二十五話『黒荻の居場所』
「…………う」
目を開ける。
ぼやけた視界に映るのは、うす暗く、少し狭い部屋。
モニターの光だけがこの部屋を照らしている。
…………何を、やっているんだ? ッ!
そして、真っ暗なモニターの前の何かしらの機器を動かしている男――――黒荻。
視界がはっきりとしていって、状況を把握した。
憑依には成功し、位置もおおよそあっていた。
だが、この場所には黒荻に加えもう一人いた。
運の悪いことにその人に憑依してしまったのだろう。
――――これは。
そして今、黒荻が俺たちを見ていた方法も判明した。
目の前がガラス張りで南陽たちがいる場所が見えている。
そんなものあっち側からは見えなかった。
マジックミラーのようなものだろう。
一方的に監視できるガラスだ。
…………ここに俺が来れた以上、このガラスは関係ない。ここで俺が黒荻を止めれば――――
「来たな?」
「なっ!」
俺が黒荻のほうに手を伸ばそうとした時だった。
俺が黒荻に触れる前に黒荻の声が俺を牽制する。
彼は座っていた椅子をくるりとして、こちらを振り返る。
「わかるんじゃよ。雰囲気とかが変わるとな。ワシも経験しているからかもしれんが」
「ちっ」
「推測するに、あそこで倒れているのが君かの?」
「!」
「意識が途切れるまで、どこかに向かおうとしていた。そこに何かがあるように、そこじゃなければいけないみたいにな。それがこれ…………憑依か」
「…………なんで」
「……正解みたいじゃな」
黒荻は満悦そうに、不気味な笑みを浮かべる。
――――おかしい。普通は『何かある』のがわかったとしても、それが『憑依』であるという結論に至るはずがない。その結論に辿り着くのを手助けする情報がないとだめだ。コイツは何を知っている?
「憑依……そうか、君がか」
「どういうことだ」
「君はもう大丈夫じゃよ。もう用はないみたいじゃからな」
「っ!?」
コイツは俺のことを知っているのか?
俺自身もどこかわからない、本来の俺の所在を。
…………違う。今はそんなことはいい。
時間を引き延ばしては、コイツが準備する隙を与えてしまうだけだ。
「…………黒荻、もういい。俺はお前を止める」
「止める? 憑依したてのその体でか?」
「…………」
黒荻は南陽の祖父らしいが、その体はまだ30歳程度の男性のようだ。
俺が憑依した体も同じくらいの年齢の男性っぽいが、練度が違う。
この体はまだ憑依して使い慣れていない。
だから、この状況は少し不利かもしれない。
「俺を、ただの一般人と思うなよ。憑依にはもう慣れている」
――――でも、俺はあの時から何も変わってないわけじゃない。
目の前で見ているだけで、俺が憑依した女の子を助けることのできなかったあの時とは違う。
俺は何度も何度も特訓した。どんな体でもしっかり戦えるように柔軟に対応できるように。
だから、今度は見ているだけじゃない。
つぐもは俺が守ってみせる。示杞のためにも、この事件を必ず解決してみせるんだ。
「――――行くぞ、黒荻ッ!」




