魔族襲来
2日目が始まると共に、雨が降り始める。
雲は低くなり雲雷が轟く。
「異常気象だな」
そんな一言と共に雲が割れ何かが試合会場に落ちてくる。
「人が集まっていると思えば、決闘場か?」
「はい。決闘場の様です」
「フンっ下等種族同士で争っても何にもならぬな」
褐色の肌、頭部から生える角、そして背中には様々な羽が生えている。
「「ま、ま、魔族だー」」
会場はパニックに陥いった。
「我はアドラ魔帝国皇帝を継ぐ者ペタジーネ様だ、お前達にわかる様に言えば次期魔王である。まぁ今は偵察だ。いずれこの大陸に攻め込むその時には、お前達人族は抵抗せず首を差し出せ。さすれば痛みな・・・クッ」
デュラントは、風魔法を用いて空中で浮遊し話に夢中になっているペタジーネの横っ面を殴った。
「話長いし、くどい」
「なんだ貴様、今死にたいのか?」
ペタジーネは魔剣を抜く。
デュラントも聖剣に魔力を流す。
「ほぉなかなかの聖剣だな。よし、お前俺様の部下になれ。そうすれば俺がいずれ手にするこの世界の半分をくれてやろうぞ」
「それは魔王になったら言えよ。その時は一考してやるよ」
折角ならその言葉、魔王に問われたかった。
ペタジーネは羽ばたくと一直線に落下し斬撃を加える。
デュラントはそれをギリギリで交わすと回し蹴りでペタジーネを地面へと追いやった。
「なかなかやるな。俺様を焦らすとはやはり部下に欲しい」
デュラントはペタジーネの言葉に反応せず聖剣を振りかぶる。
「うっ」
「口程にもない」
「貴様っ!殺すぞ絶対に殺す」
「なんだ?父親にも殴られた事はないか?」
そう言ってもう一本の聖剣を抜いた。
それからは防戦一方のペタジーネ。
大きな事を言うだけの事はある。
「次期魔王だか知らないが、お前なかなかやるな」
「お前こそ、俺とここまでやり合える奴はそう居ないぞ」
そこから何度剣を交えただろう。
少しずつだが確実に俺の剣がペタジーネを圧倒し始める。
だがしかし、それは一瞬だった。
劣勢のペタジーネを見て焦った部下が魔弓を放ったのだ。
それはデュラントの腹を突き刺した。
「うっ・・・」
そしてペタジーネの振り翳していた剣は左側肩から右脇腹辺りを切り裂いた。
「すまない」
そう言うとペタジーネは弓を射った部下の首を刎ねて、飛び去る。
「もし生きていたらまた剣を交えようぞ」
俺は手を挙げるのが精一杯だった。
霞ゆく視界、遠くなる意識、俺の元に駆け寄る皆は何か叫んでいる様だがもう・・・
「これは夢?いくつもの人生がフラッシュバックする。どれも俺に心当たりは無いが懐かしく感じさせる、だがその全てが別人であり、同じ時代を生きた者までいる。俺は誰だ?」
「うぅ、ここは?」
「デュラント君気が付いたのね?」
「ルミナス、どうしてここに?」
「覚えてない?魔族との戦いで重傷をおったのを」
「あぁそうだった。魔族はどうなった?」
「あの後、矢を放った魔族を殺して去っていったわ」
「そうか。それと試合は?」
「優勝したわ、あれから5日延期になっちゃったけと・・・」
「5日?俺はどれくらい寝てたんだ?」
「10日程ね、かなり危なかったんだからね」
そう言うとルミナスは俺に抱きついて泣いた。
グー
「お腹すいた」
「今すぐ用意して貰うね。少し横になってて。治療してくれた教会の司教様も呼んでもらうから」
「ありがとう」
俺はゆっくりと立ち上がる。
10日寝ていた事もあって少しふらついたが、窓の外をみる。
雪が降り積もっていた。
今も分厚い雲に覆われている。
「これはマズいな」
部屋は暖炉には大量の薪が焼べられ轟々と燃え盛りようやく部屋を暖めている状況のようだ。
暖炉に近い備え付けのソファーに座ってルミナスの帰りを待つ。
