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パーティー会場

 宴室は二階。

 この大廊下の先を曲がったところにある階段で向かうらしい。

 その途中でも、行き交う男たちがリヴィアの姿を見ては次々と足を止めて見とれていく。

 やがて到着した大宴室では、入るなり少しざわめきが起きるほどだった。

 貴賓席以外は立食のスタイルのようだ。

 学生はもとより豪奢な正装を身に纏った貴族たちまでが、ひそひそとリヴィアの事を囁く。


「あの恐ろしいまでに美しいご令嬢は、いったいどこの家の方だ……?」

「初めてお目にかかるな……。どこかの名家秘蔵の美姫、というわけか?」

「今宵の宴のメインディッシュが決まったな」


 ……おいおい、丸聞こえだぞ。

 まったく、陽キャってのはどこの世界でも変わらんなぁ。

 すると、一人の貴族が俺たちの前にやってきて優雅に一礼した。


「ご機嫌麗しゅう、お美しい方。今宵は、楽しい宴になりそうですね」


 かなりの色男だ。浮かべた微笑にも、その自信が溢れ出ている。

 周囲の男たちが「ああ……! 早速ディーンの毒牙に! もう終わりだ!」と悲嘆の声を上げている。

 どうやら、かなりの〈やり手〉のようだ。

 俺がハラハラと見守っていると、リヴィアも優雅にスカートの裾を摘んで一礼した。


「今晩は。ええ。わたくしも、胸が高鳴っておりますわ」


 リヴィアらしからぬ妖艶な表情。

 俺はその横でギャグ漫画みたいな顔で驚愕していた。

 いつもの『あっはっは~』はどうしたんだ!?


「マドモアゼル、よろしければエスコートさせていただいても?」


 ディーンが恭しく手を差し出す。

 普通の女の子なら、躊躇うことなくついていくだろう。

 しかしリヴィアは余裕のある微笑を浮かべると、不意に俺の腕に手を回した。


「ごめんなさい。わたくしには、主人がおりますので」

「な……!?」


 ディーンがピカソの絵のような顔で凍りつく。


「では、失礼しますわ」

「お、おい……」


 リヴィアは俺の腕を引くと、部屋の中を歩き出した。

 周囲から嫉妬に狂ったような視線が突き刺さる。


「おい。何だよ、今の」

「え~? 何が?」


 いつもの調子で返してくるリヴィア。


「主人て……」

「あたしの主人(マスター)だし、問題ないでしょ。ああでも言わないと、面倒くさいんだもん」


 そういってクスクスと笑う。

 すると、部屋の隅にいた一団から声を掛けられた。


「コージ! リヴィア!」


 ミアたちだ!

 先に到着していたらしい。

 俺はオアシスでも見つけたような気持ちで駆け寄った。

 ミアたちも学園の制服を着用している。


「リヴィアさん! 凄く綺麗です……!」


 マールがうっとりとした顔で言う。


「えへへ。ありがとう」


 リヴィアは照れくさそうに笑った。


「うう……しまった……。私もやっぱりドレスを用意するんだったわ……!」


 ミアが歯噛みして言う。


「ドンウォーリーだよ、ミアくん。その灰色の制服も、キミらしくてとてもグッドさ」

「どういう意味よ」

「それはそのままの――痛い。やべたばべ」


 ミアに拳で頬をグリグリとやられるリヒャルト。

 彼も制服姿だが、その胸ポケットには彼のトレードマークである赤のチーフが小粋に挿されている。

 こうしていると、高身長にサラサラの金髪も相まってまるで貴公子のようだ。

 中身は変態だが。

 場もわきまえずわいわいぎゃーぎゃーと騒ぐ俺たちに気がついて、部屋に散らばっていた学園の一般生徒たちが集まってきた。


「ほーっほっほ! どうりで騒がしいと思ったわ。場違いじゃなくて? 紫電のミア」

「げっ……」


 高笑いを上げながら現れた〈蒼氷のアミスター〉に、ミアが潰れたカエルのような声を出す。

 アミスターはこれまたやたらと露出度の高いドレスに身を包んでいた。


「アミスター! 久しぶりだな!」


 こうして話すのはあの試験以来だ。

 俺が声を掛けると、アミスターは視線を外してもじもじと脚を動かす。


「ええ……。あの……お久しぶりね。コージ……くん」

「おいおい、何だよ。他人行儀だな」


 俺が笑うと、彼女はその頬を薄っすらと桜色に染めた。


「何よこいつ……?」


 ミアが怪訝な顔をしてその様子を眺めたあと、ハッと何かに気がついたように一歩後ずさった。


「あ、あんた、まさか――!?」


 すると、そんなミアの言葉を遮るように誰かがたしなめた。


「おい、お前ら。あんまり騒ぐんじゃないぞ。一応、王城内なんだからな?」

「む、ティーチャー・グレン。来ていたのですか」


 リヒャルトが会釈した相手は、入試の試験監督も務めた騎士校の教官グレンだ。

 彼もまたパリッとした正装に身を包んでいて、ずいぶんと印象が違う。


「引率みたいなもんだ。……ったく、ガキの遠足じゃねぇんだから」


 そのまま、いつもの調子でぼやきながら去っていく。

 その先で「おい、飯はまだ出ねぇのか!?」と騒いでいたダムラス――試験の時にいた山賊みたいなやつだ――の後頭部を叩いて止めていた。


「先生も大変ですねぇ……」


 マールが呟く。

 と、その時、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。


「コージさーーん!」

「クララ!」


 ドレス姿のクララが駆け寄ってくる。


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