十一話『数の暴力』
「――――では、後は頼んだ、Tsugu、戌佐さん」
「任しといて!」
「…………うむ」
『奪回者』の拠点の入り口の前で、Tsuguさんと戌佐さんに俺たちは見送りをしてもらっている。
「行こう、示杞、名織」
「ああ」
俺たちはこれから、森ノさんがいる、もしくは辿り着くであろう総理官邸へと向かう。
桃李がもう一度彼女に事情を聞き、本音で話せるように。
「――――ってちょっと待って!」
「え?」
俺たちが足を進め始めたその瞬間だった。
Tsuguさんが俺たちを呼び止める。
「連絡が入った。よくわからない人たちがこの山に押し寄せてきてるって! 君たち何か知ってる!?」
「…………その人たちの特徴は?」
「え~と何々。まるで意思がないように全身が脱力されてるって」
「それさっきまで俺たちが戦ってた人達じゃ…………南陽?」
「ああ、そうだなゴビ。そこまで戦闘能力が高いわけじゃない。焦るほどじゃない」
予想外の情報だったけど、さっきの敵が相手なら何とかなりそうだ。
「――――敵の数が千人くらいでも?」
「千人!?」
――――ごめん。前言撤回。
だって南陽で倒したの100人くらいだよ?
南陽あと9人連れてこないといけないって無理じゃん。
「…………コランはいるか?」
南陽が重大な質問をする。
コランというのは、南陽がコルウスにつけたあだ名。
コルウスは南陽と同じ環境で育った。
南陽と同等の戦闘力を有する。
つまりは、彼女がいるのといないのとでは、戦況に雲泥の差が生まれるわけだ。
「ちょっと待ってね…………あ、いるって!」
「…………よかった」
ひとまず安心だ。
コルウスがいなかったら絶望しかない。
「Tsugu、戌佐さん、示杞、名織……悪いが、私は――――」
「ああ、桃李っちは行っといで。心配なんでしょ? 森ノっちのことが」
「すまない」
俺たちは向かってくる軍勢を迎え撃つ必要があるから、ここに留まらなければならない。
戦力もできるだけここに集めておきたい。
だから、桃李は一人で行くことになってしまう。
「ここは俺たちに任せとけ、桃李。片付けたらすぐに追いかけるから」
俺は、桃李が森ノさんのことだけを集中できるように言葉をかけることしかできない。
「でも、戦いは苦手だよな、桃李。何かしら装備していけよ? あ、そうだ。この拳銃はどうだ?」
俺が桃李に渡したのは、森ノさんから貰った拳銃。
一回きりしか使えないものだったが、コルウスとコンテナヤードで戦ったときの有用性から、改良してもらっていたもの。
この拳銃には森ノさんの力の一部が加わっており、命中した相手に、全身にめぐる激痛と眩暈を与える。
「――――ありがたく受け取ろう。示杞、名織、改めてよろしく頼む」
「任せなってピチリ! 一瞬で終わらせるからさ!」
「ああ。信じている」
桃李は敵の侵攻ルートを避け、森の中へ入っていく。
桃李の姿が見えなくなったのを確認して、俺は敵が向かってくる方を向く。
「じゃあ、行くぞ南陽! …………とTsuguさんと戌佐さん」
「あはは、そんな遠慮しないでいいよ。いつも通りで!」
俺がビシッと決まらない戦闘開始の宣言をしてしまったけど、やる気に満ち溢れているのには変わらない。
南陽とコルウスに負担をかけてしまうのは申し訳ないけど、すぐに片付けて総理官邸に向かおう。




