二十三話『石柱の介入』
「…………っ」
南陽に吹き飛ばされたペルフェ。
彼女が瓦礫の中から徐に姿を現した。
『むぅ、流石にまずいのう』
その様子を見て黒荻は状況が悪いと判断したようだ。
だが、その言葉に反して落ち着いているような声。
『やむを得ん…………ほいっと』
「何を? ――――!? うあっと!」
突如、南陽の下に飛んできた細長い石柱。
髪に触れるほど、ギリギリでそれを躱す。
「これ……」
その石柱は、壁から飛んできたもの。
壁が柱状に切り取られ、南陽への攻撃となったのだ。
「おい、余計な因子加えないんじゃなかったのかよ!?」
『2対1じゃ流石に分が悪いからのう、仕方がなかろう』
「くっ!」
どこから飛んでくるか予測が難しい石柱。
それに邪魔されて南陽もコルウスも、ペルフェをなかなか攻撃できない。
石柱は二人ばかりを狙う。
きっと黒荻が上手く操っているんだ。
「――――!」
南陽とコルウスが石柱に苦戦している間にも、ペルフェは二人に炎や雷を駆使して攻撃を仕掛ける。
二人も石柱とペルフェの攻撃を躱すだけで精一杯。
石柱がなくなるまで待つのも手だが、この広い空間ではどれほど石柱が蓄えられているかわからないし、二人が躱し続けられるかも怪しい。
…………まずい。もう、意識が…………
ペルフェの雷に直撃した俺は、意識を保つのでやっとだ。
だが、おそらくまだペルフェには憑依できない。
きっとペルフェもコルウスと同じ。
ペルフェも憑依に抵抗できるほどの力を有している。
でも、まだペルフェは、コンテナヤードのときのコルウスほど弱っていない。
なら、憑依の対象は黒荻だ。
黒荻を倒せば、石柱を止めることができるだろう。
そうしたら、また優勢になるはずだ。
考えろ。黒荻はどこにいる? どこから、俺たちの様子を確認している?
直接見える位置にいるか、カメラから覗いているだけなのか。
「っ、南陽、コルウス!」
「何だ、ゴビ!?」
「この部屋のカメラを、破壊してくれ…………!」
途絶えそうな意識の中、俺は精一杯、二人に頼む。
この部屋のカメラの破壊。
黒荻がこの部屋の様子をどんな方法で確認しているとしても、俺たちはこれをする必要がある。
カメラを破壊して石柱が止まれば良し。
止まらなければ、アイツはどこかで直接俺たちの様子を見ていることになる。
「ああ! わかったぞ、ゴビ――――行くぞ、コルウス!」
「…………」
南陽の掛け声に応じて、コルウスは頷き、二人はカメラのもとへ向かう。
この部屋にあるカメラは、計4つ。
二人は石柱とペルフェの攻撃を、体を滑らかに動かし躱して、カメラを壊していく。
一つ。また、一つ。
順調にカメラを破壊し、ついに4つ目。
南陽は最後のカメラの下でしゃがみ、思いっきり跳躍する。
「これで、最後だ!」
天井付近にあったカメラを蹴り飛ばし、地面に叩きつけた。
「――――うおっ! 止まってねえ!」
だが、石柱は止まらない。
空中にいる南陽を石柱が襲う。
辛うじて、体を曲げて回避した。
「……そう簡単にはいかないか」
この部屋のカメラを全て壊したにもかかわらず、石柱は止まらなかった。
ペルフェがカメラを持っている可能性はなくはないが、極めて低い。
彼女の移動速度では、映像がブレて黒荻は正確に俺たちの状況を把握できないだろう。
だから、原理はわからないが、アイツは直接俺たちを見ている。
だが、それは逆に好都合。
黒荻がカメラを通して遠隔でこの部屋を監視しているのであればどうしようもなかった。
だけど、黒荻が近くにいるのであれば俺が何とかできる。
俺が次にすべきは黒荻の居場所を探ることだ。
――――まだ、意識を保て。
意識を失わないように、心の中で自分を鼓舞し、考える。
黒荻の居場所を探るために必要なことは何か。
「!」
一つ、思いついた。
それには二人の協力が必要だ。
「南陽、コルウス、ちょっといいか…………!?」
「ああ、どうした!?」
「してほしいことが――――」
※ ※ ※
「――――ああ、ゴビ、わかったぜ」
「…………」
二人とも快く承諾してくれた。
これで、黒荻の居場所を探る準備はできた。
時間の猶予もない。失敗は許されない。
二人の体力が限界を迎えないよう迅速に、それでかつ正確に黒荻の居場所を突き止めるんだ。




