十三話『体の所有者』
「話は終わったかい?」
「ああ。お前を、倒す」
「ふっ、やってみろ!」
この戦いに勝つと決めた。
ならば、次に考えるべきはその方法。
アイツの憑依が俺と同じものならやりようはある。
アイツは気を失った。
また、転がっている体に憑依し、俺を攻撃するだろう。
「――――すべてお見通しだ」
「っ!?」
だが、俺は後ろから繰り出される拳を軽く躱す。
アイツが何度憑依しても、何度攻撃しても、俺には当たらない。
だって、俺にはアイツが憑依した位置がわかるのだから。
俺の憑依する位置は、俺を中心とした時間の周期的な関数。
ならば、計算式におけるその中心を俺からアイツに変換すれば良いだけだ。
「くっ!」
アイツは周囲の人に次々と憑依する。
「右、左斜め後ろ、右前」
けれど、俺はどこにアイツがいるかわかる。
それが理解できていれば、攻撃は常人レベルのもの。
躱すのは動作もない。
攻撃をいなしながら、俺はアイツが捨て置いた俺の体にたどり着く。
そして――――
「――――っ、ここだ!」
少し躊躇いを覚えつつも、顔面を思いっきり殴り飛ばす。
「がっ!」
声を上げたのは俺ではなく、アイツ。
憑依していても体を攻撃されるとダメージを食らうらしい。
「――――ああ」
気づいていた。
これでもし俺にもダメージが入っていたら、なんて思っていた。
憑依していても、体の状態が本体に影響を及ぼす。
けれど、俺はなんともない。
「やっぱり、そうだったんだ」
その事実が示唆するのは、俺の一つの罪。
俺の体はアイツに奪われたものではなかった。
アイツが取り返したものだった。
「この体は、俺のものではなかったんだ」
この体の所有者は俺ではない。
目の前にいる彼こそが癒川示杞だったんだ。




