二十六話『暗闇の中の光』
「……………………止まった…………?」
「ああ。ゴビがあそこで気絶してる。まあ、そういうことだろうな」
石柱が止まった。
コルウスと南陽は、”彼”が憑依に成功したのだと理解した。
「でもそれじゃ、彼女を弱らせても」
「ああ、憑依によるペルフェの制御は期待できない。俺たちでやるんだ」
だが、それによって問題が生じる。
”彼”の憑依があれば、憑依できるまでペルフェを弱らせるだけでよかったが、憑依がなければペルフェを倒しきらないといけない。
「……………………そう」
「自信ないか?」
「いや、やってみせる」
「そうこなくっちゃな!」
だが、二人が意志を曲げることはない。
二人は再びペルフェに立ち向かう。
これからは二人の反撃の時間だ。
ペルフェの炎と雷の遠隔攻撃によって彼女と十分な距離がある。
そこを南陽は一瞬で詰め寄り、拳で攻撃する。
「くッ!」
ペルフェは腕を盾にしてそれを止める。
しかし、南陽の頭上には、再び雷の予兆。
「させないッ」
コルウスが翼で飛び込む。
左足でペルフェの腕を弾き、その隙に右足でペルフェを突き飛ばす。
吹き飛ばされたペルフェの勢いは止まらない。
壁に衝突し、亀裂を入れる。
数多に生じた破片がペルフェを埋め尽くす。
「…………ハア、ハア、まだだ」
「……………………」
それでも、二人は気を緩めない。
二人は理解できていた。
まだ、終わってないと。
二人が向く先からは、壁の瓦礫がゆっくりと動かされる音。
「……………………これじゃ、ダメみたい」
ペルフェはまだ立ち上がる。
意味ありげな言葉を口にし、黒いゴーグルのようなものを目の辺りに装着する。
「――――Attributes――Make Up」
「「!?」」
ペルフェの声に応じるかのように、一瞬にして真っ暗になる部屋。
「どうなって? コルウス、大丈夫か!?」
「…………大丈夫――――ッ!」
「コルウス!?」
コルウスがペルフェに攻撃されているようだ。
ペルフェはこの暗闇の中、自由自在に動けているらしい。
光源となるためか、炎と雷を攻撃に使っていないのが幸い。
(だけど、何故見えるんだ。さっきの目に装着した黒いやつか…………?)
南陽は目の前が見えない中、思考を巡らす。
(もしかして、暗視ゴーグル? それなら)
「うっ」
南陽の腹のど真ん中に衝撃が走る。
前が見えないまま、どこかに飛ばされ、何かに衝突する。
「――ッがは!」
「01!?」
もし、ペルフェが南陽のことが見えているのであれば今の南陽は格好の的。
すぐに追撃してくるだろう。
(――――やむを得ない)
南陽はそのことを理解して、腕を大砲の如く変形させる。
「『隠然たる光輝』!!!」
腕から放たれる光線。
辺りが照らされる。
(いた…………!)
そして、現れるペルフェの姿。
南陽の予想通り追撃していたペルフェ。
(あれが暗視ゴーグルならこの光で故障か、見えなくなるはずだ…………)
ナイトビジョンであれば、光線によって見えなくなる。
サーマルビジョンだとしても、この南陽の技の温度変化により、居場所の探知が難しくなる。
「delete」
「――ッ!」
光で辺りが照らされている間。
南陽が見たのは、南陽の技に怯むことなく間合いに入りこむペルフェの姿だった。
彼女は光線の上へと飛び出し、南陽に向かってかかと落としを繰り出す。
「――カハッ!!」
南陽はその攻撃を防ぐことができずに直撃。
頭を地面へと叩きつけられる。
「あ、あ…………」
南陽の頭部から顔にかけて流れ出る血。
立とうとする彼に襲い来る、疲弊に眩暈。
(――――まだ、まだだ。気を失えない。このまま倒れたら、あの時と一緒じゃないか!!)
だが、彼は耐える。
思い出されるのは、今とは全く違う雰囲気の幼かったコルウスの姿。
何もしなかった自分になりたくない。
足が震えながらも、徐に体を起こす。
(また、コルウスたちに全てを背負わせるなんて、でき…………ないっ!)
覚悟を決め、再び構える南陽。
光線による明かりはもう消え、辺りは暗闇に包まれていた。
けれど、南陽の目には揺らぐことのない光が満ち溢れている。
「――――俺は、今度こそ…………向き合うんだ…………!」




