出会い
裏庭から戻ると、母が勘九郎に気づいて声をかけてきた。
「勘九郎。遅かったじゃない。一体何してたの?」
「水汲むのに手間取ってて・・・」
勘九郎は母の言葉に苦笑いを浮かべながら水たっぷりの桶を置く。横を見ると、勘九郎の父がうどん生地を切っていた。その手さばきは見事なもので、勘九郎は目が離せなくなった。
「あれ?吉郎様、鰹節は?」
母が父のそばに置いてある笊を指す。この店では、うどんの出汁に鰹節を使っているのだ。父はそれをチラッと見ると、すぐに視線を戻して、「あー・・・。忘れてた」と言う。
「え!?嘘でしょ!?早く買いに行かないと店行っちゃいますよ!?」
母が悲鳴気味にそう言うのを聞いて、勘九郎は「僕が行きます!」と言って、笊片手に飛び出した。その時、母の「気を付けて!」と言う声が聞こえた。
街の中心はもう日が落ちるというのに、昼時とさほど変わらない賑わいを見せていた。その中を勘九郎はキョロキョロと見渡す。
(何処にもいない。やはりもう行ってしまったのだろうか)
勘九郎家族御用達である魚屋は移動式で、いつも決まった時間に決まった場所にいるのだが、今日はいつもより遅く買い出しに出てしまったので、もう行ってしまったのだろう。そう悟った勘九郎は、諦めて帰ろうとした。その時、ガラガラという荷台の音が聞こえた。魚屋の音だ。そう確信した勘九郎は顔をパアッと上げ、振り向いた。だが、勘九郎の目に入ったのは、魚屋の先の光景だった。そこに妖がいたのだ。しかもその妖は2人組の旅人の一人に迫っていた。
「危ない!」
勘九郎はそう叫び、笊を放って走りだした。その声に旅人は振り返った。その時、勘九郎は旅人の肩を掴み、2人一緒に倒れる。そんな勘九郎に旅人は驚いた。
「お、お主「大丈夫ですか!?」
旅人の言葉を勘九郎は遮る。勘九郎のあまりの必死さに旅人は「あ、ああ」としか言えなかった。その時、勘九郎の腕に激痛が走る。見ると、そこには火傷があった。妖にやられたのだと勘九郎はすぐに分かったが、そんなことを知るよしもない旅人は驚いて声を掛けた。
「お主、そのや「気にしないでください」
勘九郎は火傷を手で隠しながら、誤魔化すように笑い、「怪我がなくて良かったです。では、私はこれで」と言って、旅人のそばを離れた。
「おい!大丈夫k・・・ですか!?」
もう一人の旅人が心配そうに声を掛ける。だが、その旅人は反応せず、勘九郎が去って行った方を見つめた。
「七兵衛、帰るぞ」
「は!?」
七兵衛と呼ばれた旅人は、素っ頓狂な声を上げた。
「何言ってるんですか!?茶会は!?」
「茶会より興味深いものができた」
そう言う旅人は、楽しそうに笑った。
次の話では、勘九郎と旅人が再開する・・・かも!?
お楽しみに!




