三話『当事者の責任』
俺は、つぐもが暮らしているマンションに向かった。
幼なじみの楓が、つぐもの面倒を見るためによく遊びに来てくれている。
早速、つぐもの家のドアの前に立ち、インターホンを鳴らす。
『はいはーい』
すると、すぐに馴染みの声がして、ドアが開く。
「…………ど――――」
「あっ」
ドアの隙間から現れた彼女。俺の幼なじみの楓。
だけど、相手は明らかに困惑していた。
そして、俺は気づいた。
「どちら様ですか?」
今、俺の体が癒川示杞の体ではないことに。
俺の体が奪われたため、今、俺は第三者の誰かの体に憑依している。
幼なじみの楓とはいえ、話さずに俺だということに気づくはずがないのである。
「俺っ、俺だよ!」
「オレオレ詐欺って電話越しにやらなきゃ無意味なんじゃ…………」
「違う違う! 示杞! 俺は癒川示杞だっ!」
「そんなまたまた~、一日でそんな身長が伸びるはずが――――」
だけど、少し俺と話すと、ふと楓ははっとしたような顔をして、
「あ、これが憑依か~」
「この人が示杞くん、なの?」
「うん。そう、らしい?」
楓の後ろから、つぐもも顔を出す。
二人とも元気そうでよかった。
「それで? どうしたの示杞?」
家の中に入り、本題へと入る。
彼女らが気になるのは、今どういう状況なのかだろう。
俺のものではない体で何故ここを訪れたのか。
「あ、ああ実は――――」
俺は二人に事の顛末を話し、悩みを打ち明ける。
「――――示杞くんの体が奪った人がわたしに?」
「あ、ああちょっとだけ似ていた。雰囲気というよりもその表情が」
俺の体を奪った者は路地裏のつぐもと同じように苦しんでいるようだった。
それがどうしてなのか。
どうしたら助けられるのか。
「じゃあ、示杞はその人の助けになってあげたいんだ?」
「ああ、でも。原因が俺にあるかもしれなくて…………」
「? どうして?」
そして、重要なのはその苦しみの原因が俺にあるかもしれないこと。
「他でなく俺の体を奪ったこと。そして、表情と言葉が俺を憎んでいるようだった。自意識過剰かもしれないけど、もしかしたらと思って…………」
「…………でも、たとえそうでも、なおさら示杞くんは直接話すべきだと思う」
「つぐも?」
「それを解消できるのは、示杞くんだけだと思うから」
つぐもはその事実を知ってもなお、俺が解決すべき問題だと言う。
そして、その言葉を喋るつぐもは、いつもの様子とは少し違っていて真剣。
「そして、ずっとつらいのは悲しいから…………どこか、そう思うの」
それでいてどこか悲しい顔で、胸に手を当てて呟いた。
「つぐも……そうだ。そうだな」
つぐものいつもと違う雰囲気に僅かに戸惑った。
でも、つぐもの言うことは確かにその通りだ。
「二人ともありがとう。おかげで悩みが晴れた」
つぐもの言葉に決心がつき、俺はその場を立ち上がる。
「どこ行くの?」
「早速、もう一度その人に話してくる」
「…………! 行ってらっしゃい!」
つぐもと楓の二人は息をそろえて見送りの言葉をかけてくれる。
そうして、俺は行くべきところへ向かう。
『この体は僕のだから…………!』
癒川示杞の体に固執するアイツは、きっとあそこにいるはずだ。




