海神、再召喚!
ランスロットに強化された俺の眼でも追うのが困難なほどのスピードで無数に繰り出される斬撃。
周囲の木々を薙ぎ倒し地面を抉るその攻撃を光の羽根が全て受け止める。
「きゃあぁぁぁ!」
エリノアの悲鳴が響く。
『クアァァァッ!』
マガツメが吼えながら一際大きく尾を薙ぎ払った。
――ガギィッ!
「ぐううッ……!?」
障壁越しでも、恐ろしいまでの衝撃が伝わってくる。
刃尾の重撃の衝撃波は俺たちの後ろに貫通し、そのまま森の斜面を刳って、王城の外壁を打ち砕いた。
全員が驚愕に顔を青くする。
「ば、馬鹿な……! なんで、こんな強力な魔物が……!?」
リンツ王太子が絶望を滲ませた。
「〈聖天烈破〉!!」
剣を引き抜きざまに振り上げた。
空から幾筋もの光が打ち付けられる。
『クルルルァァ!』
マガツメは俊敏なステップでそれを回避すると、大きく距離をとった。
その姿が森の奥に消える。
「まだ来るぞ! アフェット! 俺が食い止める! きみは皆を安全な場所へ!」
「……!? 剣で何とかなる相手じゃないぞ!?」
「大丈夫だ! いいから、早く!!」
「……分かった……! 皆さん、こちらに! 走って!」
アフェットが皆を先導して森の斜面を駆けていく。
「さぁ。姫、あなたも早く!」
俺の後ろで震えているエリノアを急かすと、姫は青白い顔で心配そうに俺を見上げた。
「姫様! 急いで!」
アフェットが叫ぶ。
「コージ様……。どうかご無事で……」
目を閉じ指を組んで一瞬の祈りを捧げると、俺に背を向けて走り出した。
――クアァァァ……!
マガツメの咆哮が夜の森に轟く。
「さぁ……。これが最後の手札か? ツァイコフ……!」
どうやってアボイドを呼び出しているのかは分からないが、王城の敵が殲滅されたということは、やはりこの〈中型クラスター〉が切り札だろう。
「こっちも切り札を切る……! リヴィア、行けるか!?」
『うん!』
すぐさまリヴィアの返事。
同時に、マガツメの咆哮が響いて、刃尾の衝撃波が山を破壊しながらこちらに迫ってきた。
「【リヴァイアサン】、召喚解除!」
瞬時にエメラルドに輝くカードが眼の前に転移してくる。
「再召喚! 【リヴァイアサン】!」
一瞬の間をおいて、光とともにリヴィアの身体が俺の眼の前に現れた。
この『転移技』は、以前召喚術の練習をしていた時に遠距離会話とともに発見したものだ。
俺とリヴィアが完全にシンクロ出来ていれば、遠距離での召喚解除と同時にカードが手元に戻ってくる。
すこしコツが必要だが、今回は上手くいったようだ。
その代償にAPが大きく減少し、残りは40を切った。
短期決戦を狙う!
「はぁぁッ!」
――ズガガガガガガガ!
リヴィアが巨大な水の盾を生成して、マガツメの重機の突進のような刃撃を受け止めた。
「リヴィア! 行くぞ!」
俺がそう叫んで高く跳躍すると、リヴィアもそれに追随した。
一際高い樹木の梢に着地。
リヴィアは空中に浮遊している。
「どこだ……!?」
マガツメの姿を探す。
先ほどの一撃で森の木々が一直線に薙ぎ払われているが、その始点にはすでにいない。
すると、遠く、黒々とした森の木々の中に青い燐光が見えた。
「そこだッ!」
「――〈炎尖牙〉!!」
俺のイメージをトレースするように、リヴィアが炎の槍をフルパワーで放つ。
フルパワーの〈炎尖牙〉は、今まで見たそれとは規模も威力も段違いだった。
着弾点から炎の柱が膨れ上がって、俺の頬をチリチリと焼いた。
『クアァァァァ!』
苦しげな咆哮。
炎の中からマガツメがこちらへ向かって一直線に飛び出してきて、唸るような刃尾の斬撃を繰り出した。
「速いッ……! 〈流鋭刃〉!!」
リヴィアが生み出した水流の刃が、マガツメの刃尾に打ち付けられ火花を散らす。
フルパワーの〈流鋭刃〉は、長さがおよそ25メートル。
マガツメの巨大な刃尾に負けないほどの大きさと強靭さだ。
尾を流鋭刃で叩き落とされたマガツメが、空中でバランスを崩し落下する。
「終わりだ! 〈炎尖牙〉!」
流れるように炎尖牙を放った、その瞬間。
――クオォォォォォン。
マガツメが、今までと違う美しいと言ってもいいような咆哮を上げた。