「・・・君、デュ・・・ト君、デュラント君」
「寝てしまった」
起きると学園の皆んなも一緒だった。
「デュラント、心配したぞ」
「もう大丈夫なの?」
「ええ、ご心配お掛けしました。おかげさまで回復しました」
数日は固形食はお預けだ。
ルミナスが持ってきてくれた、芋のポタージュで腹を満たした。
「雪が酷いですね」
「ええ、どうやら局地的な物らしい。だがこの雪に寒さでは外には当分出られないだろう」
「そのようですね。ルミナス、明日以降で陛下に謁見のアポイントをとって欲しい。薪と食料の供給に付いてだと伝えてね」
「うん、後で必ず伝えるね」
司祭が部屋に入るとルミナス以外は外に出る。
傷は回復魔法とポーションで回復している。
「もう大丈夫でしょ。今夜はゆっくり休んで下さい」
「ありがとうございます」
10日も寝ていたにも関わらずまだ眠い。
ベットに入るとすぐに寝てしまった。
次の日、には謁見可能と報告され、すぐに出向いた。
「此度の魔族襲来に際して、其方の尽力誠に感謝する。起きたと聞いた時は歓喜したぞ」
「礼など不要です陛下。結局、魔族に傷一つ付けられませんでしたから」
「真剣勝負だったからこそ横槍を刺されて奴は帰ったのだ。そしてそれまで完全に押していたのは事実だ。後数手有れば確実に傷を負ったのは魔族の方だ。本当に助かった。国民を代表して感謝する。ありがとう」
「そんな、頭をお上げ下さい」
「では、今日の謁見だが何用だ?」
「はい、この大雪の件で御座います」
「そうだな、こちらで調べた所、局地的なものだと分かった。この王都付近だけが日が陰っておる」
「そうですか。では、ここからは他国の領主としてのビジネスの話を一つ。現在、我が領では開拓を行なっており、私のストレージには大量の木材が入っております。勿論乾燥済みです。それを購入頂けませんか?現状薪不足では御座いませんか?」
「それは本当か?勿論王家で買い民にも振り分けよう。で、幾らだ?」
「無論、適正価格で販売致します」
「良かろう。全て王家で買い請ける」
「ありがとうございます。では、倉庫をお借り出来ますか?」
「そんなにか?」
「はい」
「わかった」
「後は・・・。日本に付いてのお話を」
「そうだな。この世界には転生者、転移者と呼ばれる者がいる。勿論、儂を含めてな」
「やはりそうなんですね。私も地球の記憶を持っています。しかし、どう言う訳か様々な時代、国、知識を持っているのですが・・・。顔等の個人的な記憶は持ち合わせていません」
「そうか。特殊な生まれ方かもしれない。この国にも沢山の転移転生者がいるがその様な話は初めてだな。君は若者の言うチートと呼ばれるスキルを持っているか?」
「はい、持っています」
「やはりか、私も他の者も持っている。私は外傷以外では不死なのだ」
「そうなのですね。自分は・・・。お取り寄せと言うスキルです」
「もしや地球の物を取り寄せられるのか?」
「はい」
「では、お米と梅干しと日本酒を取り寄せて貰えないだろうか?」
「わかりました」
そう言うと米俵を5つと大きな壺一杯の梅干しと有名な日本酒5銘柄を10本づつお取り寄せした。
「おおー本当にありがとう。帝国内の日本人会の全員で頂くとしよう」
「そんな会があるのですね。無くなった際には手紙を頂ければまた送りますよ」
「それはありがたい。今後とも宜しく頼むよ」
「はい、宜しくお願い致します」
「では宰相、デュラント君に倉庫の案内と適正価格での取引を頼みます」
「はっ、承りました」
木材は領地経営の資金へと回す。
大量の木材が売れたので暫くは安泰だ。
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