十六話『憧れの消失』
南陽が家族同然の生き物たちと過ごした部屋。
彼の祖父はその部屋を実験の場へと変えた。
南陽が共に暮らしてきた生き物は祖父の実験で死んだ。
だから、祖父のその行為は彼らと南陽への侮辱だ。
「黒荻…………! どこにいる!?」
もう、南陽は怒りを抑えきれない。
されど、依然祖父の黒荻の姿はない。
『わしが出る必要はないじゃろう? 見ての通りそこは実験場。わしがいたら余計な因子が入り混じってしまう』
「……実験だと?」
『ああ、そうじゃ。ペルフェの戦闘力を測るためのな』
「…………なら、コイツに勝ってお前の予測を踏み越えてやる」
黒荻が実験をするために姿を現さないのであれば、実験を終わらせてやるまで。
南陽はその意思を黒荻に示す。
『ああ、やってみるといい。だが、お前じゃ勝てないぞ、01』
だが、黒荻は既に実験のことしか考えていない。
孫である南陽も番号呼び。
(…………やっぱりそうだ。アイツは俺のことを孫なんて思っちゃいない。最初からただの実験動物なんだ)
この扱いも南陽は予想していた。
予想が的中したことは悲しいこと。
(けど、それでいい。これで気兼ねなく戦える。)
だが、同時に僥倖でもある。
もう、遠慮なんていらないことがわかったから。
子どもの頃、憧れていた黒荻の背中。
それを頭の中から抹消する。
後は――――
「行くぞ。この実験を、終わらせてやる」
「………………」
――――大切なものを奪った報いを、黒荻に受けさせるだけだ。




