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妖怪戦国記  作者: 大沢月
出会い編
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3/9

再開

 数日後、勘九郎がいつものように店の仕事をしていると、母が「勘九郎、休憩入っていいわよ」と声を掛ける。

「え〜。まだ拭き掃除終わってませんよ」

 勘九郎が遠回しに断るが、母は「何言ってるの!休憩も立派な仕事よ」と反論する。

「でも、まだ人が・・・」

「これくらいの人数なら私達でも回せるから大丈夫!」

 母の言葉に勘九郎はグルッと辺りを見渡す。確かにもう昼時を過ぎたからか、客足はまばらだった。でも、自分だけ休憩するのは忍びない。父の意見も聞こうと厨房を見ると、父も母の意見に賛成らしく、勘九郎を見て、コクッと頷いていた。それを見て観念した勘九郎は「分かりました」と言って腰布と頭巾を脱ぎ、のれんをくぐって外に出る。その時、「ようやく出てきたか!」と言う声が聞こえて、見上げると、そこには笠を被った2人組がいた。その2人組の内の1人の顔を見て、勘九郎はギョッとした。

 その1人はこの国の殿だったのだ。

「えーっと・・・。み、店なら開いてますよ〜」

 勘九郎は見なかったことにして、立ち去ろうとした。だが、殿相手にそんな嘘は通じず、逆に顔を近づけられる。

「お主、この前会っただろう。まさか忘れたなんて言わないよな」

「ど、何処で会いましたっけ」

「街の中心街だ。お主、その時儂の身体を押し倒しただろう」

 あのときか!と勘九郎は記憶を呼び起こす。 

(まさかあのときの旅人が殿様だったなんて・・・)

 勘九郎の身体から一気に血の気が引いていく。気づかなかったとはいえ、無礼なことをしてしまった。

「も、申し訳ありませんでした!ご無礼をお許し下さい!」

 勘九郎はそう一息で言い、勢いに任せて頭を下げた。

「ほお。どうやら深く反省しとるようじゃのう。だが、罰は受けてもらうぞ」

「は、はい!何でもいたします!」

 勘九郎は頭を上げることができないままそう返事をする。そのため、殿の顔がいたずらに笑っていたことには気づかなかった。

「来い!」

「へ?」

 突然殿に腕を取られ、勘九郎は反射的に顔を上げる。そして、そのまま2人一緒に走りだす。

「ああ!ちょっと!殿!?」

 置いて行かれたもう一人の男が慌てて追いかけて来る。だが、殿はそれに構わずひたすら走る。

「あ、あの!一体何なんですか!?殿!」

「殿じゃなくて良い!儂の名前は藤十郎だ!そう呼べ!」

 そう言って殿―藤十郎は楽しそうに笑った。


次の話では、舞台が城に変わります。

お楽しみに!

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