお前のこと調べたの、俺だし」
「え?」
時光があっけらかんと答え、勘九郎は逆に混乱する。
「俺の仕事って、そういう仕事なんだよね~。あ、ちなみに忍者って言う仕事なんだけど」
「に、忍者???」
聞き馴染みのない言葉に勘九郎は戸惑う。忍びというものは、普段は素性を隠しており、庶民はもちろん忍びという仕事など知るよしもないのだ。無論、庶民出身の勘九郎が知るはずもない。
「まあ、それは追々・・・っていうか、敬語いらねえって言っただろう。俺も勘九郎って呼ぶし」
「え!?じゃ、じゃあ、時光さん」
「年上にさんづけされるの、なんか違和感あんな。呼び捨てでいいよ」
「よ、呼び捨てはちょっと・・・って、僕より年下!?」
時光がサラッと言った言葉に勘九郎は驚きを見せる。
「ああ。俺、十六だから。お前は確か十七だろ」
「そ、そうだけど・・・」
何もかも時光に調べられていて、勘九郎は微妙な顔を浮かべる。
(ちょっと怖い!)
「あはは。そんな驚く?」
「だ、だって時光君、大人っぽいんだもん」
「そう?」
時光はそう言って自分の姿を見る。おろしたら毛先が肩までしか無さそうな深緑色の髪をうなじ辺りで結び、服は全身黒。顔は少年らしい顔つきだが、確かに雰囲気は大人そのものだった。
「ってか、やっと名前呼びじゃん!嬉しい」
「や、やっとってほどじゃないけど」
時光が弾ける笑顔でそう言い、勘九郎も釣られて笑う。その時、時光の背後から誰かが現れて、いきなり時光の首に関節技を決め始めた。驚いて見ると、そこには時光と同じ格好をした女がいた。背は高く、しなやかな黒い髪はしっかり結ばれているのにも関わらず、腰の付け根まであった。歳は勘九郎より年上だろうか。
その女は唖然としている勘九郎を見つけると、首を絞めている方とは反対の手をひらひらと振る。
「やっほー勘九郎。私、こいつの同僚の『山田花子』。よろしくね〜」
「は、はい」
その女―花子の言葉に勘九郎はただ頷くしかなかった。一方の時光は首を絞めている花子の腕をバンバンと叩く。それに気づいた花子が手を離すと、時光はハアハアと勢いよく呼吸する。
「何すんだ!花子!」
時光が花子に向かってそう叫ぶと、花子は「はあー!」と時光を睨みつける。
「あんたが御殿中に絡繰を仕掛けまくるからでしょ!殿や姫が怪我したらどうするの!?」
「怪我するような絡繰なんか仕掛けてねえよ!それに組頭からも許可が出てる!」
「組頭はあんたに甘いからでしょ!兎に角早く撤去しなさい!」
「ぜーったい嫌だね」
二人の間に火花が飛び散る。その光景を見て、勘九郎は巻き込まれないように、忍びもびっくりな速さで部屋を去った。
次回で新キャララッシュも最後!最後はどんなキャラが初登場するのか!?
お楽しみに!




