第16章 帰り着く場所
師走二十一日。朝六つの鐘が鳴り止むと同時に、北門の重い扉が内側へ引かれた。雪をかき分けるように現れたのは、門番のトマスだった。白い息を吐きながら、若い目が一行の顔とそりの荷を順番に見ていく。
「……なんだ、この人数は」
「迎えに行ったら、こうなった」とダリオは言った。
トマスはそりの上で青白くなっている若い男と、その肩を支える初老の商人を見た。それから、小箱を抱えた灰色の外套の隊員と、足を引きずりながらも背筋だけは伸ばしている徴税役を見る。
「税の御方も」
「生きてるよ。足は棒みたいだが」
空から鴉が一羽降りてきて、門の上の狭間に止まった。トマスがぎくりと身を引く。ケスは羽をぱたぱたと鳴らして、何も言わずに街の中を覗きこんでいた。
「入りたまえ」とトマスは慌てて門を大きく開けた。「中の道の方が、雪がないぶんそりが通ります」
「卵はありましたか」と、彼は続けて小声で尋ねた。
「荒れ野に鶉はいない」
「そうですか」
一番後ろで、ガズが門の石に手を当てていた。それから首を振った。「冷たい」とだけ言った。
門の内側には、早くも人だかりができかけていた。誰かがそりのそばを覗きこみ、隊商の老人の名前を呼んだ。老人は泣きそうな顔で、それでも笑った。
街の中は、雪解け水と泥と馬の糞の匂いがした。一週間の純白の雪原のあとで、その濁った臭いが奇妙に懐かしい。石畳の感触が足の裏に戻ってくると、ダリオは肩の傷が急に重く感じられ始めた。
*
錆び釘亭の扉を押すと、湿った暖かさと煮込んだ肉の匂いが顔にぶつかった。
マスターがカウンターの中から顔を上げ、手ぬぐいを肩で直した。
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
長椅子に腰を下ろすと、関節の奥で軋むような音がした。
マスターは言葉少なに、熱々の煮込みと、泡の立った麦酒を運んできた。ダリオの巻かれた左肩を見て、何も言わずに湯冷ましの杯をひとつ添えた。
「煮込みは、今朝から火にかけたままでございます」
湯気が立ちのぼる鍋。赤い蕪と、柔らかな羊肉。表面に浮かんだ脂がゆらりと揺れ、ぷつりと割れる。その湯気が湿った空気の中でゆっくりと上昇し、天井の煤けた梁へ消えていく。ダリオはしばらく、その白い煙を眺めていた。
スプーンを口に運ぶと、塩気と脂が飢えた胃袋にじんわりと染み込んでいく。
「美味い」
「当然でございます」
隣のテーブルでは、ベルントが息子ヨーストに湯冷ましを飲ませていた。ヨーストは足を椅子の上に伸ばし、顔色はまだ悪いが、目だけは生き返っていた。壁際の席では、隊商の老人たちが黙って煮込みをすくい、時々安堵のため息をついていた。ケスはカウンターの上の梁に止まり、目を半分閉じて、湯気に羽を暖められていた。ガズは竈のそばの石の上に、尻尾を丸めて座り込んだ。
*
ベルントがテーブルを回ってきて、銀貨十枚を数えてダリオの手に乗せた。
「捜索の礼だ。約束どおり」
「受け取っておく」
「金貨の袋は、そちらの机に置いておきます」そう言って、彼は息子の肩を支えて席へ戻った。話す前に、荷の紐を一度だけ触っていた。
リナはカウンターの端に座り、金貨を並べていた。前払いの残りと、ベルントの袋から分けた、自分の取り分だ。
「金貨八枚……」彼女は声に出して数えた。「一枚が銀貨二十枚。つまり銀貨百六十枚。銅貨に直すと三千二百枚……」
指を折り、眉をひそめる。
「麦酒が一杯銅貨五枚……三千二百を五で割ると……六百……いや、六百四十?」
彼女は机をバンと叩いた。
「六百四十杯! 毎日飲んでも、一年半は減らないぞ!」
「肝臓が先に減るよ」とダリオは言った。
「半分は貯金します。あとの半分は……赤い蕪漬けの鶉卵を毎日一個、銅貨二枚……一年で七百三十枚……」
彼女は懐から銅貨十四枚を出し、金貨の横に別の列で並べた。
「これは緊急用。絶対に使わない」
「さっきからずっと数えてるな」
「だって、持ってるだけで嬉しいんですもの」
ダリオはカウンターに手を挙げて麦酒をもう一杯頼み、それをそのままリナの前に置いた。
「利子だ。出発の前に借りた分」
リナは目を丸くしてから、にっと笑った。「利子だけでも、儲かった気分です」
*
午後の光が窓から斜めに差し込み、埃がきらきらと舞っていた。
フィンが立ち上がり、外套の襟を直した。アルドリックも、壁に手をついて立ち上がった。
「参事会へ報告に行きます。帳簿と小箱、無事に届けますので」
「帳簿は、私が引き取って渡す」アルドリックは足を引きずりながら言った。「勘定は、年明けまでに済ませねばならんので」
「ご苦労だった」とダリオは言った。
「魔物のことも、全部話すつもりです」フィンは真面目な顔で言った。「皆さんも、しばらくは参事会から呼び出しがあるかもしれませんよ」
彼は扉の前で一度だけ振り返り、「良い年をお迎えください」と言って、アルドリックとともに雪の中へ消えた。
ベルントは息子の肩を支えながら言った。
「雪が解けたら、南へ帰ります。荷の作り話の詫びも、息子の命も、あなた方には借りるばかりだ」
「金はもらった。いいんだ」
ベルントは複雑な顔で笑い、また荷の紐を触った。
隣のテーブルで、客たちが身を乗り出して話していた。
「なあ、聞いたか。徴税役が生きて戻ったってよ」
「今朝、北門で見たぞ。小箱を抱えた隊の若いのが、そりの横を歩いてた」
「で、例の白い耳の娘はどうなんだ。炭焼きの爺さんが今朝の市場で騒いでたんだ。今回は手首に白いカフスをつけてたってよ。左の方だけな」
「ただの包帯じゃねえか」
「いや、雪みたいに真っ白で……それに歌を口ずさんでたらしい。粉屋の女房が聞いたんだと」
「爺さんと女房で、姿が違うじゃねえか」
「幽霊ってのは、そういうもんだよ」
笑いが起こって、話は年明けの税の話へ戻った。ダリオは麦酒を飲み干し、マスターにお代わりを頼んだ。誰も、こちらの顔を見なかった。
*
「この先、どうします?」とリナが尋ねた。
「しばらくここだ」とダリオは言った。「雪が解けるまでは、動く仕事もない」
「私は、組合にいます」
ケスは梁の上から答えた。「しばらくここにいる。街のゴミ捨て場は、冬でも暖かい」
ガズは竈のそばで、目だけを開けた。「私は組合の馬小屋の屋根。日当たりがいい」
「まあいい。冬を越すなら、それで」
窓の外では、子どもたちが雪玉を投げ合っていた。投げた雪玉は、向こうの家の壁に当たって、音もなく崩れた。路地の角では、雪を担いだ男が足を滑らせ、無言で起き上がり、また歩き出した。
ダリオは二杯目の麦酒を半分ほど飲み、窓の外の灰色の空を眺めた。肩の傷の代わりに、胃袋の暖かさを確かめるようにしていた。
雪は、まだ降っていなかった。




