二十四話『見えない位置』
南陽とコルウスは再び俺から離れた。
二人は俺の頼みごとを達成するために動いてくれている。
俺もすべきことをしないと。
「…………う、起きろ…………俺」
だが、俺の意識は限界に近い。
時間の猶予はない。
「…………ほっ、よっとっ…………!」
「……………………!」
カメラを壊したことで、黒荻がこちらを見づらくなったのか、石柱の動きも少し弱まった。
南陽とコルウスの負担は減ったが、それでも脅威には違いない。
南陽はアクロバティックに動き、コルウスは滑空して石柱とペルフェの攻撃を躱す。
一方、俺は石柱の動きを観察する。
二人とペルフェの位置を確認しつつ、起こるはずの異常をじっと待つ。
……………………今だ。
その時、石柱の動きが不自然になった。
それまでは一定間隔で飛んできた石柱が一瞬止まった。
それは、ペルフェ、コルウス、南陽の三人がある一直線上に並んだ時。
黒荻が何らかの方法で、こちらを直接見ているのなら、ペルフェによる死角ができる。
その死角に二人が入り込んだとき黒荻は、奥行きがわからない。
その時、黒荻による石柱の攻撃の精度が落ちるんだ。
ペルフェの身長は160センチ程度。
その石柱が止まった時の三人の位置とペルフェの身長から、黒荻がいるであろう範囲を絞る。
でも、この一回の情報だけでは絞り切れない。
それに、データの観測方法が俺が見ることである以上、誤差は出てしまう。
憑依のチャンスは一度きり。
精度を高めたい。
だから、少なくとも3つのデータは欲しい。
南陽とコルウスにはもう少し頑張ってもらうしかない。
「ぐっ………!」
「南陽!」
その刹那、空中で南陽の脇腹に石柱が激突した。
そのまま南陽は地面へと落下する。
「大丈夫だ…………集中してろ、ゴビ!」
かろうじて着地し、脇腹を押さえつつ再び駆け回る。
今ので2つ目のデータを得られた。
でも、南陽の限界も近づいている。
焦りが生じても、俺にはどうすることもできない。
俺ができるのは二人を信じて、黒荻の居場所を見極めることだけだ。
「――――南陽! 危ない!!」
負傷が響いているのか、動きが鈍くなっている南陽。
そこに、ペルフェの雷の予兆が南陽の頭上に現れた。
「………………あ」
雷の方を向いて、避けれないことを悟ったような南陽の表情。
俺の体も疾うに限界。
助けに行けたとしても間に合わない。
俺が何もできないまま、放電の音が鳴り響き、雷が南陽へと降り注ぐ。
「――――01!」
「うああ!?」
その時だった。
雷が南陽に直撃する寸前。
コルウスが南陽を抱えて飛び去った。
そして無事に地面に着地し、南陽を下した。
「……………………無理しなくていい」
「あ、ああ。ありがとう、コルウス。でも俺がやりたいからするんだ。だから、最後まで戦わせてくれ」
「……………………わかった」
たとえ、限界が近づいているとしても南陽の気持ちは変わらないようだ。
そうして二人は再び攻撃を避け始める。
…………ありがとう、二人とも。
そして、3つ目の情報を手に入れた。
ここに来るときに見た、この建物の外観をあわせて考えれば、十分場所を特定できる。
後は場所を移動するだけだ。
這いよって、目的の場所へ進む。
移動にかかる時間も計算内でなければならない。
憑依位置と俺の位置の関係は時間ごとに変わっているのだから。
でも、集中を終えたからか、一気に意識を持っていかれる。
視界が暗くなってきた。
最早、南陽たちの様子は音でしかわからない。
そして、少しずつ目の前も見えなくなっていく。
頼りになるのは、僅かに感じる腕の感覚と、僅かに機能する脳のカウントのみ。
腕を引きずった回数と時間を数える。
……………………5、4、3、2、1――――
そして、予定の時刻が訪れる。
――――0…………。




