最強のスキル発動
<惑わされるなリインよ>
暗闇に声が身引き渡る。
これは…クラウスさんの時と同じ、『目』だ。
<己を見るのだ>
厳かな声とともにシルエットが浮かび上がってくる。
雑なパンダ。
じゃない。人だ。
だがもとのポリゴンはパンダと同じらしく、30年前のシミュレーションゲームのような絵柄の茶髪に鎧を着た女の子のテクスチャを無理やり上から貼って人という事にしているだけだった。
ズレている部分から元のパンダの柄がはみ出している。
<見えているものに惑わされるな。己の心の奥底を聞くのだ>
こんな視覚の暴力に言われても全く説得力がない。
女の子のCGが話し始めるが、パンダの時の口と女の子の口の位置が合っておらず、ただでさえいびつな女の子の顎辺りがパクパク動いて男の声を出しているという子供が見たらトラウマものの事故が展開されている。
前回のパンダ以上に悪意を感じさせる作りだ。
この3Dモデルは『目』が自作しているものなのだろうか。
それとも3Dモデラ―さんが『目』に個人的な恨みでもあるのだろうか。
リインの視線に気付いた『目』がグリンとぎこちなく首を傾げる。
今にも首がもげそうだ。
<我が『器』が気になるか?>
「これはさすがに気にしないほうが無理だろ。やめてほしいんだが」
<無理だ。…因みに言っておくが、あの骸骨小娘とキャラが被るから柄を変えたのではないぞ>
そうなんだな…
リインは心でそっと思った。
<リインよ。今回はお前に備わるスキル「天衣無縫」について教えよう>
「天衣無縫?」
<目を閉じ我を呼ぶ時、お前は自らの力を可視化できる…右下を見てみよ>
いつの間にか右下にリインの顔のアイコンが3つ並んでいた。
それが3つとも赤く光って点滅している。
「うわダセえ…」
リインが心底嫌そうに呟いた。
良く見ると顔に水玉が浮かんでいる今の状態もリアルに表現してやがる。
<これはスキル『天衣無縫』を発動するためのメーターだ。
顔が3つ溜まった今、お前はスキルを発動させ、相手の種族や属性、現在の装備に囚われず威力Sランクダメージを与える上級技を自在に編み出せる>
「クラウス戦の時に使ったような技をか?」
<いいや。あれより遥かに強力な大技となるであろう>
「すげえな…」
メーターのビジュアルはダサいがそれはかなり良いスキルだ。
ていうかこれさえあれば最強じゃないか。
好きな技で好きな無双が出来るってことじゃないか。
リインは心の中の少年が喜びに打ち震えているのを感じた。
<リインよ…気になるということはお前の心の最奥がそれを羨み欲している証…。今こそ自らの心のままに、ロザベールを超える設定の必殺技を創造するのだ>
リインがキリっとした表情で頷く。
「わかった。ロザベールの脚を超えてみせる」
お前に限っては違うけどな。
リインは『目』の厳かな声を聞きながら目の前が明るくなってゆくのを感じた。
「さあ!糧になりなさい!」
青く光る謎脚が唸りを上げてリインに迫る。
しかし、その脚が顔に到達する事はなかった。
「あんま調子に乗るなよな…」
「何ですって!?」
ロザベールが驚いたように目を見開き歯軋りをする。
リインの片手がその脚を受け止めている。
力はリインの方が勝るのだろう。
その気迫に脚の光が飲み込まれ、徐々に手に押されてゆく。
リインがロザベールを睨み付ける。
「今度はこっちの番だぜ。本当の連続攻撃を見せてやるよ!!」




