クコンホニ帝国
今はクコンホニ帝国へと向かう馬車の中である。
帝都のあるキラバイには10日程掛かる。
俺とルミナスの馬車には毎日の様に人が集まる。
「デュラント、この馬車はなんなんだ?」
「あぁ、揺れない、広い、超快適空間だ」
「俺達、自分の馬車にもう戻れないぞ」
父が亡くなって馬車改造の店は出来なくなってしまった。
流石に学生と領主の2足の草鞋に馬車改造まで手は回らないのだ。
そうなると、この馬車を持つのはワルキューレ家、ヘリテイジ伯爵家、そして王家だけとなる。
そして全員が全員「この馬車欲しい」と言う。
まぁ当然だろう・・・俺も普通の馬車にはもう乗れない。
快適な馬車での旅、あっという間に10日が過ぎいよいよ帝都に到着する。
帝都の門から城門まで広い一本道だ。
その沿道には沢山の人が集り声援が鳴り響く。
今日、この道を通れるのは対抗戦に出場する参加者のみとなる。
城門を潜ると、15名のメイド、フットマンが並ぶ。
「アストラベル王国代表者様、クコンホニ帝国皇城へようこそお越し下さいました。最終日まで、我々が皆様方のお世話をさせて頂きます。よろしくお願い申し上げます」
今日から大会終了まで俺達の面倒を見てくれるのだ。
各自のメイド達は城壁の外に用意された待機部屋で過ごすことになる。
メイドに扮してスパイや暗殺者を中に入れない為にどの城にも用意されている施設だ。
中は結構広く快適だとアイラは言っていた。
客室へと案内される。
1人一部屋である。
食事は各校に用意されていてパーティー等、催し以外で接触する事はない。
翌日の夕方、皇帝主催のパーティーが催された。
ルミナスをエスコートして入場する。
いよいよ皇帝陛下のお出ましだ。
各自グラスを持ち皇帝の挨拶に耳を傾ける。
「六国同盟国の生徒諸君、よく来てくれた。道中何事もなく無事に全員揃ったこと嬉しく思う。さて、明後日から開催される対抗戦をとても有意義な物にしてもらいたい。諸君らは各学園の代表として、悔いのない勝負をして欲しい。全ての力を出して正々堂々試合を楽しんで欲しい。そして学園代表選手としての立居振る舞いには気をつけて欲しい。この3点が私からの願いである。余り長く話しては食事が冷めてしまうな。今夜は心ゆくまで楽しんでくれ。乾杯」
「「「乾杯」」」
ルミナスのグラスに俺のグラスを合わせた。
軽食を取っていよいよ皇帝陛下への挨拶。
参加者が陛下の前に並び待つ。
聞きたいことは一つ。
ルミナスのが挨拶を終えるといよいよ俺の番である。
「皇帝陛下、お初にお目に掛かります。アストラベル王国王都学園より参りました。デュラント・フォン・ワルキューレと申します」
「うむ、ワルキューレ家の者か?もしかしてお主の父はガゼフであるか?対抗戦に一年から出るとは喜んでいるだろう」
「不慮の事故で数ヶ月前亡くなりましたがきっと喜んでくれていると思います」
「そうであったか。それは残念だ。奴はなかなかの手練れだった。戦場では背中を任せるに値する数少ない男だ。夜は一緒に酒を飲んだ。私が皇帝と言うことを忘れさせてくれる無二の友であった。冥福を祈ろう」
「ありがとうございます」
「構わない」
「最後に一つお聞きしてもよろしいですか?」
「良いぞ」
「日本国と言う言葉にお心当たりは?」
核心を突いた言葉に皇帝の顔が強張る。
「優勝したら話す機会を設けよう」
「ありがとうございます」
挨拶を終えてルミナスの元へと戻ると、ルミナスを囲む男達がいた。
「私と一緒にお食事へ行きませんか?」
「俺はいずれ公爵家当主となる身、お前にはその隣にゴニョゴニョ・・・」
「これから私の部屋へ行きましょう」
ルミナスの泣きそうな困り顔を見て俺はルミナスの元へ割り込む。
「なんだね君は?」
「そうだ俺は公爵家の」
「「「そうだそうだ」」」
「ルミナス大丈夫だった?」
男達からルミナスを庇う様に立つ。
「うん」
「俺はこの子の婚約者です。離れて下さい」
「何っ?」
「ルミナスと言うのか。いい名だ」
「ルミナスちゃんを離せ」
「はぁ行こうルミナス」
ルミナスの手を握りその場を後にした。
「デュラント君、ありがとう」
「うん」
パーティーも終わり各自部屋に戻る。
大会は3日後、それまでは自由時間である。
トレーニングをする者、模擬試合をする者、ダラダラと惰眠を貪る者、各自が試合に向けて調子を上げて行く。
