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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
三章「名状しがたい感情」

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十一話『集合場所にいない存在』

「南陽は? 南陽はどうしたんだよ!?」


 『奪回者』拠点。

 森ノさんに集められた俺、桃李、綿さん。

 皆が南陽が来ないことを不思議に思う中、俺は必死に言い放った。


 だって、俺は知っていたのだから。

 南陽の苦しみに溢れたあの表情を。


「落ち着け示杞」

「あ、ああ悪い…………」

 

 桃李になだめられて、俺は少し冷静さを取り戻す。


「……うむ、何かあったようだな。話すがよい」


 ※ ※ ※


「状況は理解した。だが――――」

「――――でも、まだ取り返せます!」

「綿さん?」


 綿さんの言葉に俺は少し戸惑う。

 いつにも増して強気だ。

 綿さんにこんな側面があるなんて知らなかった。


「ですよね? 千花さん?」

「う、うむ。そうだ」


 綿さんの言葉に森ノさんは驚きを隠せていなかった。

 でも、綿さんの『取り返せる』という言葉をしっかりと肯定する。


「示杞よ。我らが時間を費やして、調査したのは何だ?」

「……………………あ」

「気がついたようだな。そうだ、()()()()()()()という女の行方だ」

「確かにそうだった」


 南陽の表情ばかり気になって忘れていた。

 彼の祖父ともう一人、南陽と共にいた人物――――赤髪の男を撃った少女のことを。


「彼女は、総理官邸に入った。だが、奴らの拠点がそれだけとは考えにくい。我らと戦った戦力は()()()()()()()()()()()

「…………なるほど」


 確かに森ノさんの言うことには一理ある。

 彼女らの口振りからして、俺が拠点に来る前にも、何回も襲撃があったようだ。

 そんな回数襲撃する戦力が総理官邸だけに集中するとは考えにくい。


「他の拠点をいくつか見つけたが、全てに潜入していたらキリがない。そこで示杞。そなたに頼みたい」


 森ノさんは既に他の拠点を見つけているという。

 後は、その中からできるだけ安全に南陽を探し出すだけ。

 俺ならそれができる。


「憑依…………ですね?」

「うむ、そうだ。次こそ彼を助けて見せるのだ」

「っ、はいっ!」



※ ※ ※


 

 該当する拠点をマークした地図を森ノさんから渡され、解散した後。


「綿さん、ありがとうございます。勇気づけてもらって」


 俺が綿さんに伝えたかったのは、『取り返せる』という言葉への感謝。

 俺が『しなかったこと』ではなく、俺が『すべきこと』に目を向けさせてくれた言葉。

 

「いえ、助けたいのは一緒ですから」


 俺の言葉に、彼女も自らの気持ちを話してくれる。


「でも」

「でも?」

「貴方のせいで名織くんからずっと『ふともも』って呼ばれてるの許してませんよ?」

「ごめんなさいいいいいいい」


…………ちょっと過去の因縁も話してしまったけど。

 あの時ふとももって叫んだのは不慮の事故なんだって……………………ホントだよ?


「ふふ、冗談です。『ふともも』と呼ばれるのは癪ですが、貴方に悪気はないのはわかります」


 加害者である俺は、そんな冗談一つで汗だくだ。

――――南陽さん。もとい『ネーム魔』さん。どうか『ふともも』だけは止めてくださいませんか?


 でも、俺はもう()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 綿さんが冗談を言ってくれたおかげで、バッドエンドなんて眼中になどなく、南陽が帰ってくることだけを信じられてる。

 真っ直ぐに、迷うことなく突き進める。


「癒川くん。頑張ってくださいね?」

「はい!」

「私も――――」

「綿さん?」

「――――いえ何でもないです。さあ行きましょう!」

「そ、そうですね?」


 最後まで言ってくれなかったけど、何となくわかる。

 きっと綿さんは南陽だけではなく、もう一人助けたい人がいるんだ。

 だから、助けることに対してこんなにも熱心なんだ。

 

 ならば。

 もう南陽にあんな表情をさせないためにも。

 綿さんの期待に応えるためにも。

 

 必ず南陽を見つけ出してみせる。

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