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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
四章「咲きたい花」

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十四話『来訪者』

「…………流石に多い!」


 千人ほどの敵と戦い始めておよそ10分が経過した。

 俺も微力ながら戦ってはいる。

 だけど、数が全然減らない。

 林でできた道を埋め尽くすような人の量。

 いくら単体として戦闘力がなくても、押し切られそうだ。


 コルウスも、南陽も頑張って戦ってくれている。

 だが、黒荻(コクジャク)と戦ったときの傷がまだ治っておらず、二人とも万全ではない。

 

「…………まだ……っ!?」


 その疲労が響いたのか、コルウスが空中でバランスを崩す。

 体勢を立て直すことができずに、落下する。


――――危ないっ!


「…………コラン!」


 その直前。

 南陽が飛び出してコルウスを抱え込む。

 無事に着地できたようだ。


…………良かった。


「コラン……焦る気持ちはわかる。だけど、いや。だからこそ目の前のことを着実にやらなくちゃ」

「……………………ごめん」

「大丈夫。俺たちもペルコを助けるの手伝うから」

「…………そう…………もう大丈夫だから下ろして…………」

「あ、すまんすまん」


 抱え続けていたコルウスを優しく地面に立たせる南陽。

 再び敵の軍勢に向き合う。


「にしても、多いな」

「…………実を言うと、厳しい。万全な調子だったら…………」

「そうだな。誰か――――ん?」


――――ん?


 南陽が何かに気付いた様子。

 そして、こちらを振り向き、指さしで合図を送ってくる。

 

――――えっと、指の先には――――――――――――え?


 促されるままに目線を南陽の指が指す方へと移した時だった。

 俺の目に映った見覚えのある人物。

 中学生くらいの風貌で、誰もが魅了されるような美しい白髪を持つ少女――――


「何でいるのおおおおおおおおお?」


――――つぐもだった。

 予想できるはずもない状況に、俺はつい疑問を大声で口にしてしまった。


――――いや、いやいやいや。おかしいって。確かに前も、示杞と戦ってたときにも来たけど。


「…………あ、示杞くん! 見つけた!」


――――見つけられてしまった。そんなかくれんぼみたいなテンションで見つけられても。危ないから! どうか安全な場所にお帰りください! 

 

「ってあれ」

「――――危ないッ」

「わあ!?」


 敵の矛先がつぐもに向かう。

 俺はつぐもの下へ駆けつける。

 つぐもと敵の距離は1、2メートル。

 一方、俺と二人の距離は5メートルほど。

 傀儡のようになっている敵の身体能力はそれほど高くない。

 何とか間に合いそうだ。


――――届け……!


「えい!」

「………………」


 つぐもが敵を振り払うように腕を振る。

 そうした瞬間、敵はつぐもの前から消え失せていた。

 つぐもを襲おうとした敵は後ろの敵まで巻き込んで林のほうへ姿を消した。


――――そういえば、つぐもは身体能力は高いんだった。その『えい』って掛け声で出していい威力じゃないだろ…………ってそうじゃないそうじゃない。


 つぐもが無事なのはよかったが、俺は彼女に聞かないといけないことがある。


「つぐも! 何でここにいるんだ!?」

「示杞くんが私のためにがんばってるから、力になりたくて…………」

「…………!」


 つぐものその気持ちは嬉しい。

 それに、つぐもの身体能力は非常に高い。

 敵の数が多すぎるこの状況をひっくり返すには、力を借りるしかない。


「…………わかった。もう一度力を貸してくれ、つぐも」

「うん、じゃあ、おねがいします!」

「ん?」


 つぐもが目を瞑って俺の目の前に立つ。


「私は戦い得意じゃないから…………前のしてもらおうと思って…………」

「ああ、そうか」


 申し訳ないけど、つぐもの身体能力は高いが、バトルIQが全くない。

 さっきの腕の振り払いも身体能力の暴力だ。

 それに、つぐもをあまり戦わせたくもない。


 路地裏のときのつぐもは、ビックリするほど強かったけど。


…………ん? そういえば。

 つぐもは『記憶を失った』と思ってたけど、桃李は確か、『感情が戻った』って言ってたな。

 家族の影響で感情を失ったって。

 なら、感情が戻ったから、その前の記憶がなくなったということか?

 つまり、あの路地裏でのつぐもは感情を失った状態のつぐもだった?


「――――示杞くん?」

「へ?」

「ぼうっとしてたよ? 大丈夫?」

「あ、ああ」

 

 考え事をしていたら、いつの間にかにつぐもが目を開けてこちらを見つめていたことに気づいた。


――――今は推測の域を出ない。後で森ノさんに聞いてみるとするか。そのためにも今はこの場を切り抜けよう。


「よ、よし。やろう!」

「はい、どうぞ」


――――さてと。


「――――す、すみません。Tsuguさん。俺のことを殴ってくれませんか? 気絶するくらいでいいんで」

「え」


 Tsuguさんが俺を蔑むような目で見始めたんだけど。

 だって仕方がないじゃん。

 周りにいるの怪力(南陽)怪力(コルウス)怪力(つぐも)なんだから。


 戌佐(いぬさ)さん、拠点内部の様子を見に行っちゃったし。



 ※ ※ ※



「…………わかった。行くよ」

「合図出します――――」


 Tsuguさんに何とか状況を説明し、誤解は解けた……と信じることにする。

 とにかく、この憑依によって戦力差を覆せることを期待しよう。


「――――3、2、1、…………ゼッフッ!!」


 あ――――。

 桃李より強――――…………

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