十話『心配事』
「――――それで、桃李っち、アタシたちは何をすればいいの?」
森ノさんを助けるための話し合い。
早速、Tsuguさんがこれからすることを桃李に確かめる。
「私はこれから森ノに再び話をしてくるつもりだ」
「!」
「…………だからTsuguには私たちがいない間、ここの警備にも戦力を回してほしい」
「…………ん、わかった!」
Tsuguさんに任されたのは、TAFという隊による拠点の警備。
「それとこれは戌佐さんもだが、知恵を貸してほしいんだ」
「何の?」
「儂が知ってることならいいが…………」
「…………実は森ノが行く場所なら見当はつく」
「本当!?」
「…………!」
既に、森ノさんの目的地がどこか桃李にはわかっているらしい。
Tsuguさんと戌佐さんが驚いている。
――――というか、二人と話してるから黙って聞いてたけどそれ俺も初耳だよ?
隣にいる南陽も体が震えている。
驚いているんだろう。
「…………」
そう思ったけど、俺はあることを思い出した。
南陽が初対面の人に会ったことに。
彼が初めて会った人にすることは一つ。
彼が『ネーム魔』と呼ばれる所以。
――――あだ名つけるの我慢してるなこれ。
以前、疲れている森ノさんにネーミングの話をしてしまったことを反省しているのか、あだ名をつけようとはしていない。
気になりはするが、問題はなさそうだ。
桃李の話を聞こう。
桃李も一瞬南陽の様子を見て、本題に戻る。
「…………おそらくは『略奪者』の本拠地と思われる総理官邸だろう。森ノの状態からして今すぐにでも事件を解決させたいはずだ」
「なるほど」
「そうか、それでは儂らは何を?」
戌佐さんの疑問ももっともだ。
森ノさんが総理官邸に向かうのならば、俺たちもそこに向かえばいい。
なら、桃李の言うように、彼に知恵を貸す必要はないはずだ。
「…………その、森ノと会ってしっかりと連れ戻せる自信がなくて…………アドバイスを」
「え」
桃李がその疑問の答え。
それを聞いたTsuguさんと戌佐さんは、同時に困惑したような声を出す。
「あははははっ!」
そして、Tsuguさんは笑い出し、戌佐さんは桃李に我が子を見守るような笑みを見せる。
「そんなことね! 大丈夫だよ桃李っち、アンタが言いたいことを言えばいいよ。というか、君がダントツで森ノッちと付き合い長いじゃん!」
「そうだが…………」
「そうだ。儂らが言う必要もあるまい。それは自信を持っていい」
「…………あ、ありがとう…………話したいことは以上だ」
「うん、後は任せてよ!」
「儂も少しばかりは手伝おう」
桃李の悩みも杞憂だったのかもしれない。
桃李が一番森ノさんのことを知っているというのだから。
心配していてもしょうがない。
今は森ノさんを連れ戻せることを信じて、先に進もう。
※ ※ ※
――――総理官邸にて。
ある男が彼の前に立つ人々に何かをしながら言葉を投げつける。
「――――能力の使えなくなった部隊なぞ、要らん。良いように使える駒にしてしまえばいい。さあ、行くんだ。この私のために――――」
人々は何かに取りつかれたように、歩き始める。
それはまるで、傀儡。
次第に数が増えていく。
一、十、百…………千。
男に言われるがまま、歩み始める。
街の端にある山へと――――。




