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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
三章「名状しがたい感情」

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二十四話『見えない位置』

 南陽とコルウスは再び俺から離れた。

 二人は俺の頼みごとを達成するために動いてくれている。

 俺もすべきことをしないと。


「…………う、起きろ…………俺」


 だが、俺の意識は限界に近い。

 時間の猶予はない。


「…………ほっ、よっとっ…………!」

「……………………!」


 カメラを壊したことで、黒荻がこちらを見づらくなったのか、石柱の動きも少し弱まった。

 南陽とコルウスの負担は減ったが、それでも脅威には違いない。

 南陽はアクロバティックに動き、コルウスは滑空して石柱とペルフェの攻撃を躱す。


 一方、俺は()()の動きを観察する。

 二人とペルフェの位置を確認しつつ、起こるはずの異常をじっと待つ。


……………………今だ。


 その時、石柱の動きが不自然になった。

 それまでは一定間隔で飛んできた石柱が一瞬止まった。


 それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 黒荻が何らかの方法で、こちらを直接見ているのなら、ペルフェによる()()ができる。

 その死角に二人が入り込んだとき黒荻は、()()()()()()()()()

 その時、黒荻による石柱の攻撃の精度が落ちるんだ。


 ペルフェの身長は160センチ程度。

 その石柱が止まった時の三人の位置とペルフェの身長から、黒荻がいるであろう範囲を絞る。


 でも、この一回の情報だけでは絞り切れない。

 それに、データの観測方法が俺が見ることである以上、誤差は出てしまう。

 憑依のチャンスは一度きり。

 精度を高めたい。

 

 だから、少なくとも3つのデータは欲しい。

 南陽とコルウスにはもう少し頑張ってもらうしかない。


「ぐっ………!」

「南陽!」


 その刹那、空中で南陽の脇腹に石柱が激突した。

 そのまま南陽は地面へと落下する。

 

「大丈夫だ…………集中してろ、ゴビ!」


 かろうじて着地し、脇腹を押さえつつ再び駆け回る。

 

 今ので2つ目のデータを得られた。

 でも、南陽の限界も近づいている。

 焦りが生じても、俺にはどうすることもできない。

 俺ができるのは二人を信じて、黒荻の居場所を見極めることだけだ。


「――――南陽! 危ない!!」


 負傷が響いているのか、動きが鈍くなっている南陽。

 そこに、ペルフェの雷の予兆が南陽の頭上に現れた。


「………………あ」


 雷の方を向いて、避けれないことを悟ったような南陽の表情。

 俺の体も疾うに限界。

 助けに行けたとしても間に合わない。

 俺が何もできないまま、放電の音が鳴り響き、雷が南陽へと降り注ぐ。


「――――01!」

「うああ!?」


 その時だった。

 雷が南陽に直撃する寸前。

 コルウスが南陽を抱えて飛び去った。

 そして無事に地面に着地し、南陽を下した。


「……………………無理しなくていい」

「あ、ああ。ありがとう、コルウス。でも俺がやりたいからするんだ。だから、最後まで戦わせてくれ」

「……………………わかった」


 たとえ、限界が近づいているとしても南陽の気持ちは変わらないようだ。

 そうして二人は再び攻撃を避け始める。


…………ありがとう、二人とも。


 そして、3つ目の情報を手に入れた。

 ここに来るときに見た、この建物の外観をあわせて考えれば、十分場所を特定できる。

 後は場所を移動するだけだ。

 

 這いよって、目的の場所へ進む。

 移動にかかる時間も計算内でなければならない。

 憑依位置と俺の位置の関係は時間ごとに変わっているのだから。

 

 でも、集中を終えたからか、一気に意識を持っていかれる。

 視界が暗くなってきた。

 最早、南陽たちの様子は音でしかわからない。

 そして、少しずつ目の前も見えなくなっていく。

 頼りになるのは、僅かに感じる腕の感覚と、僅かに機能する脳のカウントのみ。

 腕を引きずった回数と時間を数える。


……………………5、4、3、2、1――――


 そして、予定の時刻が訪れる。


――――0…………。

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