牢屋とドクロと私①
リインは目を覚ますとジメジメした薄暗い場所にいた。
壁も床も硬い石畳で窓は一切無く、変わりに周囲には冷たい鉄格子が張り巡らされている。
「…この見晴らし良い場所は一体どこなんだ?」
何かがぶつかった今だに痛い頭をさすりながら起き上がる。
「おいおいまたあの世か〜?今度は地獄か〜?」
ま。どうせ牢屋だろうがな。
リインはそう考えながら1人ごとを言ったり、鉄格子をガチャガチャ揺らして遊び始めた。
もうそれしかなす術がないからだ。
クラウスやルスランに助けに行くと言ったが、今ではこちらが誰でもいいから助けてほしい。
遠くから声が聞こえるので見張りはいるようだが、この場所はこのエリアでも相当奥まった場所にあるらしく、少々このやるせない感情をぶつけて騒いでも誰も来る気配がなかった。
暫く退屈な遊びで現実逃避していると、ふと、目の端に入り込んだ牢屋の奥の暗がりが不自然に広い事に気がついた。
そして広いのではなくて、そこに闇と同じ色の「何か」がいる事にも。
「…おい、誰かいるのか?」
リインが死亡フラグビンビンの台詞を呟きながら、恐る恐る影に近寄る。
全く反応のない影の正体を暴こうとそっと膝をつきそこを覗くと……
「ギャアアアアァッ!!骸!?」
じゃない。
リインは叫ぶのをやめた。
骸じゃない。女の子だ。
黒い服にガイコツのような白黒メイクで塗り固められた顔、黒髪を2つの大きなお団子にまとめている。
それだけでもインパクトが強過ぎるが、正座して身体を隅に縮めた状態で微動だにしないから尚更何かの妖怪めいている。
こいつに先程までの1人遊びを見られていたと思うと結構キツいものがあるな。
リインは今一度目の前の少女の姿を眺め回す。
…この配色…この人もしかしてロザベールの言ってた、パンダか?
「なあ君、…呪えるパンダさんか?」
少女が振り向く。
「……はい。そうらしいです…」
哀愁のある弱々しい声だ。
予想はビンゴだった。
リインはバーグとロザベールの目の節穴加減に舌を巻いた。
「やっぱり…あいつら目ぇ悪すぎだろ…俺は喋るタコって事になってここに来たんだが…」
リインが水玉の顔でムスッとする。
パンダ少女が視線を動かさずに口を開く。
「…あなた呪われてるだけなのに…」
「えっ、分かるのか?」
「…私は僧侶だから」
僧侶なの?うそだろ?全く逆の人種じゃないのか?ガチめのメタルキッズだろ?
リインはそう詰めたかったが、ぐっと堪えた。
これはナイスタイミングなんじゃないか?
リインはここにいてもなお背負っている剣を一瞥した。
取られていない所を見ると、奴らも何かしらの呪いと勘づいて手を触れなかったのだろう。
「じゃあさ、この剣の呪い解けるか?取れないし肌がキモい模様になるしで困ってんだ」
それを聞いたパンダ少女がズリズリと地を這うように近づいて来る。
そして目をカッと見開き穴が開くほど凝視し始めた。
「…………今解除しない方がいい」
瞬き一つしない少女が呟く。
「なんで!?」
「お肌の健康を代償に、今剣の攻撃力が上がり続けている………それが頂点に達したら自然と解ける…」
リインは思わず柄に手を掛けてみた。
すると、そこはかとなくピリピリとした温かいエネルギーを帯びている。
「….これそんな都合の良い呪いなの?」
地味に迷惑ではあるが。
少女が頷く。
「…今の威力なら…鉄格子も切れるかもしれない」




