新生活
「まあ、覚えることと言ってもそんなに無いが・・・。戦のときにちょっと走ってもらったり、御殿の掃除をしてもらったり、そのくらいだな」
「は、はあ。ところで殿「殿ではなく、藤十郎と呼べと言っただろう!」
「す、すみません!えっと、と、藤十郎様。今私たちは一体何処に向かっているのでしょうか?」
今2人がいるのは主郭周り。そこは小屋が陳列されていて、小さな街のようだ。
「何処って・・・。決まっているだろう!お主の新たな住まいだ」
「は、はい!?」
藤十郎の言葉に勘九郎は目を見開く。
「住まいって・・・。私、まだここで働くなんて言ってませんよ!」
勘九郎は必死にそう言うが、藤十郎はお構いなしに進んでいく。
しばらくすると、2人はある小屋にたどり着く。そこは掃除されているようだが、何処か埃っぽい。天井からドンドン音がしたと思ったら、板の隙間から鼠が落ちてきて、うどん屋育ちの勘九郎は「ギャーー!」と悲鳴を上げて藤十郎に飛びつく。
「あっははははは!お主には刺激が強かったのう」
勘九郎の反応を見て、藤十郎はおかしそうに笑う。そんな藤十郎を見て、勘九郎は藤十郎に飛びついていたことに気づき、高速で「すみません!とんだご無礼を!」と頭を下げる。
「別に構わん。なんだか弟が出来たようで新鮮だからな」
「え?弟、いないんですか?」
勘九郎がつい興味本意で聞くと、藤十郎は「ああ」と答える。
「生憎、弟というものはいなくてな。姉と妹ならいるんだが・・・」
「へぇ~・・・。ところで藤十郎様、私、本当にここに住むんですか?」
勘九郎が話題を変えると、藤十郎は「ああ!」と自慢げに頷く。
「儂が半刻かけて掃除したんじゃ!儂にしてはよくやったと思うぞ」
「半刻!?かけ過ぎじゃ・・・」
「家事というものには慣れてなくてのう。許してくれ」
藤十郎が茶目っ気たっぷりの笑顔で言うのを見て、勘九郎はため息をつく。いつの間にか勘九郎はこの顔に弱くなってしまった。
「・・・私の負けです。大人しくここで働きます。ですが一度実家に帰ってもよろしいですか。両親への報告と身ぐるみを持ってくるので」
「ああ。構わんぞ」
「ありがとうございます。ああ、後、掃除もわざわざありがとうございました」
勘九郎はそう言って主郭を離れた。すると突風が吹いて、2人の着物を揺らしていく。その時、勘九郎の腕がチラッと見えて、藤十郎は首を傾げる。
(おかしいな・・・。あの腕にはあのときの火傷があるはずなんだか)
その腕には、そこにあるはずの火傷跡が無かったのだ。
次回は新キャラクターが登場!しばらくは新キャララッシュが続きます。
お楽しみに!




