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その体に出会いと別れの挨拶を ~あの日、憑依した少女にもう一度出会うために~  作者: 炭本 良供
二章「インターフェース」

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十二話『罪に向き合う勝利』

「さて――――……………………」

「っ」


 彼の宣言と共に戦闘は開始する。

 それと同時に彼は気を失い、地面に倒れこむ。


「どこを見ているんだい?」

「ッ!」


 背後から頭部を殴られたような激痛。

 彼が今までいた体に気を取られて気づかなかった。


「っ、これは」


 既に、敵は俺の背後に回っていたことに。

 背後にいる体は確かに敵対していた人間のものではなく、周囲に倒れこんでいた人間のものだ。

 けれど、喋り方からして間違いなく彼。

 この現象からわかることは一つ。


「憑依っ!」


 彼は俺と同じ憑依を使える。

 周囲の人の体がゾンビのように起き上がっては俺を攻撃し、倒れこんでいく。


「くっ」


 アイツに数で圧倒されている。


 アイツは憑依を使っている。

 アイツが体を奪ったことで憑依も使えるようになったのかもしれない。

 そうだとしたら、憑依が奪われたのかどうか。

 俺はそれを試さないといけない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()、だけど。


「っ!」


 頭にこびりついて離れないある可能性。

 それが本当だとしたら、()()()()()()()()()()()()()


 俺は、どうしたらいい。

 この可能性から目を背ける?

 それとも開き直って目の前のコイツと戦う?


 いや、どちらも論外だ。

 なら、俺は――――


「――――示杞くん!」

「っ!」


 俺が逡巡していた時だった。

 俺の耳に響いたのは、マンションにいるはずのつぐもの声。


「つぐも!? なぜここに? 楓は!?」

「わたしは強いから大丈夫。この前病院でも見たでしょ? えっと、示杞くん、だよね?」

「……………………ああ」


 確かにつぐもはペットボトルを軽々と粉砕するほどの力を持っている。

 だけど、それが実践で使えるとは限らない。

 それに、今問題なのは戦力の差ではない。


「ぐっ」

「なんだい。僕を前にして余所見って」


 俺はつぐものほうを向いたところに蹴りを入れられる。


「示杞くんは――――」

 

 つぐもが語り続ける最中も、俺は俺の体に攻撃され続ける。


「示杞くんはその人を助けたいんでしょ!?」

「!」


 だが、つぐもの言葉に俺は思わずもう一度つぐもの方を向く。


 目の前の男を助けたい。

 それは俺の本来の目的。

 だけど、その目的があるからこそ俺は迷ってしまう。

 俺が負ければ、彼は救われるのではないかと思ってしまったから。


「助けてあげたいなら、諦めちゃダメだよ」

「でも、俺は――――」

「――――だって、あの人が示杞くんを倒して、それで救われるの?」

「…………!」


『殺される、ものか。そうしたら、きっとこの子は戻れない』


 俺は思い出した。

 路地裏でつぐもと戦った時の気持ちを。

 助けたいから、勝つのだという思いを。

 

――――つぐもの時と、同じだ。


「だから向き合わないとダメ。それがたとえ嫌なことでも、辛いことでも」


 つぐもの言うとおりだ。

 たとえ、アイツが俺に勝ったとして、莱夏の誤解は解けない。

 抵抗しないなんて、ただこの可能性から逃げているに過ぎないんだ。

 俺が罪と向き合うには、相手と向き合わなければならない。


「ごめん。つぐも」


 ならばすべきことは一つ。


「俺は勝って、罪と向き合ってみせる!!」


 俺はアイツを救うために、この戦いに勝つんだ。

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