四話『逸脱する道』
「僕だって! 癒川示杞だって!」
「違う! 貴方はお兄ちゃんじゃない。出てって!」
俺が自宅へと向かうと、奪われた体が自宅から追い出されていた。
どうやら妹の莱夏は、その中身が俺でないことを見抜いたようだった。
「どうしてだよ。僕は癒川示杞なのに。どうして」
震えた声で、地べたに膝をつくその姿。
それは弱々しくて、俺が体を奪われたことを忘れてしまうほど悲しそうだった。
「なあ」
「!?」
俺がそっと話しかけると、その体はこちらにはっと気づく。
「っ。どいつもこいつもっ! 人の気も知らないで!」
「!」
やはり、俺が事情を聴いても話してはくれなさそうだ。
これは、俺が解決すべき問題。
それでも、その解決策が見当たらない。
「いいよ。お前らがそうするなら。全部消してやる。お前も。お前の周りの全てッ!」
そうして俺は何も出来ないまま、その体はまた、姿を消していく。
どこか、不安の残る言葉を残して。
※ ※ ※
「本当に良いのかしら?」
「ああ。やってくれ」
彼が奪われた体は、とある薄暗い部屋で怪しげな女と会合する。
「アイツも、アイツの影にすがり付く奴らも許さない」
その体は震えた拳を握りしめる。
「残らず、灰塵にしてやる」
その拳が表す、彼の抑えきれない憎しみと怒り。
度を越したそれらが彼を狂わせる。
取り返しのつかない、崩壊の道へ。




