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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
二章「インターフェース」

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二十二話『無の空間と暗い夜』

「ぅ、うう…………」


――――こ、こは…………?


 目を覚ます。

 目の前には何もない。

 光もなく、薄暗い空間。


「力が足りなかった、のか?」


 憑依したのは間違いない。

 だけど、成功したのであれば俺は示杞の体で、目の前には廃校の廊下があるはずだ。

 でも、そんなの見えない。


 俺は、能力で押し負けたんだ。

 ここは、おそらく示杞の体の内側。

 それは理解できた。でも一つ気になってしまった。


 ()()()()()()()()()()()()()()()

 ここは、現実空間ではない。

 憑依された時に生じる精神的な空間だろう。

 だから、この体は俺の本来の体であるはずだ。

 でも、手を見て理解した。これは示杞の体ではないと。


 けれど、最早それで驚きはしない。

 俺が示杞でないことを実感して少し胸が苦しいだけ。

 

「っ、俺のことはいい」

 

 そんなことより他に気にするべきことがある。

 ここが示杞の中なら。


「示杞を探さなくちゃ」


 示杞がいるはずだ。

 俺はひたすら暗闇を走る。

 走っても走っても何もなくて。

 景色も何一つ変わらなくて。

 最早俺が動いているのかもわからなくなって。 


 でも走り続けた。


――――もしかしたら、示杞もこんな思いを――――?

 

 ふと、店で見た日記の内容を思い出す。

 『くらい』という言葉はこの場所を指していたのかもしれない。

 少しの時間でも気が狂いそうになる空間。

 それをずっと、一人で過ごしていたのであれば。

 もし、憑依から抜け出しても暗い夜で光すら当たらなかったのであれば。

 示杞がこの思いをずっとし続けていたのだとすれば。


――――急げ。少しでも早く。


 一刻も早く示杞を救い出さないといけない。


「居たっ」


 暗闇を駆けて、ようやく示杞の姿を見つける。

 うつむいている示杞。

 彼は俺に向かってゆっくりと振り返る。


「……………………ああ、来たんだね」


 俺の目に映るのは、示杞の悲しみと後悔に溢れた表情。

 

 やはり、俺はこのままではいられない。

 示杞が俺を負かしても、ここに閉じ込められた示杞は救われることはないのだから。

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