クララの父上(濃ゆい)
真っ白のドレスに身を包んだクララは、綺麗と言うよりは人形のように可愛らしかった。
「わあっ、皆さんも! お久しぶりです!」
ミアたちも、本当は彼女を救出した帰りに会っているのだが、気を失っていた彼女は知る由もない。
「良かったわ、元気そうで」
「ドレス、とても素敵ですよ」
ミアやマールと手を取り合って喜ぶクララは、俺の前に来るともじもじと上目遣いで俺を見た。
「コージさん……。あの……どうでしょう?」
そう言っておずおずとドレスの裾を摘む。
「ん? ああ。とても似合ってるよ」
クララが、俺の言葉にパアッと笑顔を輝かせる。
「良い……。クララたん……。やはりドレスを奮発して正解だった……」
「ふおおっ!?」
突然耳元で誰かがつぶやいたので、俺は変な声を上げて飛び上がった。
バシッと正装を決めた初老の男性だ。
白髪交じりの髪と、生やした口ひげが渋いダンディさを演出している。
しかし、現在その瞳はしとどに濡れていた。
「えーと……どちら様で?」
俺の質問に男性が答えるのより早く、クララが声を上げる。
「お父様!」
俺たちは揃ってポカーンとしたあと、
「ク、クララのお父さん!?」
一斉に驚きの声を上げた。
「もう! 席にいてくださいっておっしゃったのに……!」
腰に手を当てて怒るクララ。
男性はそれに押し負けるように首を振った。
「だ、だって、クララたんが心配で……。どんな友達と仲良くしてるのかなー、ってさ」
「お父様には関係ありませんわ!」
「で、でも、ほら。いじめから救ってもらったって言ってたから、もしその男がいたなら礼をしないと……。パパ、一応大人だし」
父の言葉にクララはハッとした表情をすると、俺の事をちらりと見た。
その仕草を、クララの父上は見逃さなかった。
「むっ? もしや、キミが……?」
「えっ。あ、いやっ……」
困りきった俺がミアやリヒャルトに助けを求める視線を送ると、彼らは見事に目を逸らして無関係を装った。
マールまでが、申し訳なさそうに顔を伏せている。
ちくしょう、うらんでやる。
「まぁ、その……。そうです。僕がやりました」
なぜか犯人のような名乗りを上げてしまう。
クララの父上は俺の目をじっと見つめると、おもむろに俺の手を両手で握った。
「うむ。少しのほほんとしておるが、確かに計り知れないものを持っている瞳だ。ましてや、ヴァンライン家のご子息。我が娘の婿にはこの上なし。コージ殿、と言ったな。クララを……娘を末永くよろしく頼むぞ」
「えぇぇぇ!? い、いやいやいや……!」
首がもげんばかりに頭を振る。
「お、お父様!? そんないきなり……!」
クララが顔を真っ赤にして言った。
「ちょ、ちょちょちょ……ちょっと待ちなさいよ! 一体どういうことよ!?」
ミアが血相を変えて俺の胸ぐらを掴む。
「俺に聞くなって!」
「コージくん。何なの、このちんちくりんな娘は?」
アミスターも詰め寄ってくる。
「コージさん、いつの間に婚約なんかしたんですか!? 知らなかったですよ! ねぇ、リヒャルトさん!?」
「はっはっは! 酷いではないか、マイプレシャス! わたくしと言うものがありながらッ!」
「いや、それはなんか違うと思いますけど……」
マールとリヒャルトまでやいのやいのと騒ぎ立てる。
あぁ、もう無理だっ! 勘弁してくれ!
そ、そうだ、リヴィアは……!?
「リ、リヴィア……!?」
慌ててリヴィアの姿を探すと、彼女は彼女で雲霞の如く集まった男たちからナンパやら求婚やらをされてそれどころでは無さそうだった。
「うぅ……。コージ~。助けて~」
小声で俺に助けを求める。
と、その時、大宴室内にラッパが鳴り響いた。
「いけない……! お父様、早く戻りましょう!」
クララが慌てて言う。
恐らく、王が入室する合図のラッパだろう。
「コージさん。また後ほど……」
クララは一礼すると、父の手を引っ張って貴賓席へと戻って行った。