俺はルミナスと共に城下に出た。
商店区画を歩く。
やはりと言うか・・・日本を彷彿とさせる物がこの国には溢れている。
鍛冶屋には日本刀、本屋には漫画、雑貨屋にはキャラクターのキーホルダーやぬいぐるみが並ぶ。
服も見慣れたTシャツ、ポロシャツ、チノパン、ジーンズ等が取り扱われていてその全てを購入した。
漫画、キャラクターは全て地球の物であり、所謂パクリである。
ルミナスはミッ○ーマウスのぬいぐるみを可愛いと欲しがった。
地球の偉大なキャラクターはこの世界でも人気なようだ。
『Kawaii』は世界を超え異世界にまで進出したのである。
購入したぬいぐるみを抱き締めたルミナス。
「はぁーやっぱりこの子可愛い。そしてフカフカです」
この世界にもぬいぐるみは存在する。
しかしそれはクオリティは悪く中の綿も品質も服には到底使えないような物が使用されてているのだ。
こう言った地球の物の商品化は何者が行っているのだろう。
食事も和洋中の店が並び城で頂いた食事とは一線を画している。
もしかすると他にも沢山の転生転移者がいるのかもしれない。
一回りし、和食屋と書かれた店に入った。
残念ながら米はない。
しかし醤油や味噌の代用品になり得る豆はあった様で刺身や煮物等が食べられる。
取り寄せで食べている俺には少し物足りなさを感じる物ばかりだった。
しかし、店内は日本家屋の雰囲気があってとても落ち着く。
「デュラント君、美味しいね」
「うん美味しいね」
ルミナス笑顔でご飯3杯は行けてしまう。
それから日が落ちるまでめいいっぱい遊んだ。
城に戻ったのは夜の帳が降り後だった。
夕食後、昨日は眠くて入れなかった浴場へと向かった。
「ああ、やっぱり」
そこに広がるのは日本の温泉施設を思わせる浴場であった。
木の匂いが香る大きな風呂、壺湯や露天風呂、打たせ湯にサウナ、水風呂まで完備されていた。
「あー昨日入らなかったのは失敗だったな。とても気持ちいい」
湯上がりに冷えたコーヒー牛乳を取り寄せてグビグビと飲む。
部屋へと戻ると髪を魔法で乾かして布団に入る。
瞼を閉じるとすぐに意識を手放した。
目が覚めると外は大雨だった。
朝食を取り、部屋で本を読んで過ごした。
次の日は雨は上がったものの曇天、とても冷える。
この世界は地球に比べると太陽から遠いのか、若しくは太陽が小さいのか・・・数日曇りや雨が続くと急激に気温が下がるのだ。
中には常夏に半月もの間曇天に覆われて雪に家が覆われたなんて事象もあったとか。
そう言う事もあって、教会は創造神と同列に太陽神を祀っていたりする。
まだ肌寒い中、大会は初日を迎えた。
第一試合、俺たちと対戦するのはユニング帝国だ。
総当たり戦となる予選は一対一の5回戦、先に3勝した学園の勝利となり、上位2校で決勝戦を行う。
決勝は勝ち抜き戦、勝った者は残り次の者と戦う、大将撃破で勝利となる。
1日最大二試合が行われる。
怪我人は都度ポーションや回復魔術を使えるOB等で回復する事が出来る。
どちらを使っても回復できない(病欠も含む)場合は補欠が代役となる。
補欠以外は選手順を変更する事は出来ない。
最終戦までに同率勝利で決勝戦進出者が2校を超えた場合、予選の負けた者の人数の少なさで決まる。
それでも決まらない場合に限り、再戦で決勝戦進出学園を決めることとなる。
アストラベル王国は先方カリンジャー、次鋒アリエール、中堅ルミナス、副将ストラフ、大将デュラントである。
初戦の相手はユニング帝国、先方、次鋒、中堅が危なげなく勝利した。
第二試合の相手ははロイキール王国、先鋒が負けたが、次鋒、中堅、副将が勝利。
この日は戦う事なく終了した。
「俺の番は回って来ませんでした」
「それでいい、決勝で大将を撃破する為には少しでも温存してやりたい」
「ストラフ先輩」
「勿論、明日以降強敵な学園と対戦することとなる。もしもの時は宜しく頼むぞ」
「はい」
2日目分厚い雲が太陽を遮る。
またグッと寒くなって来た。
場内は慌ただしく、教会も人が集まり太陽神に祈りを捧げる。
冬支度をする者、まだ半乾きの薪を買い求める者、天気予報のないこの世界は自然に翻弄されている。
随分と遅くなってしまい申し訳ありません。
クコンホニ帝国編開始です。




