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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
三章「名状しがたい感情」

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二十五話『黒荻の居場所』

「…………う」


 目を開ける。

 ぼやけた視界に映るのは、うす暗く、少し狭い部屋。

 モニターの光だけがこの部屋を照らしている。


…………何を、やっているんだ? ッ!


 そして、真っ暗なモニターの前の何かしらの機器を動かしている男――――黒荻(コクジャク)

 視界がはっきりとしていって、状況を把握した。

 憑依には成功し、位置もおおよそあっていた。

 だが、この場所には黒荻に加え()()()()いた。

 運の悪いことにその人に憑依してしまったのだろう。


――――これは。

 

 そして今、黒荻が俺たちを見ていた方法も判明した。

 目の前がガラス張りで()()()()()()()()()()()()()()()

 そんなものあっち側からは見えなかった。

 マジックミラーのようなものだろう。

 一方的に監視できるガラスだ。


…………ここに俺が来れた以上、このガラスは関係ない。ここで俺が黒荻を止めれば――――


「来たな?」

「なっ!」


 俺が黒荻のほうに手を伸ばそうとした時だった。

 俺が黒荻に触れる前に黒荻の声が俺を牽制(けんせい)する。

 彼は座っていた椅子をくるりとして、こちらを振り返る。


「わかるんじゃよ。雰囲気とかが変わるとな。()()()()()()()()()からかもしれんが」

「ちっ」

「推測するに、あそこで倒れているのが君かの?」

「!」

「意識が途切れるまで、どこかに向かおうとしていた。そこに何かがあるように、そこじゃなければいけないみたいにな。それがこれ…………()()か」

「…………なんで」

「……正解みたいじゃな」


 黒荻は満悦そうに、不気味な笑みを浮かべる。


――――おかしい。普通は『何かある』のがわかったとしても、それが『憑依』であるという結論に至るはずがない。その結論に辿り着くのを手助けする情報がないとだめだ。コイツは()()()()()()()


「憑依……そうか、()がか」

「どういうことだ」

「君はもう大丈夫じゃよ。もう用はないみたいじゃからな」

「っ!?」


 コイツは俺のことを知っているのか?

 俺自身もどこかわからない、本来の俺の所在を。


…………違う。今はそんなことはいい。

 時間を引き延ばしては、コイツが準備する隙を与えてしまうだけだ。


「…………黒荻、もういい。俺はお前を止める」

「止める? 憑依したてのその体でか?」

「…………」


 黒荻は南陽の祖父らしいが、その体はまだ30歳程度の男性のようだ。

 俺が憑依した体も同じくらいの年齢の男性っぽいが、練度が違う。

 この体はまだ憑依して使い慣れていない。

 だから、この状況は少し不利かもしれない。


「俺を、ただの一般人と思うなよ。憑依にはもう慣れている」

 

――――でも、俺は()()()から何も変わってないわけじゃない。

 目の前で見ているだけで、俺が憑依した女の子(ウツキちゃん)を助けることのできなかったあの時とは違う。

 俺は何度も何度も特訓した。どんな体でもしっかり戦えるように柔軟に対応できるように。


 だから、今度は見ているだけじゃない。

 つぐもは俺が守ってみせる。示杞のためにも、この事件を必ず解決してみせるんだ。


「――――行くぞ、黒荻ッ!」

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